ドローンや「空飛ぶクルマ」への応用も目指す
高精度な気象予測を生かした航空輸送の安全性・経済性向上とカーボンニュートラルの実現を目指すスタートアップのBlueWX(ブルーウェザー、東京都港区)は1月27日、東京大学系のベンチャーキャピタル(VC)、東京大学協創プラットフォーム開発をリード投資家として、ANAホールディングスとグローバル・ブレインが共同で設立した「AH-GB未来創造投資事業有限責任組合」、慶応義塾大学系VCの慶應イノベーション・イニシアティブなどを引き受け先とした第三者割当増資を実施、1.2億円のシリーズA資金調達を実施したと発表した。
調達した資金は、BlueWXの事業基盤となっている予測モデルの機能強化と人材採用を通じた体制強化に充てる。
まず航空業界向け乱気流モデルをグローバル市場で展開するとともに、運航の効率化とCO2排出削減を加速するモデルへの展開を目指す。将来はドローンや「空飛ぶクルマ」のeVTOL(電動垂直離着陸機)などの運航改善も視野に入れ、事業を推進していきたい考え。
ANAHDと慶應義塾大学の産学連携から2023年7月に創業したBlueWXは、航空業界の安全運航、燃料消費・CO2排出削減、コスト削減等の実現に向け、日本空域に加えてグローバル空域における高精度な気象予測モデルの展開を目指している。
乱気流予測モデルは、慶應義塾大学環境情報学部准教授も兼ねるBlueWX宮本佳明社長とANAHDが19年より共同研究を進め、開発した深層学習を用いたAIシステム。
これまでに宮本は、スーパーコンピューター「京」を用いて世界最高解像度全球大気シミュレーションを実施したり、台風や雲の数値計算を行ったりしており、その経験を生かしてANAの航空機が過去10年で遭遇した乱気流の情報と気象データを基に深層学習予測モデルを開発。日本空域で既存の予測データと比べて約2.7倍の高精度を実現した。
21年以降、ANAグループ約2500人のパイロットを対象としたトライアル運用を通じ、精度高く乱気流を予測することを確認。一層の安全・経済運航への活用が見込まれている。
(藤原秀行)