【独自取材】清水建設、免震など先端技術を物流施設建設に積極投入

【独自取材】清水建設、免震など先端技術を物流施設建設に積極投入

冷蔵倉庫にも着目、躯体の好状態維持アピール

大手ゼネコンの清水建設が、先端技術を物流施設建設へ積極的に投入している。昨今の災害頻発で企業のBCP(事業継続計画)対応がより重視されているのを受け、免震技術を駆使。コールドチェーンの需要が高まっているのに伴い、冷蔵倉庫にも意欲的に対応しようと努めている。引き続き首都圏を中心に大量供給が見込まれる先進的な物流施設の建設需要を確実に捉えていきたい考えだ。

清水建設と物流施設のつながりは深い。ゼネコンとして設計・施工を請け負うのに加え、自社で進める不動産投資でもオフィスビルやホテル、商業施設と合わせて物流施設を主要な対象に位置付け、開発計画をまとめていく中で同社が得意とする環境配慮などのノウハウをふんだんに盛り込んでいる。今後も社会を支えるインフラとして物流施設が果たす役割は大きいとみており、eコマースの市場拡大などで需要が伸びている先進的物流施設の工事請負で成果を挙げている。

同社が実際に手掛けてきた案件の事例では、大規模マルチテナント型の物流施設に、清水建設が独自に開発した構法を採用。高強度の材料を用いた鉄筋コンクリートの柱と鉄鋼の梁を組み合わせ、柱の少ない大きな空間を短期間で確保できるのが特徴だ。多くの荷物を効率的に収納したいテナント企業にとっては、柱の数が減り、その間が長くなればより柔軟に庫内を使えるようになるだけに、非常に魅力ある技術と言える。

昨年は大阪府北部地震、北海道胆振東部地震と激しい地震が相次ぎ、物流施設における免震・制振の重要性が再認識されている。清水建設としても、培ってきた技術力を積極的にアピールしていく構えを見せている。

これまでの物流施設の取り組みでは、例えば積層ゴムやオイルダンパーなど複数の装置を組み合わせたハイブリッドの免震システムを導入。それぞれの装置の特性を最大限活用し、大きな揺れに見舞われても庫内で荷崩れが起きないよう配慮している。

物流施設などの設計を担当する同社設計本部生産・研究施設設計部の松本英治グループ長は「BCPに対する意識は非常に高まっており、物流という社会インフラを維持していく重要性への認識も広まっていると感じる。当社が蓄積してきた高層建築物などの免震・制震に関する経験、ノウハウを積極的に生かしていきたい」と語る。


松本グループ長

躯体のひずみや亀裂を回避

建設請負の分野で同社がかねて着目しているのが冷蔵倉庫の分野だ。国内では流通の近代化や冷凍食品の普及などに伴い、高度経済成長期から建設が進められてきたが、近年は老朽化が進み、築40年を超えるものも珍しくはない。冷媒のフロンガスに関する国際的な規制強化への対応も迫られている。それだけに「今後は大規模な集約や再開発などの動きが不可避」(不動産大手幹部)との見方は根強い。

これまで同社が関わってきた物流施設でも、冷凍ユニットに省エネ性能が高い自然冷媒機器を取り入れるなど環境負荷低減に注力したり、入場管理に顔認証システムを採用、セキュリティーにも重点を置いたりと最新鋭の機能を持たせる傾向が見られる。

同社が最近打ち出した新たな試みなのが、冷蔵倉庫の躯体に施した最先端技術「施工EXP.J」だ。倉庫内を冷やすことにより躯体が収縮してひずみや亀裂が生じるのを回避するため、まず建物の構造を複数に分割した上で、建物の完成後に冷却作業をスタート。鉄骨の梁結が想定通り収縮したのを見計らって各躯体を緊結、一体化するとの流れだ。

一連の作業により、倉庫の建物自体にひびが入ったりするのを防ぐことが可能になるという。特許も出願しており、同社はオリジナルの技術として他の案件でもチャンスがあれば生かしていきたいと意気込んでいる。

他にも、建築物の構造や設計を3次元のモデルで再現する手法「BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)」を生かして建築、冷蔵設備、電気設備の各工事を効率的に進めたり、鉄骨の梁を取り入れるのに際して事前に温度の変化を想定し、防熱のために適正な厚さを検証したりといった多様な取り組みを実際の案件で展開している。

松本グループ長は「当社が手掛けた冷蔵倉庫は技術の粋を集めており、まさに先進技術のショールーム的な存在といってもいいくらいだと自負している。今後も日本の食品流通の安全を守り続ける重要施設として長年活躍できるよう冷蔵倉庫の展開に貢献していきたい」との思いを語っている。

(藤原秀行)

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