製造現場の人手不足など課題解決図る
UDトラックスと神戸製鋼所は1月26日、神戸製鋼加古川製鉄所(兵庫県加古川市)で、特定の条件下で車の自動運転を実現する「レベル4」の自動運転技術を搭載したUDトラックスの大型トラック「クオン」を使い、2022年8月末から10月末にかけて実証実験を行ったと発表した。
実証実験の様子
少子高齢化を背景に労働力不足が深刻な社会問題となる中、製造業も製造現場でプロセスの効率化や人材不足などの課題解決を迫られている。両社は双方の技術を持ち寄ることで、特に大型荷物の搬送作業が自動運転技術で自動化され、工場インフラに統合することで生産効率が飛躍的に向上できると見込む。
実証実験は加古川製鉄所内の水砕スラグ(高炉から生成する溶融スラグに圧力水を噴射することで急冷した砂状のスラグ。主にセメント用原料として国内外で販売している)運搬コースの一部ルートを使用して実施。レベル4限定領域自動運転技術を搭載したUDトラックスの大型「クオン」のダンプトラック1台が重さ約17tのスラグを積み、複数の異なる地点を自動搬送した。また、所定内での停止・搬送物の積み下ろしといった複雑な運行作業も自動で済ませた。
実証実験は実際のオペレーション環境下で、自動運転技術の正確な運用、センサー類のロバスト性(構造物など外乱の影響によって変化することを阻止する性質)、自動運転および車両システムの信頼性を確認するのが狙い。今回、水たまりや段差、ぬかるみなどのある過酷な不整地と、雨や霧など様々な天候下でも、車両に組み込まれたSensible4製自動運転システムが正しく作動することを確認した。
また、タイヤからステアリングに外乱が入る不整地の走行でも、クオンに採用されている電子制御ステアリング「UDアクティブステアリング」により、高精度かつ安定した走行を実現できた。さらに、衛星からの信号が構内の様々な施設により遮断されやすい環境においても、GNSS-RTKと3D-LiDARの両方を用いた測位とナビゲーションに従い、記録した走行経路を車両が正確に走行することを実証できたという。
搬送だけでなく一連のオペレーションの自動化を実現した。ホイールローダーで積み込まれたスラグが、オペレーターの指示を受け、あらかじめ登録されたスラグ投入口(ホッパー)へ自動搬送。荷下ろし場では新明和工業提供の自動ダンプ機能により、スラグがホッパーに流し込まれた。
UDトラックスと神戸製鋼所は今回の実証実験で得た知見を活用し、自動運転技術を通した製造現場のDXを推進、生産の効率化や人手不足などの課題解決を目指す。
(藤原秀行)※動画と写真はUDトラックス、神戸製鋼所提供