世界初、洋上風使い電気分解
商船三井は3月7日、風力と水素を活用したゼロエミッション事業「ウインドハンタープロジェクト」の一環で、実証ヨット「ウインズ丸」を用いて洋上風から生産した「グリーン水素」(風力や太陽光などの再生可能エネルギーを使い、水を電気分解して生み出した水素)を東京都の中央防波堤エリアで陸上に供給したと発表した。
同社によると、船舶が自らの航行によって生産したグリーン水素を陸上に供給するのは世界で初めてという。
航行中のウインズ丸
同社は2021~23年度に長崎県の大村湾(佐世保市)で行った実証実験で、ウインズ丸の船上で水素を生産・貯蔵し、船上で利用する一連のサイクルを回すことに成功。23年度からは東京都が主催する東京ベイeSGプロジェクトの「先行プロジェクト」に採択されたのを受け、ウインズ丸が東京湾で生み出した国産グリーン水素を陸上へ供給することに重点を置いて活動してきた。
東京湾でグリーン水素を作り出し、船内で水素を運ぶためにメチルシクロヘキサン(MCH)に変換することで、水素ガスのままでは困難な水素エネルギーの管理や運搬を容易にしている。
大村湾と比べて海象の荒い東京湾で安全に航行するための対策や、MCHタンクの改造、発電機の増設などを施すことで十分な供給量を確保できると説明している。
ウインズ丸の船内プラント
MCH荷揚げ時の様子(いずれも商船三井提供)
「先行プロジェクト」の実証最終年度となる2025年度は、東京湾でのグリーン水素の生産活動を継続し、約100N㎥の水素(約200L程度のMCHと同量)を生産すると同時に、中央防波堤エリアに設置したトレーラーハウスなどに電力を供給することを計画している。
商船三井はウインドハンターの大型実証船の建造や水素の供給先の検討も進めており、今後国内で水素バリューチェーンの構築が進むことを前提に、早ければ2030年代に大型実証船を建造、商用化することを目指す。
(藤原秀行)