サプライチェーン混乱、日本の経営幹部「長期的な対応を最優先で実施」は4割弱にとどまる

サプライチェーン混乱、日本の経営幹部「長期的な対応を最優先で実施」は4割弱にとどまる

米アリックス・パートナーズ調査、破壊的な経営環境の変化に迅速な行動呼び掛け

米国の大手コンサルティング会社アリックス・パートナーズは2月22日、日本を含む世界9カ国の企業CEO(最高経営責任者)や幹部を対象に、破壊的な経営環境の変化(ディスラプション)をいかに捉え、どのように行動しようとしているかを尋ねた意識調査「ディスラプション・インデックス2022年版」の結果を公表した。

2022年に最優先で対処すべき最大のディスラプションを選んでもらったところ、グローバル全体では「自動化/AI/ロボティクス」が12%で最も多く、「新たな競争やビジネスモデル」「材料・プロセスの技術進歩」がそれぞれ11%、「盤石なテクノロジーのインフラ」「パーソナライズ製品、サービス、経験への期待」「データプライバシーとセキュリティに関する課題」が各10%などと続いた。「COVID-19(新型コロナウイルス)」はわずか3%だった。

日本に関しては「材料・プロセスの技術進歩」と「パーソナライズ製品、サービス、経験への期待」がともに13%で最も多く、「COVID-19」はやはり2%にとどまった。世界的に経済活動が再開される中、主要国の企業経営幹部の間ではコロナ対応よりも深刻化する労働力不足や先進技術への対応などがより重要との受け止め方が支配的になっていることが浮かび上がった。


調査結果(アリックス・パートナーズ資料より引用)

また、グローバル全体では、サプライチェーンの混乱に伴う機能不全を前に、長期的なソリューションを採用している経営幹部は4割にとどまる一方、現在講じている対策は十分ではないと認識している割合が77%に達していることが分かった。日本に関しても同様の傾向が見られた。

コロナ禍で原材料や資材・部品の調達に支障をきたすなどサプライチェーンの混乱が続く中、経営幹部の間で危機意識は高いものの、具体的にどのように対処していいのかを必ずしも見定められていない実態が浮かび上がった。

一方、日本とグローバルの比較では、自社のビジネスモデルはディスラプションのスピードに適応していないと認めた経営幹部は日本が48%で、グローバル平均の57%を下回り、調査対象となった9カ国の中で最低だった。ドイツ(71%)、カナダ(63%)、中国(62%)などと差が開いた。

オンラインで同日、調査結果に関する会見を開いたアリックス・パートナーズ日本共同代表の野田努氏は、ディスラプションへの対応について「待ちの姿勢は時間を浪費していることになる」と語り、完璧さよりもスピードを重視した“いち早く行動に移す”意識が重要と指摘。日本企業にもサプライチェーンの強化やデジタル化促進などで迅速な行動を取るよう促した。

同種の調査は3回目で、日本、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、中国の9カ国を対象に、2021年9~11月にオンラインと電話で実施。売上高1億ドル(約110億円)以上の企業でディレクター以上の役職に就く3000人に回答を依頼した。日本は333人だった。対象企業は航空宇宙・防衛、自動車、消費財、エネルギー・電力、小売など10業界。

65%が労働力不足の恒常化を危惧

サプライチェーンに関する意識調査結果によると、ディスラプションを念頭に置いて、日本の経営幹部に対して講じている、もしくは講じる予定をしている最優先の対策を尋ねたところ、「輸送手段確保のための契約締結」が25%、「材料・製品・輸送コスト増の受け入れ」が22%、「顧客への商品・原材料の値上げ」が17%。短期的な対応を回答したのはトータルで64%となった。

一方、「サプライチェーンレジリエンス(強靭性)の構築」が19%、「サプライサイクル(サプライチェーン運営手法)の見直し(リショアリング=海外生産拠点の国内回帰=など)」は17%で、長期的な対応を最優先項目として選択したのは合計で36%にとどまった。

また、サプライチェーン混乱の影響へトップに位置付けて講じている対策の有効性について考え方を聞いた結果、「十分ではない」と受け止めている向きが77%に達した。

労働力問題については、日本の経営幹部の36%が優秀な人材の不足を懸念しているほか、労働力不足の恒常化を危惧している割合も65%に上った。また、63%が自社の社員が今後の事業成長に必要なスキルを身に付けることができないと考えており、74%は将来必要な人材教育に会社が責任を持って取り組む必要があると答えた。

機運が高まっている業務のデジタル化に関しては、74%がデジタルツールの導入が自社の存続に不可欠、または重要と受け止めている半面、61%が自社の従業員は自分たちのやり方に固執し、変化へ柔軟に対応できないと感じている向きが61%存在した。DXへの対応に苦慮している実態がうかがえた。

(藤原秀行)

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