三菱電機や米カートケンと連携、米国に続いて2カ国目
宅配大手のウーバーイーツジャパンは3月5日、三菱電機や米国のロボットメーカーCartken(カートケン)と連携し、東京・日本橋エリアでロボットを活用した配送サービスを3月6日に始めると発表した。併せて、配送のデモをメディアに公開した。
政府が昨年4月、改正道路交通法を施行し、公道上を走行するロボット宅配サービスを解禁したのを受け、ウーバーは米国に続いて日本でもロボット宅配に踏み切ることにした。
同社は業務を効率化して配達を担う人材の有効活用を図るとともに、自転車やバイクなどのほかに配達の選択肢を増やしてユーザーの満足度を高めたい考え。他のエリアへの拡大も視野に入れている。
ロボット配送は楽天グループが2022年12月、西友と組み、茨城県つくば市で定常的なサービスを開始したが、昨年末に終了した。東京都心の街中で本格的にロボット宅配を始めるのはウーバーが初めてとみられる。
カートケンの宅配ロボットを利用し、三菱電機が日本向けの仕様に修正した。ロボットは最高速度が時速約5kmで最大20kgの荷物を輸送できる。機体は雨や雪でも走行が可能という。
日本橋の街中を走行する宅配ロボット
ロボットは平日の午前10時~午後5時の間に稼働し、スマートフォンのアプリ経由で注文を受け付けると、日本橋エリアの店舗に宅配ロボットが自動で移動、ロボットに料理を収めると注文者のところに届ける。注文者は自分でロボットを明けて料理を取り出す。注文の際にロボットを指定することはできないという。
当初は日本橋エリアの2店舗で配達の受け付けをスタート。利用状況を見ながら順次、店舗数を増やしていきたい考えだ。
ビルの谷間を走る
「配送の可能性をさらに広げられる」
東京・日本橋でデモ公開に先立ち、同日記者会見したウーバーイーツジャパンのアルビン・ウー マーケットオペレーションディレクターは「日本はウーバーにとって重要な市場。参入から7年間ビジネスを続けており、非常に成長を遂げ、お客様からも好反応をいただいている。ロボットを使うことで、配送の可能性をさらに広げられる」と説明。損害保険の加入などトラブルに備えて万全の対策を講じていると強調した。
三菱電機開発本部の田中昭二先進応用開発センター長は「今後ますます深刻化する『物流クライシス』に対応する方策の1つと考えている。人手不足でもロボットを活用したデリバリーで従来通りのサービスを提供できるだけでなく、さらに多様な(輸送)ニーズへの対応を可能とし、人々の暮らしを豊かなものにしていくことを考えている」と説明。工場内での危険物輸送などにも宅配ロボットを投入できるとの見方を示した。
カートケンのクリスチャン・ベルシュCEO(最高経営責任者)は「洪水のようにならない限り、悪天候でも走行できる。現状は半径2kmくらいのエリアで配達が可能」と述べ、他のエリアでも十分活用できると自信を見せた。
撮影に応じる(左から)三菱電機・田中氏、ウーバー・ウー氏、カートケン・ベルシュCEO
ロボットは遠隔で監視・操作が可能で、信号が赤の場合などに停止させる。宅配ロボットの走行時は、監視するスタッフが常時、近くに付いて通行人や自転車との接触などのトラブルを未然に回避する。
ロボットは緊急停止が可能なボタンを取り付けており、ライトを点灯させたり音声を発したりして、周辺の人に注意喚起している。
デモは日本橋エリアのとんかつ店から料理をオフィスビルまで走行して届けた。実際の配達は当初、ロボット1台で実施するが、この日のデモは複数のロボットを走らせており、すれ違うシーンもあった。エリアでロボットに出会った小学生や外国人らが驚いて走行を見守っていた。
料理の宅配は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて急速に利用が伸びたが、事業者の相次ぐ参入で競争が激化。配達員の不足もあって中国のDiDiフードやドイツのフードパンダが相次ぎ日本から撤退するなど、逆風も吹いている。知名度が随一のウーバーもロボット採用による業務効率化で経営基盤を強化したい考え。
(了)