アイ・グリッド・ソリューションズ&日本GLP
気候変動見据えた中長期投資の価値基準
気候変動による災害激甚化などが進む中、例えば「2050年」を考えた際の物流施設の投資判断には、これまで重視された立地や賃料など以外の新たな価値基準が求められる。20年、30年という中長期を見据えつつ、いかに物流を止めない体制を構築するか。レジリエンス対応や環境性能、地域との連携こそが、持続可能性を高める鍵となる。 (本誌編集部)

日本GLP プロパティーマネジメント部 プリンシパル 田中英樹(左)
アイ・グリッド・ソリューションズ GXインテグレーション部 部長 櫻井明大(右)
物流を止めない備えとは
──長寿命アセットである物流施設には中長期視点での投資判断が必要と感じますが、例えば20年、30年後を見据えたとき、どんな判断基準が求められると考えられますか。
日本GLP 田中英樹 プロパティーマネジメント部プリンシパル「20~30年を見据えた投資判断では、気候変動リスクに伴う災害への強靭性、再生可能エネルギー(再エネ)活用による脱炭素対応といった、これまでと異なるピースが加わると思います」
「特に気候変動リスクは既に現実の問題として顕在化しており、これを背景に、各企業ではBCP(事業継続計画)やサステナビリティ対応を重視する傾向が強まっています。当社もこれに応えるべく、開発施設を主に免震構造としたり、河川氾濫に備えて電気設備を高台に設置したりといった対応を取っています」
アイ・グリッド・ソリューションズ 櫻井明大GXインテグレーション部部長「日本気候リーダーズ・パートナーシップ(JCLP)が7月に発表した『2050年の天気予報(Ver.2)』では、全国157地点で40度を超える酷暑日になるとの未来が示されていましたが、猛暑の常態化をもたらす気候変動は電力需要をひっ迫させ、物流施設へのエネルギー供給に影響を及ぼすことが不安視されます」
「今年はホルムズ海峡の封鎖などで原油価格が乱高下し、目先の電力コストさえ読みづらい状況に直面した各企業が、10年、20年といったスパンで安定的かつ経済性の高いエネルギーは何かと模索して、結果的に再エネへと落ち着く流れも出ています」

©「2050年の天気予報」製作委員会
「2050年の天気予報(Ver.2)」では最新の科学的知見により、酷暑による昼間の外出自粛
令、最大瞬間風速100m/sのスーパー台風などを起こり得る未来として紹介している
──物流施設の電力需要は一層高まることが見込まれますから、エネルギーをいかに持続的に調達できるかは大きな鍵となりそうです。
田中「デベロッパーも付加価値をつけるべく、自動化対応や冷凍・冷蔵機能など、多量の電力を必要とする開発案件に注力しています。しかも(受電電圧が20キロボルト以上の)特別高圧対応が採用側の判断基準となっています。大手EC事業者の倉庫も、10年前に見学したときには人が歩いてピッキングをしていましたが、今ではロボットが作業者の元へ棚を運んでくる方式に変わっています。それだけでも電気の使用量は相当増えていますよね」
櫻井「こうした施設が物流を止めないためには、まず安定したエネルギー調達をどうしていくのかといった観点が最重要要件になります。系統電力を基盤としつつも、それだけに頼る〝一本足打法〟で果たして大丈夫なのか。20年、30年という長いスパンで見たときの不確実性への対応という点で、電源を多様化することは今すぐにでも検討すべき経営課題です」
長期価値を生む地域との関係強化
──「地域を支えるインフラ」としての側面も、物流施設の価値基準としてプライオリティが高まるとお考えでしょうか。
田中「社会や地域と〝共創〟できるか──この重要度は一層、高まると考えています。物流施設は大型車の周辺交通量が増えるなどの理由で、地域から歓迎されないケースも少なくありませんが、これを変えたいと考えてやってきました。当社は昨今の気候変動も含めた防災面での地域貢献として、全国約50施設で緊急避難や物資支援に関する協定を自治体と結んでいまして、地域の方々に『こんな施設に避難できます』と周知する意味も込め、夏祭りなどのイベントを開催しています」
「物流施設は長期保有の運用が多いので、現時点での収益性だけで価値を判断するというよりも、長期的に人やモノが集まる場所であるかが重要だと思います。地域との連携も含め、こういった価値を形成する入口部分を強く意識しています」
──アイ・グリッド・ソリューションズも物流施設を地域のためのエネルギー拠点として進化させることを目指されていますね。
櫻井「アイ・グリッドの『GX Logistics(ロジスティクス)』構想で生み出される価値の一つとして、『地域に根差したエネルギー拠点としての物流施設』があります。物流施設の広大な屋根上から生み出された太陽光エネルギーのうち、当該施設で使いきれない分を蓄電池に貯め、AI制御によって必要なところに供給することができれば、地域レジリエンスを高められる可能性があります」
「災害では直接被害だけでなく、停電や断水といったライフライン断絶による影響が無視できません。電気だけでも使えたら心強いですよね。当社は今年6月に全国47都道府県での開発を達成しました。これらの施設が正常に機能しているか常時監視していますので、被害があっても早期に復旧し、地域エネルギー拠点として役立てる体制が整いつつあります」
田中「アイ・グリッドさんが手掛ける、物流施設の屋上に太陽光パネルを設置するオンサイトPPA*のビジネスモデルは強いですよね。野立てのパネルと違って土砂崩れリスクも少ないですし、重い太陽光パネルは構造がしっかりしていなければ設置できないのですが、物流施設は設置面積が広く、堅牢ですから」
──改めて企業は今後、何から着手すべきと考えますか。
櫻井「気候変動による災害リスクやエネルギー価格の変動幅が拡大する中、物流施設に求められる価値基準は確実に変わりつつあります。立地や賃料だけでなく、レジリエンスやエネルギー自立性、そして地域との連携まで含めて評価する時代です。企業には、単年度のコストではなく、中長期的な視点で投資判断をしてほしいと思います。レジリエンスの面での優位性に加え、今後の経営課題となる環境対応まで考慮すると、太陽光をはじめとする再エネの価値が改めて浮かび上がってくるはずです」
*オンサイトPPA:発電事業者が企業施設の屋根や駐車場などに太陽光発電設備を無償で設置・保有し、企業がその電力を安価かつ長期固定の価格で利用できる契約方式。
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