【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】日本GLP・帖佐社長(中編)

【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】日本GLP・帖佐社長(中編)

「有望な『物流テック』に積極投資していきたい」

日本GLPの帖佐義之社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

帖佐社長は、2021年の物流施設開発規模は着工ベースで4000億円規模になるとの見通しを示すとともに、今後数年間も平均して3000億円程度のプロジェクトを進めていけると展望。地方エリアでも需要が見込めるとして開発の機会を積極的に探っていく方針を示した。

また、グループでトラック予約・受付サービスなどを手掛けるモノフル、三井物産や豊田自動織機との合弁でロボットレンタルを担うプラスオートメーションを通じ、物流施設入居企業への先進的なロボットや業務効率化のソリューションをさらに提供していきたいとアピール。モノフルを通じて有望な技術を持つスタートアップ企業へ投資していくことにも前向きな姿勢を見せた。

インタビュー内容を3回にわたって紹介する。


帖佐社長(2020年、中島祐撮影)

物流の枠を超えた需要を取り込む物流施設に

――最近はデベロッパーの間で、都市部だけでなく、地方エリアでもマルチテナント型の物流施設を開発する動きが見られます。長年、先進的な物流施設の供給がなかっただけに、逆に需要が見込めるとも聞きます。御社はどう対応しますか。
「そうですね、私もその通りだと思います。当社は長年、開発の比率が東京圏と大阪圏で9割、残る1割が地方、というような説明をしてきたと思いますが、最近は地方の比率が上がってきています。九州の福岡、中国の岡山や広島などに展開しており、1割だったのが2割くらいになってきているのが実感です。荷主企業や物流企業の間で確実に地方物件への関心も増えてきていると思います」

――地方で注目しているエリアはありますか。
「やはり経済規模の大きいところが中心になってくると思います。あとは、大きな経済圏にアクセスの良い近傍の都市になるでしょうか。中国地方や九州地方に加えて、東北地方も機会があれば進出したいですね。あとは沖縄も、現状では大型の先進的な物流施設はほぼ存在していません。当社は那覇市に隣接した浦添市でBTS型物流施設の開発に着手していますが、その案件を足掛かりにして県内で次の案件につなげていきたいですね」

――2022年も、基本的には21年と同じくらい積極的なスタンスで物流施設開発に臨みますか。
「そうですね。22年にとどまらず、23年、24年も今のペースで継続的に展開していけば、と思っています」

――21年の着工ベースで規模はどれくらいですか。
「今年は4000億円を超えると思います」

――来年以降の規模は?
「今年は大型案件の影響で金額が大きくなっていますが、多分、ならしてみれば向こう3年くらいは毎年3000億円くらいのペースになるのではないでしょうか」

――新型コロナウイルスの感染拡大があっても、基本的に物流施設開発に関してはネガティブな影響はあまりないという感じでしょうか。
「そう思います。先ほどもお伝えしたALFALINKに代表されるように、物流の枠を超えた需要を取り込む物流施設になってきていますから、そういった意味では需要の裾野が広がっていると捉えています。しばらくは需給バランスの逼迫し続けた状態が続くと思います」

――生産加工や研究開発といった、物流以外の用途も想定した物流施設は、ALFALINKのような大規模なもの以外の規模でもニーズがあるのでは?
「全くその通りだと思いますね。ALFALINKを通じて、サプライチェーン全体をサポートするというわれわれのコンセプトが皆さんに認知され、浸透していきました。物流施設をどう使うかは、もう本当に、ユーザーによって千差万別ですから、大きな施設に限らず小さな施設でも、といったように、施設ごとに多様な使い方ができるのではないかと考えています」

「サプライチェーンの見直し、再編に伴う物流施設需要についても、間違いなく今後もニーズが見込めます。まだまだ、物流そのものがeコマースに限らず進化の段階にありますので、いろんな形で新しいニーズは生まれ続けるでしょう」

