予算と要件に合わせ物流用地を注文開発
市街化調整区域の転用にノウハウと実績
農地や遊休地をまとめあげてトラック駐車場に転用するサブリース事業で地盤を築き、物流用地の開発に手を広げた。2022年12月、総合不動産のオープンハウスにグループ入りして資本力を強化、延べ100万㎡を開発する新3カ年計画を策定した。割安な物流用地開発を通じて物流企業の成長を支援する。(制作:本誌編集部)
創業者の清水三雄会長(左)と後藤道生社長
オープンハウスにグループ入り
日本マネジメント開発研究所(JMD)は、京都に本社を置く物流不動産開発会社だ。物流会社や荷主企業の拠点計画と予算に沿って物流用地を開発する「注文開発」を得意とし、幅広くコンサルティング業務も手掛けている。
創業者の清水三雄会長は、KBS京都ラジオで冠番組のパーソナリティも務める連続起業家として知られている。これまでに土地の注文開発の他、耕作放棄農地の再生事業、ヘリポート経営、プライベートジェットのシェアリングサービスなど、ユニークなビジネスを数多く立ち上げてきた。
物流用地の開発に乗り出したのは、1991年の借地法改正で事業用定期借地権が創設されたことがきっかけだった。物流適地の農地や遊休地を借り上げ、運送会社にサブリースするビジネスを着想して、「ニュービジネス大賞」を受賞。「JPD」のブランドで事業化に踏み切った。
2019年2月、このサブリース事業の母体としてきたジェー・ピー・ディー清水をホロスホールディングスに譲渡して、JMDでは物流用地の開発に特化する新体制に移行した。これを機に大規模な物流用地の開発をスタート、事業を急拡大させている。
「コロナ禍に入って以降、EC向けや生産の国内回帰に伴う物流用地の開発依頼が急増している。その一方で地方自治体は市街化調整区域の転用に前向きになっている。後継者不在で土地の処分に悩む高齢農家が増えているからだ。農地が事業用地に変われば、新規雇用を期待できるし、固定資産税で自治体の歳入が増えるので地域にとってもプラスになる」と清水会長は説明する。
これまでに近畿圏を中心に1万〜20万㎡規模の物流用地を数多く開発してきた。開発の依頼を受けると、清水会長が自らヘリコプターに乗り込み、対象エリアを上空から視察。条件に合う土地を特定して詳細に調査する。そのために日本国内最高齢の77歳でヘリコプターライセンスも取得している。
とはいえ、清水会長も80代を迎え、事業をさらに成長させるために、蓄積したノウハウとネットワークを受け継ぐ後継者を探す必要があった。そのバトンを託されたのがS&Gハウジングの後藤道生社長だ。総合不動産開発のオープンハウスで新規事業の立ち上げを経験した後、京都の建売住宅会社の事業承継を受け、同社の経営にあたっていた。
清水会長は「その建売住宅会社とは昔からの長い付き合いだった。それを後藤社長は見事に引き継いで会社を大きく成長させた。その手腕と人柄に惚れ込んだ」という。一方、後藤社長は知人から紹介を受けてJMDのビジネスモデルと実績を知り、驚かされるとともに大きなビジネスチャンスを感じた。
「単に安く買って高く売ろうというのではなく、土地を手放す農家さんのリタイア後の暮らしまで十分にケアして、自治体にも感謝されている。一方で物流会社は限られた予算で必要な用地を確保できて助かっている。取引に関わった誰からも喜ばれているのが新鮮だった」と後藤社長は言う。
ただし、市街化調整区域の転用には手間と時間がかかる。案件をまとめて買い主に引き渡すまでの間、JMDは土地を買い上げ所有する必要がある。JMDは東京商工リサーチの評点が71点、京都府内約3万社の信用評価ランキングで25位という優良企業だが、独立系中堅企業の資金力には限界がある。
そこで後藤社長は事業承継を検討するに当たり、かつての上司でオープンハウスの創業者、荒井正昭社長に支援を要請した。その結果、JMDのオープンハウスグループ入りが実現した。22年12月、清水会長はJMDの株式をオープンハウスとS&Gハウジングに譲渡、後藤社長を正式に後継者として迎え入れた。
①兵庫県加西市(約5万㎡) 「中国自動車道 加西IC」約2.6㎞
市街化調整区域(工場・倉庫建築可)
完成宅地渡し(都市計画法第29条申請中)
②滋賀県愛荘町(約5万3千㎡) 「名神高速 湖東三山IC」約2km
未線引き区域(工場建築可)
現況更地・即引渡可
3カ年で延べ100万㎡の開発計画
新体制の下、JMDは新たな中期経営計画を策定した。3カ年で延べ100万㎡を開発する目標を掲げている。次の3件は既に造成も終わり、引き渡し可能な状態だ。
• 「名神高速 湖東三山スマートIC」ICから約2㎞。未線引き区域(工場建築可)約5万3千㎡。滋賀県愛荘町大字香之庄沢。
• 「名神高速 彦根IC」IC隣接。準工業地域約2万6千㎡(市街化調整区域約6200㎡含む)。分割可。彦根市原町字一ツ松。
• 「姫路播但連絡道路 花田IC」IC隣接。市街化調整区域(開発建築可)約1万6千㎡。姫路市花田町上原田、飾東町豊国。
次の2件の開発もスタートしている。
• 「京都府向日市 国道171号線」西側、新幹線線路横。農地約16万5千㎡。京都府向日市鶏冠井町小深田。
• 「京都市伏見区 国道1号線」京滋バイパス久御山JCT近く。農地約5万6千㎡。京都市伏見区向島柳島。
他にも京都市右京区旧京北町エリア、兵庫県加西市、姫路市、西宮市、奈良市(名阪国道針IC近く)などで、それぞれ10万㎡から20万㎡規模の開発を進めている。大資本の後ろ盾を得たことで、これまでは手を出せなかった大規模用地の開発が可能になった。地権者や自治体との交渉もスピードアップしている。
清水会長は「特に名神、新名神、新名阪のIC至近地や幹線道路沿いで倉庫用地を探しているのであれば、農地だからと諦めずに当社に相談して欲しい。われわれが調査して開発の見込みが立てば開発を受け付ける。一流の物流企業の案件となれば自治体や地権者の同意も得やすい。事業拡大を目指す物流企業の用地開発パートナーとして共に成長していきたい」という。
お問い合わせ先
株式会社日本マネジメント開発研究所
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