専用船活用、24年までに具体的な枠組み検討
川策重工業と岩谷産業の合弁会社、日本水素エネルギー(JSE)と日本郵船、商船三井、川崎汽船の邦船大手3社は9月26日、邦船3社がJSE子会社で液化水素の海上輸送を目指すJSE Oceanに出資したと発表した。
邦船3社はそれぞれ16.6%を出資。筆頭株主のJSEが50.2%を保有する。邦船3社の具体的な出資額は開示していない。
16万㎥型液化水素運搬船のコンセプト図(川崎重工業提供)
脱炭素社会の実現に向け、水素利用の拡大が世界的に見込まれているのに対応。邦船3社がJSE Oceanと協力し、安定的な調達網確立への貢献を目指す。
政府は2023年6月に改定した水素基本戦略では、日本の水素導入目標量を2030年に最大で年間300万t、40年に1200万t程度、50年に2000万t程度と設定。水素供給コストは30年に1N㎥当たり約30円、50年に20円(船上引き渡しコスト)へ抑えることも打ち出している。
この目標通りに水素を大量かつ安価に供給するためには、海上輸送を主とする国際水素サプライチェーンの構築が非常に重要となるため、邦船3社がタッグを組むことにした。
日本水素エネルギーは岩谷産業、ENEOSの2社と組み、2021年8月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「グリーンイノベーション基金事業/大規模水素サプライチェーンの構築プロジェクト」に「液化水素サプライチェーンの商用化実証」を提案、採択された。
この実証事業では、年間数万t規模の大規模な水素の液化・輸送技術を世界に先駆けて確立し、水素製造・液化・出荷・海上輸送・受け入れまでの一貫した国際間の液化水素サプライチェーンを構築するための実証に取り組んでいる。
JSE Oceanと邦船3社は2024年までに世界初の大型液化水素運搬船における安全で効率的な運航、将来性のある海上輸送事業スキームの検討を共同で実施する。液化水素運搬船は水素を推進燃料とする予定で、運航時に排出されるCO2を大幅に削減できると見込む。
出資の概要(邦船3社など提供)
(藤原秀行)