政府が海上コンテナ輸送の情報共有会合開催、船社の“日本離れ”懸念
国土交通、経済産業、農林水産の3省は1月14日、海上コンテナ輸送が世界的に混乱しているのを踏まえ、関係業界間で連携して対応するため、情報共有会合をオンラインで開催した。会合は昨年に続いて2回目。
参加した海運業界や荷主企業の関係者らからは、荷動きが依然活発なため主要航路の正常化は見通せないとの意見が示されたほか、特に混雑が深刻な米国のロサンゼルス港に関しては、状況は今夏まで改善しないとの厳しい予想も聞かれた。
また、海外の主要船社が混雑回避のために日本への寄港を見直す“日本離れ”の動きを加速させることを懸念し、国交省に港湾の存在感向上のための対応を求める向きもあった。
1航海当たりの往復日数が通常の2倍
会合は冒頭、野村総合研究所の宮前直幸プリンシパルが国際物流混乱の背景と各方面への影響を開設。中国で海上コンテナの増産が進んでいることなど、明るい材料があることに言及した。
続いて、日本貿易振興機構(ジェトロ)ロサンゼルスの森本政司氏が、米ロサンゼルス・ロングビーチ港の混雑について現状を報告。1月12日時点で入港を待っているコンテナ船が102隻あり、沖合で順番を待つ日数が平均で17.6日に達していることなどを明らかにした。
森本氏は例年閑散期となっている1月も輸入量が高水準を維持しており、「アジアから船がまだまだ来る。(米ロサンゼルス港湾局も)いろんな対策をしているが、いつごろ混雑がなくなるかを見通すのは難しい」と指摘。「今年の夏ごろまで全体の状況はそれほど改善しないと考えて準備をしてほしい」と訴えた。
定期コンテナ船事業を手掛けるオーシャン・ネットワーク・エキスプレス(ONE)ジャパンの戸田潤取締役専務執行役員は、自社の日本を発着する北米サービスの運航に関する現況を解説。「北米側の港湾混雑は改善の兆しが見えず、滞船隻数・日数が増え、22年も欠便が発生する見通し。短期、中期的にも混雑解消のめどは立っていない」と語った。
併せて、ONEが所属している国際的な海運アライアンス「ザ・アライアンス」を通じて運航している「FP1」と「PN1」のルートについて、1航海当たりの往復日数がFP1は通常の35日から70日に、PN1も42日から77日と2倍前後を要していることに言及。ONEとして、混雑港への寄港回避、コンテナの追加購入などの対応に今後も注力していく姿勢を強調した。
A.P.モラー・マースクの担当者は「引き続き(海上コンテナ輸送の)需給が逼迫している。空コンテナの回送などで輸送サービスの品質を高める」と語った。
中国経由の鉄道輸送はポテンシャルある代替手段
国際フレイトフォワーダーズ協会(JIFFA)の担当者は、各フォワーダーが取り組んでいる代替輸送ルート確保の現状を説明。欧州向けの鉄道輸送として中国経由のCLB(チャイナ・ランド・ブリッジ)やロシア経由のSLB(シベリア・ランド・ブリッジ)の利用拡大に力を入れており、CLBについては21年の輸送量が全体で前年から3割増の約150万TEU(20フィート標準コンテナ換算)と利用が増えているが、日系フォワーダーの取り扱いは1%に満たないため、「まだまだポテンシャルのある代替手段ではないか」と述べた。
同時に、運賃がコンテナ1本当たり1万ドル(約110万円)と海上運賃に近い水準まで高騰している上、欧州国境で混雑が発生、リードタイムも海上輸送に比べて優位性が縮小してきており、コンテナ自体も足りなくなってきていると問題を紹介した。
荷主企業からは、日本機械輸出組合に加盟している東芝とキヤノンの担当者が、事業への影響を語った。東芝の担当者は、製品によってはコンテナ輸送を年間で契約するのが難しいものがあり、運賃高騰で輸送コスト増加分が数十億円に達しているとの実情を紹介。船社に対し、安定的な輸送体制の維持を要望した。船社の“日本離れ”に関しては「出荷が思うようにいかないと(メーカーとして)動きが取りづらくなる」と語り、国に対策を講じるよう求めた。
キヤノンの担当者は「在庫の積み増しも考えるが、そもそも半導体などの不足で作りたくても作れない部分があり、輸送もできない。対応に苦しんでいる」と思いを吐露。鉄道輸送の活用や在庫の持ち方の見直しなどを検討していることを明かした上で「こういう時こそ日本からの基幹航路維持が重要」と話し、国交省へ日本の港湾の存在感を高めるための方策を要請した。
日本醤油協会から参加したヤマサ醤油の担当者は、原材料が計画通り調達できなかったケースに触れ、現在の混乱が続けば日本の醤油づくり全体に影響を及ぼすとの見方を示した。
(藤原秀行)