日本初、米衛星高速通信スターリンク使い被災地域に生活物資をドローン定期配送

日本初、米衛星高速通信スターリンク使い被災地域に生活物資をドローン定期配送

埼玉・秩父で3月末まで、最大5kg搭載し3km飛行

埼玉県秩父市とゼンリン、KDDI、KDDIスマートドローン、エアロネクスト、生活協同組合コープみらい、ちちぶ観光機構、源流郷おおたき、ウエルシア薬局は1月26日、災害に見舞われた同市中津川地内にドローンで生活物資を定期的に配送する「&(アンド)プロジェクト」を同日開始すると発表した。

中津川地内のエリアでは2022年9月に土砂崩落が起き、途中の道路でトンネルが崩落、現在も通行が規制されている。各者が連携し、トンネルの上空をドローンが飛行して食料品や日用品、医薬品などを迅速に輸送、住民の生活を支援する。

ドローン飛行に不可欠な安定した通信環境を確保するため、KDDIが利用契約を締結した米宇宙関連企業スペースXの衛星高速通信サービス「スターリンク」を活用してauの携帯通信環境を確保。ドローンの遠隔自律飛行を可能にする。

スターリンクを使い、被災地へドローンで定期的に物資を空輸するのは日本で初めてとなる。ゼンリンやKDDI、エアロネクストなど各者は経験を生かし、通信が安定しない山間地や被災地でドローンを安定的に運航できる仕組みを確立していきたい考え。

今回の定期配送が無事に完了できれば、地方エリアでのドローン物流や災害時のドローンを使った緊急支援物資輸送の普及に弾みが付くと期待される。


会見後の撮影に応じる関係者

狭山市役所内で同日記者会見した同市の北堀篤市長は「今後通信環境に恵まれない山間地域の皆さんに希望を与える、日本初のハードルが高いミッションに取り組んでいただいた皆様に御礼申し上げる」と謝辞を述べた。

ゼンリンの古屋貴雄執行役員モビリティ事業本部長は「今回の活動は社会的意義も高く、住民が安心して生活を送るために必要な取り組みだと思っている。しっかりプロジェクトを進めていきたい」と語った。


プロジェクトに投入する物流専用ドローン(各者提供)


ドローン輸送の流れ(各者提供)

プロジェクトは地域が安堵できるようにしたいとの思いを込めて命名した。中津川地内には6世帯・6人が居住している。アクセスする場合に通る必要がある林道は、一部の緊急車両などだけが通行を許可されている。山間部にあり、冬季は降雪や凍結で通行が困難になることもあり、ドローンで物流をサポートすることにした。

輸送にはエアロネクストとACSLが共同で開発した物流専用ドローン「AirTruck(エアトラック)」を投入。機体が傾いても搭載した荷物は水平を保てるのが特徴だ。

1月26日から3月末までの間、住民から電話などで事前に注文を受けた商品を、コープみらいやウエルシア秩父影森店、ファミリーマートがそろえ、毎週木曜日に崩落したトンネルのあるエリアの上空約3kmをドローンが空輸する。1回当たり最大約5kgの物資を搭載することが可能。


プロジェクトの概要(各者提供)

(藤原秀行)

テクノロジー/製品カテゴリの最新記事