CO2排出とコストの削減効果期待
商船三井は3月6日、100%子会社で生産した原油を輸送するカーゴ・トランスファー・ベッセル(CTV)を保有・運航するSeaLoading Holding(シーローディング・ホールディング)がブラジル国営石油会社PETROLEO BRASILEIRO(ペトロブラス)とCTV「SeaLoader 2(シーローダー ツー)」の定期用船契約を締結したと発表した。
併せて、両社は2024年内にCTV新造船契約交渉に着手することで合意した。
SeaLoadingは2022年1月、ペトロブラスとCTVの試用契約を開始し、SeaLoader 2でブラジル沖サントス盆地に位置するペトロブラスのFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)で生産した原油をタンカーへ積み出すことに30回以上成功した。
CTV技術が想定通りに機能することが立証できたとして、2023年に定期用船契約へ移行。CTV新造船交渉にも踏み込むことにした。
通常FPSOで海底から生産された原油は、原油タンカーで需要地まで輸送するが、通常の原油タンカーは船体が波や風で揺れてしまうため、FPSOから直接原油を受け取れないのが課題だった。通常は特殊な荷役設備を搭載するシャトルタンカーがいったん原油を受け取り、石油貯蔵基地または船から船へ積み荷を移すことが可能な平穏な海域まで輸送した上で、原油タンカーへ再度積み替えるオペレーションを行っている。
CTVをFPSOと原油タンカーの間に接続することで、FPSOから原油タンカーへ直接原油を積み替えることが可能となり、原油物流の効率を格段に上げられると見込む。
現在、CTVは世界に2隻しかなく、SeaLoadingが全船保有し、CTV技術の特許を有している。
CTVを使用することにより、シャトルタンカーによる原油転送時に比べCO2排出量を大幅に削減できる見通し。ブラジル沿岸では、従来のシャトルタンカーが、ブラジルのサントス域で船から船へ積み荷を移すことを行う前提において約60%、ウルグアイ沖で船から船へ積み荷を移すことを行う前提で約80%のCO2削減をそれぞれ期待できるという。
(藤原秀行)※いずれも商船三井提供