【現地取材】政官民が勉強会で議論、荷主に運送事業者との交流促す仕組み導入求める声相次ぐ

【現地取材】政官民が勉強会で議論、荷主に運送事業者との交流促す仕組み導入求める声相次ぐ

経営圧迫する規制強化に逆効果懸念も

政官民が連携して物流業界の改善を目指す有志団体「日昇会」は8月25日、東京都内で第6回の勉強会を開催した。物流関連法の改正を踏まえ、「荷主の意識改革」と「適正原価」を主要テーマに運送事業者、国会議員、省庁関係者らが意見交換を行った。

運送事業者からは、荷主に運送事業者との交流を促す仕組みの必要性を求める声が多く上がったが、荷主の経営を圧迫する規制は、結果的に運送事業者にも不利益となる可能性を懸念する発言も見られた。

日昇会は2023年8月に発足した勉強会で、中小運送事業者の経営DX支援を手掛けるスタートアップのアセンドが事務局を務めている。トラック運転手の不足が物流の持続可能性に及ぼす影響への危機感を共有する若手国会議員、国土交通省や経済産業省などの中央省庁、運送事業者が集まり、必要な民間の取り組みと、補助する政治・行政との連携の在り方について、年2回の定期勉強会を中心に議論を継続している。

同日の勉強会は運送事業者19人、国会議員12人(秘書代理出席を含む)、国土交通・経済産業・厚生労働省・農林水産の4省とデジタル庁の職員16人が参加した。2025~26年にかけて、改正物流効率化法や改正貨物自動車運送事業法が順次施行され始めたことを踏まえ、「荷主の意識改革」と「適正原価」を主要テーマに取り上げた。


物流課題の解決に向けて、政官民が意見交換した。奥が運送事業者、手前左が行政、手前右が国会議員。質疑応答ではなく、発言者が1人ずつ順に意見を述べていく形式で行われた

改正物流効率化法では、トラック積載率の向上や荷待ち・荷役時間の短縮といった物流効率化の取り組みを物流事業者と荷主の双方に努力義務として設定。さらに、年間貨物取扱量9万t以上の「特定荷主」には今年4月から、物流効率化の取り組みに関する中長期計画の作成・提出や、取り組みの責任者となる物流統括管理者の選任を定めている。

改正貨物自動車運送事業法では、運賃の適正収受やトラック運転手の待遇改善を目的に、付帯業務料も含めた対価などを記載した運送契約の書面交付や、元請事業者に対し実運送事業者の名称などを記載した実運送体制管理簿の作成を義務付けている。今年4月には荷主から請け負った運送業務の再委託次数に上限を定めた努力義務も施行。継続的に下回ってはならない運賃水準「適正原価」を国が定めるルールも、2028年6月までに施行される。

勉強会では運送事業者側からの意見として、物流効率化中長期計画の作成・提出や物流統括管理者の選任などに関して「実運送を担うわれわれには、荷主からほとんど相談が来ていない。実効性ある取り組みにするためにも、荷主に実運送会社と交流を促す枠組みが必要ではないか」、「発荷主は理解してくれているが、着荷主の同意を得られずに難航しているケースもある。着荷主までカバーしたルールが必要では」など、荷主を巻き込む取り組みの強化を求める声が相次いだ。

また、物流効率化のため業務のデジタル化が国からも推奨されているが、「類似のサービスが数多くある中、設備投資をした後で標準仕様などが定められると、投じた資金が無駄になってしまう。標準化の方向性などを示す必要があるのでは」という指摘も出た。

「荷主の経営ダメージは運送業にも不利益」

一方、改正法の副作用を心配する意見も上がった。運送業務の再委託次数の制限に関しては「地域の主要工業製品の全国配送を、トラック運転手の拘束時間の上限規制を守りながら維持するため、近隣の県とも協力し合って運ぶ体制を整えてきた。そこに委託次数の制限がかかってしまうと、いよいよ全国配送の維持が困難になる」との発言があった。

積載効率向上の努力義務化に対しては、「納品リードタイムが非常に短い荷物の場合、運べなくなってしまう恐れがある」との指摘が聞かれた。

適正原価に関しても「荷主メーカーには、不況時には製品の値下げで生き延びる企業が少なくない。最低運賃のようなものを国が制定し、コストダウンの余地がさらに狭まると、倒産する荷主が増えるのではと心配している。荷主あっての運送事業なので、荷主にも納得感のある方向性を示してほしい」といった懸念が表明された。

国会議員サイドからは、物流という社会機能を維持するために、引き続き運送事業者や行政と連携しながら適切な施策を講じていきたいという意見が相次いだ。規制の副作用に関しては、議員サイドでも課題意識が持たれていたようだ。

適正原価については「製造業でも昔議論されたが、製品が多様過ぎて不可能という結論になった。物流業でも議論は始まったが、非常に難しい課題が多々ある。法が施行された今となっては、試行錯誤する段階ではないが、理想に近づけていきたい」といった発言がなされた。

規制全般についても、「4月の部会で、最も荒れたのが国土交通部会だった。民間企業がそれぞれ工夫して取り組んできたところに、過度の規制がかかるのではないかという指摘が相次いだ。今日の勉強会でも厳しい意見がいろいろ示されたが、法が施行された後でこうした意見が出てくるということは、事前の政官民のコミュニケーションに不足もあったのだと思う。こういう意見交換の場を重ねることで、理想的なものにしていければと考えている」といったコメントがあった。

行政サイドからは、「運送会社と荷主の交流については、それに適したテーマもあるので、様子を見ながら考えていきたい」、「DXの標準化については、補助金の在り方など方向性が固まった段階で発表したい」といった回答があった。

(石原達也)

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