新たに参入したプレーヤー6社の顔ぶれ紹介
2021年は早くも下半期に突入、年末に向け折り返し地点を過ぎた。新型コロナウイルスの感染拡大で社会が大混乱する中でも、先進的な機能を持つ物流施設の需要が減速する兆しは見えず、新規の開発プロジェクトが続々と公表されている。
ロジビズ・オンラインは新たな特別企画として、主要な物流施設デベロッパー21社をメーンに、これまでの開発の軌跡と今後注目されるポイントについて、各社の公表事例やロジビズ・オンラインの独自取材などのデータを基に紹介してきた。
最終回は、ここ1年あたりで新たに物流施設開発へ参入したプレーヤー6社の動きを報告したい。
短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第2回)
短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第3回)
短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第4回)
短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第5回)
短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第6回・完)
大成有楽不動産
――シングルテナントの小規模施設が主軸、千葉・柏で2棟計画
大成建設グループの不動産会社、大成有楽不動産は2020年、物流施設開発事業に参入。自社ブランドは「LOGIMINAL(ロジミナル)」と設定し、第1号案件として神奈川県厚木市で地上4階建て、延べ床面積5611平方メートルの「LOGIMINAL厚木」が今年3月に完成した。コンパクトなサイズだが、床荷重は1平方メートル当たり1・5トン、梁下有効天高は5・5メートルと標準的なスペックを備えている。
今後は物流適地として注目度が高い千葉県柏市で2棟を開発する計画。最近の物流施設開発で主流となっている大規模マルチテナント型とは一線を画し、シングルテナントの小規模な施設を主軸に据えている。「手ごろなサイズを1棟使いたいとのニーズは底堅い。製品の種類などからマルチテナント型物流施設に入居しづらいお客様の受け皿となる」ことを念頭に置いている。
「LOGIMINAL厚木」の外観
ヒューリック
――第1弾は東京湾岸エリア、千葉・野田でも用地確保
ヒューリックはみずほ銀行が入居しているビルの賃貸業務を中核とするみずほフィナンシャルグループ系の不動産会社。最近は老朽化したビルの建て替えや大型案件の取得などにも積極的に対応している。
物流施設開発は第1弾として、東京都江戸川区臨海町で保有している「ヒューリック葛西臨海ビル」の敷地内で、未利用の建築物容積分を活用した増築の形で「ヒューリックロジスティクス葛西」を建設。地上5階建て、延べ床面積は1万9923平方メートルを予定しており、2022年5月の竣工を見込む。
第2弾は千葉県野田市で開発用地を取得済み。延べ床面積が約2万8900平方メートルの物件を開発する方向で調整しており、竣工は24年の予定。得意にしているオフィスビルや商業施設と同様、物流施設も用地選定などで手堅さが目立つ開発となりそうだ。
「ヒューリックロジスティクス葛西」の完成イメージ(手前側が物流施設、ヒューリックプレスリリースより引用)
JR西日本
――兵庫・加古川で事業に着手、首都圏の共同開発案件も発表
JR西日本は、子会社のJR西日本不動産開発を中心に新規参入。兵庫県加古川市で第1号物件「加古川平岡町NKビル」の建設工事に着手した。地上4階建て、マルチテナント型で延べ床面積は3万2274平方メートルを計画。竣工は2022年5月を見込む。
今年4月には、千葉の湾岸エリアで霞ヶ関キャピタルと連携し、冷凍・冷蔵倉庫を開発する計画を発表。用地は4297平方メートルで、倉庫の延べ床面積は8585平方メートルを想定している。鉄道事業者として、交通アクセスに優れた開発用地の選定に強みを発揮しそうだ。
「加古川平岡町NKビル」(JR西日本プレスリリースより引用)
霞ヶ関キャピタル
――首都圏と関西圏で計8案件のハイペース、冷凍・冷蔵倉庫にも注力
太陽光発電施設の開発や不動産のコンサルティングなどを展開している霞ヶ関キャピタルは、2020年6月に物流施設の開発・投資・運用を担う「物流事業部」を新設。新たな収益事業に育てようと優良な開発用地の取得にアクセルを踏み込んでいる。
今年6月には埼玉県加須市で新たにドライタイプの物流施設を開発する計画を公表。開発予定案件はトータルで首都圏と関西圏の計8カ所、総延べ床面積は10万3864平方メートルに上る。相当なハイペースだ。
独自ブランド「LOGI FLAG(ロジフラッグ)」を設定。同社の戦略の大きな特色の1つが、冷凍・冷蔵倉庫にも注力している点だ。8物件のうち、現時点で冷凍・冷蔵倉庫として建設することを計画しているのは4物件。ニーズを先取りしようとする姿勢が目立つ。
千葉・船橋で開発中の冷凍・冷蔵倉庫の完成イメージ(霞ヶ関キャピタル提供)
神鋼不動産
――地盤の関西でスタート、25年までに500億円投資を視野
東京センチュリーや神戸製鋼所、中央日本土地建物が株主を務める神鋼不動産は今年4月、物流施設開発への参入を決定した。グループ企業の持つ遊休地などを積極的に活用する方針で、2025年までにトータルで500億円を投資、年1棟程度開発していくことを視野に入れている。
第1号は大阪府高槻市でマルチテナント型物流施設を建設。地上4階建て、延べ床面積は5万2063平方メートルを計画しており、2024年1月の開業を見込む。併せて、神戸市須磨区でも延べ床面積が約1万平方メートルの物流施設開発計画を進めており、竣工は22年9月を想定している。
脱炭素を志向する動きが不動産業界でも広がっているのを踏まえ、東京センチュリーと組み、物流施設などでの再生可能エネルギー利用促進へ協業を始めることも発表済み。高槻市の物流施設屋上には太陽光発電設備を導入、他のプロジェクトでも取り組みを検討する。
大阪府高槻市の新施設完成イメージ(神鋼不動産プレスリリースより引用)
アライプロバンス
――千葉・浦安の初案件は「工業団地の風景を更新する物流倉庫」に
アライプロバンスは祖業の金属加工業から、保有する土地を有効活用し、総合不動産業への転身を図る異色の存在だ。第1弾は千葉県浦安市の浦安鉄鋼団地内で10月末の完成を目指して工事を進めている「アライプロバンス浦安」。地上4階建て、延べ床面積は3万4581平方メートルの予定。浦安市で大規模な賃貸物流施設が建設されるのは08年以来で、希少性の高さが注目されている。
開発のコンセプトも独自性が目立つ。「工業団地の風景を更新する物流倉庫」を目指し、外構部に自然を模した独自の庭園を3種類整備、従業員らがリラックスできる空間に仕上げる計画だ。デザインは著名なデザイナー・建築家の菅原大輔氏に依頼しており、同社は優れたデザインを持つ製品や建築物などに贈られるグッドデザイン賞を物流施設で獲得したいと公言する。
第2弾は東京都江戸川区東葛西で総延べ床面積が約12万平方メートルの物流施設2棟を建てる方向で調整を進めている。
「アライプロバンス浦安」の完成イメージ(アライプロバンス提供)
短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第2回)
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(藤原秀行)