――ECが先進的な物流施設の需要をけん引している、という話はもう定説のようになっていますが、その構図も基本的に変わらないでしょうか。
「確かにECが需要の大きな要素であることに違いはありません。ECだけに限らず、例えばECに影響を受けて他の小売御業も事業が変わってくるということもありますし、いろんな波及効果が見込まれます。ECの存在は非常に大きいですね」


日本GLPとしては沖縄県内初となる物流施設「GLP沖縄浦添」の完成イメージ(同社提供)

「RaaS」はこれからも伸びしろが大きい

――多様なニーズに応えていく1つの答えが、グループ企業でトラック予約・受付サービスなどを展開するモノフルや、三井物産や豊田自動織機と共同で出資しているプラスオートメーションだと思います。両社の今後の展開はいかがですか。
「まずモノフルについては、当社が開発した物流施設をお使いいただくための営業のサポートツールとして展開していることは間違いありません。しかし、モノフルは決してわれわれの物流施設だけのために存在しているわけではありません。モノフルはモノフルでいわば1つの人格であって、お客様をサポートするための多様な機能を有しており、自由な展開ができる会社だと思っています。作り出しているサービスの汎用性から見ても、当社の物流施設に限って展開するということは絶対ありませんし、もっと言えば物流業界に限定されることもないでしょう。モノフルはモノフル独自の成長戦略がありますし、先進技術を使ったサービス開発による成長の可能性はすごく大きいと思います。GLPグループの中でも全く別個のビジネスとして広げていけるのではないでしょうか」

――モノフル単体でどこまで成長を目指しますか。
「具体的な数値目標というのはまだ作ってはいません。その前にまず提供するサービスのコンテンツをより充実させることが大事ですし、モノフルを立ち上げてからこれまでの取り組みの中でいろいろ見えてきた課題もあります。それを今、1つ1つ見直していて、これから地に足を付けた計画を作り、展開していこうとしています」

――プラスオートメーションについては?
「これまでの成果にはすごく満足しています。お客様からも極めて好評をいただいています。アパレル業界などを中心にロボットを導入していただいていますが、今後も利用したいですといったお声を頂戴していますし、大口ユーザーの方からも、非常にお褒めの言葉をいただいています。われわれだけでなく、三井物産さんや豊田自動織機さんもとても大きな期待を寄せています」

――プラスオートメーションが主軸としている、ロボットを利用した分だけ料金を支払うレンタルの「RaaS(Robot as a Services)」という手法は定着してきたと思いますか。
「成長の余地は大きいと思います。現状ではまだまだ定着したとまでは言えませんが、RaaSでロボットをご利用いただいている方の解約率はものすごく低い。非常にこれからも伸びしろがあるでしょう。ものすごく楽しみにしています」

――物流にとどまらず製造業でも期待できそうですか。
「そうですね。RaaSをご利用いただける場面は物流に限らずあると思います」


プラスオートメーションがRaaSで提供している中国製ソーティングロボット「t-sort」

――モノフルは自社でのサービス提供に加えて、物流業界の変革につながるような技術やサービスを持つ新興企業に投資するベンチャーキャピタル的な役割も担っています。有望な技術はかなりありそうですか。
「モノフルの投資残高も積み上がってきました。モノフルの担当からは案件はずいぶん多いと聞いています。ベンチャー投資なので、必ずしも1件当たりでそんなに大きな金額の資金が出ていくものではないですが、当社のビジネスに役立つようなサービスを行っている会社ですとか、直接ではなくても将来的に当社のビジネスに資するような企業であれば積極的に投資していきたいですね」

――投資の余地自体はまだまだありそうですか。
「物流業界は割と機械化がしやすく、かつ機械化が進んでいないと捉えられていると思いますし、その覇権を握っているような強いサービスや会社がまだ登場していません。いろんな意味で群雄割拠の状態にあり、いろんな方々が虎視眈々と、勝ち残ろうと取り組まれているところではないでしょうか。モノフルが今後手掛けていくサービス自体が“物流テック”として注目される存在になるかもしれません」

後編に続く)

(藤原秀行)

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