GROUNDが庫内作業変革に自信、自律協働型ピッキング支援ロボの普及加速も
GROUNDで物流業務効率化の新技術開発に携わっている小林孝嗣取締役CTO(最高技術責任者)と山口春奈ソリューションコンサルティング部長はこのほど、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。
両氏は今年9月に在庫保管や各種作業の効率向上を支援するAI(人工知能)物流ソフトウエア「DyAS(ディアス)」の提供を本格的に開始したのに関連し、顧客のWMS(倉庫管理システム)と連携して作業スタッフの動きなどのデータを分析・活用することで、「同一人数で出荷数増加」を実現できると効果を解説。庫内作業を大きく変革することが可能なツールとの認識を強調し、発売から最初の1年間で10社程度への納入を目指していく考えを示した。
また、既に発売済みのピッキング作業をサポートする自律型協働ロボット「PEER(ピア)」について、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い物流現場で強く求められている「密集解消」に寄与できると指摘。コロナ禍の深刻化以降、引き合いが大きく増加しており、普及を加速させていくことに大きな力点を置いている姿勢をあらためて示した。
小林CTO(GROUND提供)
山口部長(GROUND提供)
「現場の教育コスト抑制にもつながる」
DyASは出荷頻度などから最適な在庫の保管場所を算出する「拠点内在庫配置最適化(Dynamic Inventory Allocator)」、作業を円滑に終えられるよう各業務への最適な要員配置を算出する「リソース配分最適化(Dynamic Resource Allocator)」、今後の出荷動向を予測し対応を提案する「シナリオプランニング(Scenario Planning)」の3つの主要な機能を提供。
ユーザーは全ての機能を利用する以外にも、現場が抱える課題に応じて必要なものだけ選択して導入することも可能。各スタッフの作業状況などを分かりやすく可視化するツール「Intelligent EYE(インテリジェントアイ)」も備えている。価格は機能ごとのライセンス料を500万円から(導入支援や保守サポートなどの料金が別途必要)と設定している。
これまでにトラスコ中山や三菱倉庫とDyASの共同実証実験を展開するなど、トライアルを続けてきた。小林CTOは「庫内スタッフの移動距離を10%前後減らすことにつながった。もちろんお客さまの現場ごとに状況が異なるので一律に同一の効果が出るというわけではないが、生産性向上に貢献可能と確認できた。DyASを生かすことにより、同じ人数でも出荷量を増やせる姿が見えてきた」と成果を強調。
「最初にお客さまのWMSとDyASをうまく連携させられれば、庫内で最短の移動距離を自動的に算出するため、経験の浅い人でも短期間で効率良くピッキングなどの作業ができるようになり、現場の教育コスト抑制にもつながる」と指摘。物流現場の事業継続性を高めていく担保になり得るとの期待を示した。
今年2月の「第4回ロボデックス(ロボット開発・活用)展」に出展した「インテリジェントアイ」の画面
山口部長は「一般的な倉庫の場合、WMSの出荷実績や在庫の情報に加えて、庫内のレイアウト情報もデータ化する必要がある。庫内の広さや間口の多さによっても変わるが、大まかに言って1カ月程度の準備期間で本格的に使い始められる」と説明。
出荷動向を踏まえて現状より効果的な在庫のロケーションを考案する機能を備えていることなどに触れ、「ECの利用拡大で保管の難易度が上がってきており、対応するために使えるものがあればぜひ使ってみたいとの声を聞いている。DyASはそうした課題にもお応えできる」とアピールした。
小林CTOは、今後の出荷傾向を予測するだけでなく、その内容に応じて人員配置をどうすべきかといった部分まで示唆する「シナリオプランニング」の手法を採用していることに言及。「現場作業がどうなるか見えない状況をDyASでお客さまが見えるように後押ししていく。シナリオプランニングを重ねることで知見も蓄積され、より精度を高められる」と述べた。
コロナ禍で自律協働型ロボへの引き合いが3倍に
両氏はGROUNDが注力しているPEERに関し、庫内の1エリアに作業スタッフ1人を配置する「ゾーンピッキング」に対応可能なスタイルのため、庫内で多くのスタッフが交差し合ったり、接近したりすることを回避できるとPR。コロナ感染拡大が鮮明になった今年3月から8月までの間、毎月の平均引き合い数は、その前の19年12月~今年2月に比べて3倍程度に伸びていると明かした。
小林CTOは、ロボットの料金を定額制にして使った分だけ支払う「RaaS(Robot as a Service)」に関しても、ロボットへの引き合いが急増している実態を踏まえて実現を急ぎたいとの思いを吐露。DyASとの連携については「特にロボットの活用を前提とはしていないが、掛け合わせることで相乗効果が期待できるかもしれない」と述べ、今後対応を意識していく考えを見せた。
GROUNDが手掛けるPEER(同社提供)
(藤原秀行)