パナソニックHDと東急、URが実証実験のデモ公開、早期実用化目指す
パナソニックホールディングスと東急、独立行政法人都市再生機構(UR)の3者は11月17日、川崎市麻生区でURが運営している「UR虹ヶ丘団地」内で、空中配送ロボットによる配送サービスの実証実験のデモンストレーションをメディアに公開した。
空中配送ロボットは吊り下げているコンテナに商品を納め、敷地内の電柱間に張り渡したワイヤーに沿って移動し、専用の受け取りボックスにコンテナを格納。注文した人は二次元バーコードをスマートフォンに表示してかざし、ボックスの扉を開けて自分で品物を取り出す。
3者によると、空中配送ロボットを使い、郊外住宅地で配送の実証実験を行うのは世界で初めてという。
3者は空中配送ロボットを使うことで、高齢者や育児中の人が近隣の店舗や料理店から商品を手軽に購入できるようになり、少子高齢化に伴って郊外の住宅地で顕在化している買い物難民の問題解消につながるとみている。併せて、人手不足が深刻化するラストワンマイル配送の効率化にも貢献することを目指す。
実験は11月18日から2024年3月31日まで同団地内で実施。3者はその結果と課題を踏まえ、URの他の団地にも拡大するなど、早期の実用化を図る。
空中配送ロボット
ワイヤーに沿って空中を移動。下のコンテナに商品が入っている
食料品など空輸、牛丼も取り扱い
住民は専用のウェブアプリから東急ストアや吉野家などの商品を注文。指定した時間内に、パナソニックHDが開発した空中配送ロボットが団地の敷地内にある専用受け取りボックスまで配送する。最短で注文から30分後に受け取ることが可能と見込む。
ルートの片道は約400mで、空中配送ロボットは上空約104mを移動する。取り付けているコンテナには最大で3.5kgの商品を搭載できる。配送の対応時間は午前11時~午後3時で、期間中に1カ月当たり6日程度、配送対応日を設ける。送料は実証実験開始当初は無料で、利用が進んだ後は1回当たり有料とする。
空中配送ロボットは雨でも運行は可能だが、強風の場合は商品を入れたコンテナを安全に受け取りボックスへ下ろせない危険があることから、風速10m以上の場合は運行を中止する。
3者はワイヤーに沿って空中配送ロボットが動くため、ドローンよりも安全性が高く、騒音も少なく、1回の充電で1日稼働できるため省エネ性能も高いとメリットを強調。UR以外の民間事業者とも連携を視野に入れる考えを示した。
受け取り用ボックス
荷物を格納する
住民自ら二次元バーコードをかざして扉を開ける
(藤原秀行)