“水上の軽トラ”帆船型ドローン、神奈川・逗子湾で貨物輸送など想定した自動航行デモンストレーション実施

“水上の軽トラ”帆船型ドローン、神奈川・逗子湾で貨物輸送など想定した自動航行デモンストレーション実施

100kg搭載可能、災害時に孤立地域へ支援物資輸送も

帆走の自動化技術を手掛けるエバーブルーテクノロジーズ(東京都調布市)は12月7日、全長5メートルクラスの帆船型ドローン(無人貨物運搬型トリマランヨット)「Type-Xプロトタイプ」を使い、神奈川県の逗子湾で自動航行のデモンストレーションを実施したと発表した。

今回のデモンストレーションに使用した「Type-X プロトタイプ」は100キログラム以上の積載能力(ペイロード)を持ち、今年6月開催のドローンに関する国際展示会「Japan Drone 2021」でお披露目した。

Type-Xは船長が必要な動力船では人件費や燃油代からコストが見合わない離島間で荷物を運搬したり、非常時や災害時に陸路が使えず孤立した沿岸部の海岸へ直接着岸して支援物資を無人で送り届けたりと、「水上の軽トラ」として多様な用途に活用することを想定している。


Type-X 実証テスト風景

また、海難救助や観光用途での利用の問い合わせが多く、搭乗者ありのニーズが高いことが分かったため、初めて人を乗せたデモンストレーションを企業向けに実施した。


Type−X 人物搬送

同モデルは、2020年に開発した2メートルクラス帆船型ドローン「Type-A」の拡大版として、Type-Aで培った無人帆走技術を適用して開発。Type-Aはこれまで逗子市長をはじめ関係者向けに自動航行などの海上テストを実施。実際の運用を想定した意見を受け、社会実装に向けた活動を続けてきた。

今回のデモはType-Xを利用し、風力を使って洋上で長時間待機、漂流する遭難者を発見したり、指定した位置へ自動で向かって救助したりすることを想定した自動操船実験も行った。

実験の安全を確保し、積載する重量物としての役割を兼ねて、船舶免許を持ちヨット操船の技術に長けた監視要員を1名乗船させた。監視要員は乗船しているのみで、操縦は自動か遠隔にて実施。陸上から遠隔で設定した目的地に対し、風力だけで自動航行、到達することを確認した。

※以下、プレスリリースより引用(一部、編集部で修正)

  • 実施エリア: 神奈川県逗子市 逗子海岸
  • デモンストレーション概要:
  • 海況と実証された概要:
  • 風向:北風(平均-10度)
  • 風速:最大7.54m/s(14.7ノット)平均2.21m/s(4.30ノット)
  • 艇速:最大 3.39m/s(6.59ノット)平均1.23m/s(2.39ノット)※自動操船時
  • 航行距離:N/A
  • 稼働時間:約85分 ※待機時間含む
  • 積載量/搭乗者:1名(約80g)

※風向風速はType-X搭載の風向風速センサーから、艇速はGPS情報から取得

想定される活用イメージ

人件費、燃油代がほぼゼロ

これまで船舶は大型化によってコストダウンを図ってきたが、無人帆走技術は人件費、燃油代がほぼゼロのため小型な舟艇でもコストが安く、分散化することで、コストをあまり掛けられない水上移動手段や貨物運搬など、多種多様なニーズに対応が可能となる。

港湾施設がない場所でも砂浜に着岸できる

小型帆船は港湾施設がない場所でも砂浜に着岸できるため輸送の自由度が上がり、陸上で言えば貨物列車のターミナル駅とトラック便による個配といった棲み分けと同じように、沿岸部の必要な場所へ直接届けることが可能。

災害時の支援物資輸送で活躍の可能性

このような特徴を持つ小型無人操船ヨットは、災害時、土砂災害で陸路が分断された沿岸部の市町村への支援物資の輸送に役立つ。具体的には近隣の市町村から支援物資を積載した小型無人操船ヨットを出帆、海上を風力で移動し陸路が分断された沿岸部の市町村の海岸に着岸し物資を届ける。小型ヨットは港湾施設が損壊した場合でも砂浜があれば着岸できるため災害時に活躍できる。

また、船舶型ドローンの特徴として、ペイロードが飛行型ドローンに比べ大型のため飲料水や米穀、食料品などの重量物や、トイレットペーパーやおむつなどかさばる日用品の運搬に向いている。輸血用血液など急を要するものは飛行型ドローン、重量物や日用品は船舶型といった使い分けをすることで、災害時、効果的に対応可能。

(画像はエバーブルーテクノロジーズ提供)
(ロジビズ・オンライン編集部)

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