【独自取材】東京海上日動、倉庫の事故防止支援サービスを拡充

【独自取材】東京海上日動、倉庫の事故防止支援サービスを拡充

遠隔で写真や動画の共有可能なシステム活用、コロナで移動制限時も的確なサポート図る

東京海上日動火災保険は、倉庫や工場などの業務内容を分析し、事故が起こるリスクを測定して実効性の高い防止策をアドバイスする「ロスプリベンション(ロスプリ)サービス」を拡充する。6月から遠隔でも写真や動画を共有できるシステムを活用し、同社の調査担当者が現場を直接訪れなくても迅速に作業現場の実態を検証、データを収集して事故防止策を検討可能にする。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で倉庫や工場などの現場に立ち入るのが難しい場合でもロスプリサービスを行える環境を担保。損害保険会社としての社会的役割を果たしていくのが狙いだ。

ロスプリサービスは、人間が効率的に動けるよう環境を整えることで事故やミスを極力低減する学問「人間工学」の考え方をベースにして、倉庫や工場などの日々のオペレーションを観察。さまざまな事故現場を調査、蓄積してきた膨大なデータも生かし、転倒や衝突、落下といったトラブルの危険性が潜んでいる場所や作業内容を特定、改善することで事故を未然に防ぐことを目的としている。

例えば、作業時に腰や肩へ負荷が掛かる姿勢となっている場合はマテハン設備のレイアウトを変更して動きやすい作業の流れに変更するよう提案。現場に事故防止の注意喚起のポスターを貼る場合は、警告色を使ったり文言を簡略化したりして目につきやすいデザインを施すよう助言する。

損害保険金の迅速な支払いにとどまらず、顧客の事故防止サポートという新たな付加価値を提供することで差別化を図るのが狙いだ。現在は年間1000件程度ロスプリサービスを提供しており、18年にはコマーシャル損害部内に専任組織「ロスプリ&テクノロジー戦略チーム(LTS)」を置いて顧客対応を強化している。

通常は同社の調査担当者が現場を訪れて一定期間オペレーションを観察、問題点をあぶり出しているが、新型コロナウイルスの感染が拡大している状況下ではそもそも現場に立ち入れない場面も起こり得るため、同社で対応を検討していた。

オフィスから現場撮影カメラの操作も

東京海上日動は19年7月から電話・ウェブ会議システムなどを手掛ける米サイトコールの「リアルタイムコミュニケーションシステム(WebRTC)」を導入。同システムは高解像の写真や動画を自社オフィスと遠隔地の双方で共有しながら、ウェブ画面上に文字を書き込むなどしてリアルタイムで双方向のやり取りができるのが特徴で、東京海上日動は事故や災害に見舞われた建物の被害状況を確認して迅速な保険金払いにつなげようと採用を決めた。

ロスプリサービスでも同システムを取り入れることで、倉庫や工場の映像をスマートフォンやタブレット端末を介してオフィスのパソコンと共有、調査担当者がカメラを遠隔操作もできるようにし、詳細をつかめるようにする。同システムはライブ映像の配信も安定して行えるため、調査に支障を来すことはないと想定。相手が海外や地方でも支障なくロスプリサービスを展開できる効果も見込んでいる。

(藤原秀行)

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