SkyDrive、都市部で「空飛ぶクルマ」安全飛行実現の根拠をまとめた機体設計コンセプトを公開

SkyDrive、都市部で「空飛ぶクルマ」安全飛行実現の根拠をまとめた機体設計コンセプトを公開

「コンパクトなマルチローター」を選択する背景を詳細に解説

SkyDriveは9月24日、スペースが限られている都市部で「空飛ぶクルマ」を実現するために適した機体設計の根拠をまとめた機体設計コンセプト「混雑した都市環境におけるeVTOLの安全性のジレンマ」(The eVTOL Safety Dilemma in Congested Urban Environments)を公開したと発表した。

空飛ぶクルマ(eVTOL)には、長距離の効率を重視する固定翼型から、限られたスペースでの安全性を重視するマルチローター型まで、用途に応じて最適な設計が異なっている。



今回公表したコンセプトでは、「利用シーン」を起点に、都市運航に必要なホバリング性能やバッテリー出力、安全設計の関係を考察し、SkyDriveがなぜコンパクトなマルチローター型を選択したのか、その技術的根拠を詳しく解説している。

固定翼を持つ航空機は、前進飛行時に翼から揚力を得ることができるため、長距離を効率よく飛行する上で大きなメリットがある。本機体設計コンセプトで引用している調査では、前進飛行時のエネルギー効率において、回転翼の向きを機体に対して傾ける「ティルトローター型」は複数の回転翼を使う「マルチローター型」より優位であることが示されている。

その一方、都市部での運航では、建物や障害物が存在し、離着陸できるスペースが限られるため、低速飛行やホバリングを行いながら、指定された場所へ正確に進入し、垂直に離着陸する性能が重要になる。

さらに、固定翼や飛行モードを切り替える機構などを追加すると、機体重量や構造の複雑性が増し、ホバリング時に必要な出力も増加する。長距離を効率良く飛ぶための「前進飛行性能」と、都市部で安全に離着陸するための「垂直飛行性能」をいかに両立させるかについて、本機体設計コンセプトで取り上げている。

都市部では、広い着陸場所を確保することが難しいため、機体が空中でその位置を維持する「ホバリング」と、垂直に離着陸する性能が重要になり、その効率を大きく左右する指標の1つが、「ディスクローディング(円盤荷重)」となる。

ディスクローディングは機体の最大離陸重量をローターの総面積で割った値で、ローターの面積当たりにどれだけの重量がかかるかを示す。ディスクローディングが高くなるほど、ホバリング時に必要となる出力が増え、反対にローター面積を広く確保し、機体重量を抑えることでディスクローディングを低下させ、ホバリング時の効率を高めることが可能になる。



SkyDriveは12基のローターを配置することでローターの総面積を確保し、低いディスクローディングを実現する設計を取り入れている。

空飛ぶクルマの性能を考える上で、バッテリーには大きく2つの重要な要素があり、そのうちの1つは、どれだけのエネルギーを蓄えられるかを示す「エネルギー密度」で、主に航続距離に影響する。

もう1つが、瞬間的にどれだけ大きな電力を供給できるかを示す「出力密度」で、大きな電力を必要とするホバリングや垂直離着陸では重要な意味を持つ。

ディスクローディングが高い機体では必要な出力も大きくなり、バッテリーの出力性能が垂直飛行の制約となる可能性がある。これは、都市部で利用する空飛ぶクルマでは、「どれだけ遠くまで飛べるバッテリーか」だけではなく、「必要な時にどれだけの出力を安全に供給できるか」という視点も重要になることを意味している。

航空機の安全性を考える上では、システムの一部に不具合が発生することを前提とした設計が求められる。本機体設計コンセプトではバッテリーや推進用モーターの冗長性について考察している。

例えば、バッテリーパックの一部に故障が発生した場合にも、残されたシステムだけで安全な飛行と着陸を継続させられるようにする必要がある。そこで大きな壁となるのが、前述した「ホバリングに必要な出力」で、緊急着陸用の経路を確保できない建物が密集した都市部は、万が一電源システムの一部に故障が発生した場合であっても、安全に垂直着陸を完遂できる能力が求められる。



SkyDriveの機体設計は、低いディスクローディングを維持することでこの要件に応えており、単一故障が発生したシナリオにおいても、バーティポート(専用離着陸設備)へ安定した飛行と安全な垂直着陸を実現するためのパワーマージン(出力の余裕)を確保している。

高ディスクローディングの機体は、離陸時に大きなパワーを必要とするため推進システム全体が重量化し、有効積載量 対 最大離陸重量比を悪化させる。この不利益は、巡航中もそのまま残り続け、30km未満の都市部短距離移動において、わずかな巡航のために重い推進システムを載せて飛ぶメリットは限られている。

さらに、コンパクトなマルチローター構造は離着陸に必要なバーティポートのサイズを最小限に抑え、限られた都市空間の活用において圧倒的なアドバンテージを発揮する。50kmを超える長距離の地域間移動では固定翼が優れる一方、都市内の短距離移動においては、狭小地への確実かつ安全な離着陸が最重要となるため、SkyDriveはマルチローター構造が合理的で安全と判断、採用を決めた。

全文は以下のURLから閲覧可能。

https://skydrive.co.jp/wp-content/themes/skydrive-v20260706/assets/pdf/JP_Design_Philosophy_Paper2.pdf

(藤原秀行)※いずれもSkyDrive提供

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