三菱重工、国産ジェット機開発からの撤退を正式発表★続報

三菱重工、国産ジェット機開発からの撤退を正式発表★続報

官民連携の大型プロジェクト、15年で頓挫し幕引き

三菱重工業は2月7日、傘下の三菱航空機が取り組んでいた、国産で初となる小型旅客ジェット機「三菱スペースジェット(MSJ)」の開発から撤退する方針を正式に表明した。

既に2020年、「いったん立ち止まる」との考えを表明し、事実上開発を凍結していた。その後もMSJの製造で採算を確保するめどが立たないことなどから、正式に断念することにした。開発を担ってきた子会社の三菱航空機は清算する方針だ。

三菱重工業は08年、「三菱リージョナルジェット(MRJ)」の名称で90席クラスの機体を開発するプロジェクトをスタート。日本では1960年代のプロペラ旅客機「YS11」以来、約半世紀ぶりとなる国産旅客機の実現へ期待が高まり、経済産業省も日本の航空産業を盛り上げようと全面的にバックアップしてきた。

当初は2013年にも量産初号機を国内航空会社に納入する計画だったが、度重なる納入の延期などトラブルが相次ぎ、開発費が膨れ上がり、三菱重工業にとって重荷となっていた。

最近は米国の飛行試験地拠点を閉鎖するなど、開発体制を縮小していた。官民による大々的なプロジェクトは15年で頓挫、幕を閉じることとなった。

三菱重工業は2月7日に開示した2022年4~12月期決算の説明資料で「(機体の量産に不可欠な)型式証明の取得にさらに巨額の資金を要し、現在の市場環境では事業性が見通せない」などと理由を説明。脱炭素化の潮流が強まり、電動化への対応を迫られることにも触れた。

反省点として、高度化した民間航空機の型式認証プロセスへの理解不足、長期にわたる開発を継続して実施するリソースの不足を列挙した。

既にANAホールディングスや日本航空(JAL)などから260機以上を受注しており、今後は補償の有無などが焦点になる。


2020年の三菱スペースジェット飛行試験機(10号機)の初飛行の様子(三菱重工業プレスリリースより引用)


開発撤退の背景(三菱重工業決算説明資料より引用)

(藤原秀行)

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