物流施設開発のノウハウと知見生かし、データセンターや再生可能エネルギーの事業拡大に注力

物流施設開発のノウハウと知見生かし、データセンターや再生可能エネルギーの事業拡大に注力

日本GLP・帖佐社長らが今後の経営展望、スタートアップ投資も継続

日本GLPは2月14日、移転した東京都中央区八重洲の新たな本社オフィス内で、今後の物流施設開発などの事業の基本的な方針に関する記者説明会を開催した。

帖佐義之社長は、物流施設開発で培ったノウハウや知見も生かし、データセンターや再生可能エネルギー活用の新領域で事業成長を目指す姿勢を強調。物流領域の非効率改善やDXを後押しできる有望な技術を持つスタートアップを対象としたベンチャーキャピタルの業務にも引き続き注力する姿勢を示した。


今後の事業展望などを語る帖佐社長

「データのロジスティクス・倉庫」は既存事業と親和性高い

帖佐社長は、特定エリアで集中して物流施設を複数開発するプロジェクト「ALFALINK(アルファリンク)」が、物流に特定せず製造など様々な機能を施設に持たせてサプライチェーン全体の効率改善に貢献できるようにしたり、地域の住民らに施設内のアメニティ設備を開放したりと新たな形の物流施設開発を進めていることに言及。

「われわれの事業そのものが社会インフラになれるのではないか、かなりの部分を担っているのではないかと感じ、活動を広げてきた」と語った。データセンターについては「いわばデータのロジスティクス、データの流通加工、データの倉庫であり、われわれの事業と親和性が高い。この10数年間培ってきた物流施設の建設技術のノウハウの大きな割合がデータセンターにも生かせる」と狙いを語った。

再生可能エネルギーに関しては、物流施設やデータセンターで消費する電力を太陽光発電パネルなどで賄うことを想定していると説明。「化石燃料由来のエネルギーに頼るのは時代の趨勢とミスマッチ。再生可能エネルギーの供給を第三者に依存しておくのは心もとない」と述べ、自前で再生可能エネルギー事業を展開する意義を強調した。

また、GLP本体から2019年に独立し、GLPグループの物流施設の資産運用や開発資金の調達、アセットマネジメント、ファンド組成・運営を手掛けるGLPキャピタル・パートナーズとの分業体制に移行したことで、物流施設の開発や新規事業の展開、資金調達などをより円滑に進められているとアピール。

分業体制による資金調達と事業展開のサイクルにデータセンターや再生可能エネルギーの事業を従来以上に組み込んでいくことを示した。

説明会に同席した、日本GLPの山後正憲プロジェクトマネジメント部長は、アルファリンクの案件を含めて2023年は現時点で竣工が13棟、着工が10棟を見込んでいると説明。「アルファリンクの概念をよりブレークダウンして、それぞれ個々の物流施設の開発を継続的に行う」と語り、アルファリンク以外の案件でも地域との共生や働きやすい環境の整備などの要素を取り込んでいくことに強い意欲をのぞかせた。

また、最近の建築費高騰で開発スケジュールを延期した案件があるかどうかを聞かれたのに対し、「工程はいろいろ議論しながら進めている。現時点でスケジュールを延期してやっていこうというプロジェクトはない。今は予定通り進めたい」と回答した。

エネルギー問題解決に資する有望スタートアップへの投資も

山中敦データセンター事業部長はこれまでに、首都圏と大阪圏で合計約600MWの供給電力を見込めるデータセンター開発用地を取得済みで、23年中に第1号案件の工事に着手する見通しとあらためて紹介。「物流施設開発のアドバンテージに加え、データセンターのチームをグローバルとローカルの両方で持つことで、開発用地選定から施設整備、運営まで事業を一気通貫に進めていける非常にレアな存在になることができる」と自信を見せた。

洞洋平再生可能エネルギー事業部長は、日本GLPグループ自体で物流施設とデータセンターの両事業に1500MWの電力需要が見込まれていると指摘。顧客企業のニーズにも対応するため、物流施設屋上への太陽光発電設備展開に加え、独自の風力発電所開発なども推進していきたいとのスタンスを示した。

太陽光発電は老朽化設備のリサイクル方法確立などが課題になっていることについては、自社内で研究開発を進めるとともに、グループのベンチャーキャピタル事業を駆使し、エネルギー問題解決に有効な技術を持つスタートアップの発掘・成長支援にも取り組んでいくことを明示した。

モノフルの藤岡洋介社長(日本GLP常務執行役員を兼務)は、ベンチャーキャピタル事業に関し「海外のオフィスとのシナジーも今後期待できるのではないかと思う。これから日本GLPは様々なアセットの開発をしていくが、それに横串を通す形で、グループ全体のテクノロジーを提供していきたい」と語った。

世界的な景気後退懸念などの影響でスタートアップの資金調達が難しくなっている現状に対しては「確かにIPO(新規株式公開)の環境という意味では少し冷え込んでいるが、スタートアップの投資環境という意味ではまだ悪くないと思っている。まだテクノロジーが活用されていない部分があり、少子高齢化などでテクノロジーを用いていない場合のソリューション提供が難しくなっている。テクノロジーを現場で活用しようとする意欲は非常に高い」と指摘。優良企業への投資機会が引き続き見込めると期待感を示した。

(藤原秀行)

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