30億円以上投資を予定、22のプロジェクト展開へ
韓国の現代自動車(Hyundai Motor、ヒョンデ)グループは7月25日、ソウル大学(SNU)と共同で電気自動車(EV)用バッテリーの共同研究センターを開設すると発表した。バッテリー技術を進歩させて産学連携を促進し、バッテリー分野における世界的なリーダーシップを確立することを目指す。
バッテリー共同研究センターは、2021年11月に同グループとソウル大学が、カーボンニュートラルの実現とバッテリー研究エコシステムの構築に関する合意を基に「バッテリー共同研究センターの設立と中長期的な共同研究」に関する覚書(MoU)を締結、具体化を進めてきた。
研究者間の緊密な協力を促進するため、新しい研究施設はソウル大の拡張された化学プロセス研究所内に、3フロア(901㎡)に及ぶバッテリー専用の研究スペースを確保する。バッテリーの開発、分析、測定、プロセスのための7つの研究室と会議室で構成。EV用バッテリーに特化した研究施設がソウル大学内に建設されるのは今回が初めてという。
バッテリー共同研究センターの開設により、同グループは韓国の一流のバッテリー専門家と協力して、バッテリー関連技術の研究開発の基礎を築きたい考え。EVの走行距離を飛躍的に延ばして充電時間を短縮する次世代バッテリーの先端技術や、バッテリーの状態監視技術、革新的なプロセス技術の先端研究に注力する。
具体的には、リチウム金属バッテリー、全固体バッテリー、バッテリーマネジメントシステム(BMS)、バッテリープロセス技術の4部門で、合計22の共同研究プロジェクトを展開する。韓国の有名大学の教授と修士・博士レベルの合計21人の人材が研究に参加。22の研究プロジェクトのうち14は、リチウム金属バッテリーと全固体バッテリーに関連するもので、次世代バッテリーの開発に中核能力を集中させる。
リチウム金属バッテリーの分野では、高耐久性リチウム電解質材料の要素技術や劣化を最小限に抑えるための形状解析を研究し、全固体バッテリーの分野では、硫化物系負極材料、電極・電解質コーティング法、超高エネルギー密度正極活物質などの研究を手掛ける。
バッテリー共同研究センターは理論的な研究にとどまらず、量産を視野に入れた研究開発にも力を入れる。バッテリー精密分析装置、高精度レオメーター、セル製造装置、インピーダンス測定装置など、HyundaiやKia(起亜自動車)の研究開発センターに適用されている最先端設備と同レベルの研究インフラを整え、大学の研究成果を迅速に製品へ応用できるようにする。
同センターの円滑な研究活動を支援するため、同グループは2030年までに300億ウォン(約30億円)以上を投資する予定。投資額には、センターの設立と実験設備の準備を含む。
さらに、HyundaiとKiaの研究者が同センターに派遣され、共同研究チームのメンバーとして参加し、緊密なコミュニケーションと専門知識の共有を通して研究の相乗効果を最大化する構想。バッテリー技術に関する協議やセミナーを通して、洞察や開発の方向性が議論されるとともに、世界のバッテリー業界の動向や成果に関する情報を共有するための協議機関も定期的に設ける。
(藤原秀行)