【独自】ドローン物流の「北海道モデル」構築目指す

【独自】ドローン物流の「北海道モデル」構築目指す

エアロネクスト・田路CEO、市街地と周辺部含めた広域カバー可能に

ドローンの技術開発などを手掛けるスタートアップ企業のエアロネクストは、セイノーホールディングス(HD)と連携し、ドローンなどの先端技術を組み合わせて地方の物流ネットワーク維持を図る「SkyHub(スカイハブ)」の実用化を図っている。

昨年4月からSkyHubを展開している山梨県小菅村はドローン配送が累計で200回を超えるなど、村民にも着実に受け入れられており、エアロネクストとセイノーHDは全国の自治体へ横展開していくことが可能と確信。小菅村で積み重ねた知見を活用していく考えだ。

両社は第2弾として、北海道上士幌町で昨年10月、SkyHubの取り組みをスタートしており、自治体が広域にわたる上、市街地と周辺の間でかなりの距離があるため、ドローン配送は需要が確実に見込めると判断。上士幌町のドローン運営を「北海道モデル」として確立し、トラックドライバー不足などで持続が危ぶまれている北海道の物流維持に貢献していくことを目指している。


上士幌町でのドローン配送の様子。牧場内でバーベキュー用の肉などを届けた(以下、写真はいずれもエアロネクスト提供)


田路CEO

配送有償化も「気兼ねせず頼める」と歓迎の声

小菅村のSkyHubは、村内に「ドローンデポ」と呼ばれる商品の在庫・発送拠点を設置。村民の購入が多い食料品や日用品をストックしておき、注文を受けるとその都度、ドローンと軽貨物車両のいずれか最適な手段で届けている。ドローンの場合は、村内に設置している配送場所「ドローンスタンド」まで空輸している。

昨年4月から無償で展開していたが、利用状況や住民の反応を踏まえ、昨年11月から有償化。併せて、専用アプリで買い物をした地域の商店やスーパーなどの商品、飲食店の出前が希望日時に個宅へ届くサービスも展開している。

エアロネクストの田路圭輔代表取締役CEO(最高経営責任者)は「ドローンはあくまで配送の手段。ドローンありきではなく、住民の方々のニーズに応えるには、様々な手段を組み合わせる方がいい。悪天候でドローンが飛べない時などにも配送を持続できる」とメリットを強調する。

村民からも「子供が小さいのでドローンで自宅近くまで配送してもらえるのはとても助かる」などと評価する声が聞かれる。有償化についても「お金を払う方が、むしろ必要な時に気兼ねせず頼める」と歓迎されているという。

既に多くの企業や地方自治体が小菅村へ視察に訪れている。小菅村をSkyHubの最初の展開場所として選んだ際、東京との県境付近に位置し、比較的東京からも訪れやすいという点が1つの有力な決め手となった。田路CEOは「小菅村で実際にドローンを飛ばしているところを“ショールーム”として自分の目でご覧いただけるのが非常に大きい」と話す。セイノーHDの協力を得て、3年程度で全国にSkyHubを展開していくことを念頭に置いている。


小菅村でのドローン配送の様子

寒冷地のドローン物流モデルにも

セイノーHDとスカイネクストは小菅村の成果を生かして、SkyHubの第2弾として北海道上士幌町で電通とも連携し、取り組みを開始。小菅村と同じく、ドローンデポを設けてドローン配送を運営するほか、牛の検体を研究施設にドローンで届けたり、牧場内でバーベキュー用の肉や飲み物を観光客に配達したりといった新たな用途の開発にも注力している。

上士幌町は人口が約5000人で、小菅村の約700人と比べると多い上、行政面積は700平方キロメートルと広大。市街地とその周辺の間は数キロメートルから数十キロメートルと相当な距離があることが大きな特徴となっている。北海道では現在、長距離を走るトラックドライバーの不足を受け、メーカーが共同物流に踏み切るなど、道内の物流網維持が危ぶまれている。

田路CEOは、市街地と周辺部を結ぶ物流にドローンを投入することでカバーできる可能性があると期待。「面積が広いだけに、例えば複数のドローンを周辺部へ同時に飛ばし、物流の効率を高めることが不可欠」と指摘する。北海道は個人の住宅自体も広く、庭や畑を敷地内に抱えているため、小菅村のようにドローンデポで受け取る代わりに、住民の自宅まで直接配送することができると見込む。

上士幌町では今年の春ごろにもドローンを完全自動で飛行させ、個人宅まで荷物を届けるサービスを実現させることを目指している。エアロネクストは自社のホームページに掲載しているブログで「これからも、北海道におけるSkyHubのショーケースとして、上士幌町の取り組みを皆さんにお伝えしていけるように頑張っていきたい」と決意を示している。

田路CEOは「上士幌町でオペレーションを確立し、広大な地域の物流をドローンでカバーする『北海道モデル』を実現したい。そうすれば北海道の他の自治体や、同じく市街地と周辺部の距離が離れている他の都府県の自治体でもお役立ていただけるようになる。冬場に雪や風で気候が厳しい寒冷地のドローン物流の在り方も構築していきたい」と意気込んでおり、国内随一の膨大な物流の知見を持つセイノーHDと引き続き連携していく考えだ。

(藤原秀行)

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