ロート製薬、富士通とサプライチェーン最適化へ「マルチAIエージェント連携」活用

ロート製薬、富士通とサプライチェーン最適化へ「マルチAIエージェント連携」活用

人とAIが協業、人手不足や複雑化する業務負荷に対応

ロート製薬は12月1日、人手不足などのサプライチェーンの課題に対応するため、富士通が開発した「マルチAIエージェント連携」技術と、東京科学大学とロート製薬が共同家研究で開発した「サイバーフィジカルシステム:Cyber Physical System」(CPS)の技術を組み合わせ、複雑化する業務負荷の軽減と働く人の環境改善につながる、人とAIが協業する新たな仕組みの実証実験を始めると発表した。

CPSはフィジカル空間(現実空間)にある多様なデータをセンサーネットワークなどで収集し、サイバー空間(仮想空間)で大規模データ処理技術などを駆使して分析・知識化し、創出した情報と価値によって、産業の活性化や社会問題の解決を図る仕組みを指す。

ロート製薬は2022年6月、マザー工場の「上野テクノセンター」(三重県伊賀市)にCPSを実装し、工場・倉庫・物流をつなぐデジタルツイン基盤の整備を進めてきた。

今後はAIが自律的に判断・交渉しながら全体最適を図るマルチAIエージェント連携技術を活用することで、仕入れ先や小売先など複数企業との調整業務をAIが担い、サプライチェーン全体をより迅速かつ効率的に運用することを目指す。ロート製薬のサプライチェーンで2026年1月以降、実際の製造・流通・販売データを活用した検証を進める。

マルチAIエージェント連携技術を、工場や物流の状態をリアルタイムで捉えるCPSと、その中で使う数理最適化の仕組みに重ね合わせることで、以下のような領域での応用を視野に入れている。

・工場間・倉庫間の輸送ルートや搬送計画の最適化
・出荷拠点や代理店在庫のリアルタイム補充判断
・生産スケジュールやリソース配分の自動最適化
・災害・需要変動時のリカバリーシミュレーション

サプライチェーン全体がデータを基に、自律的に判断・改善を行う「進化するネットワーク」となることで、需要変動が激しい環境下でも欠品や過剰在庫を抑え、必要な製品を安定して供給できる体制の実現を図る。

併せて、サプライチェーンに関わる企業同士がデータを共有し、相互に調整しながら全体を効率化することで物流効率が高まり、CO2排出量の削減や人手不足の解消に貢献することを狙う。さらに、災害など不測の事態にも柔軟に対応できるレジリエンスの高い仕組みを構築し、産業界全体の競争力向上と持続可能な社会基盤の形成に寄与することを見込む。

(藤原秀行)※いずれもロート製薬提供

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