62億円で委託の価格調査も「エネ庁調査と結果同じ」と指摘
会計検査院は11月7日、2022年度の決算検査報告書を岸田文雄首相に提出した。
この中で、資源エネルギー庁が実施しているガソリンや軽油など燃料油価格高騰対策の事業に関し、石油元売りに支給している補助金が小売価格上昇を抑えているかどうか、効果に疑問を呈した。
また、エネ庁が同事業の中で、民間企業に委託している燃料油価格のモニタリング調査を十分に活用していないと指摘。継続する場合は必要性や内容を十分検討するよう要求した。
岸田文雄首相に決算調査報告書を手渡す会計検査院の岡村肇院長(首相官邸ホームページより引用)
同事業では政府が基金を通じて石油元売りに補助金を出すことで、石油元売りが各給油所に販売する価格から補助金分を割り引き、給油所が補助金分を下げて消費者に売るよう促す仕組み。会計検査院によれば、21~22年度に同事業で3兆円超を費やした。
会計検査院が同事業の始まった2022年2月から今年3月までの間、実際に抑制された額を算定し、補助金支給額と比較したところ、本来は同程度の規模であるはずだが、補助金はガソリンと軽油、灯油で計2兆4713億円支給していたのに対して抑制額は2兆4508億円で、補助金支給額を204億円下回った。
会計検査院はレギュラーガソリンで「小売事業者において基金補助金の支給単価に相当する額が小売価格に反映されていない可能性がある」との見解を示し、レギュラーガソリンについて、全国700カ所の給油所で石油元売りの卸売価格と給油所の小売価格を比較。価格差は、同事業開始前(21年4月~22年1月)の平均が1リットル当たり17.8円だったが、開始後(22年2月~23年1月)は19.4円で、拡大していた。
700カ所のうち、価格差に変化がなかったのは14.5%の102カ所で、価格差が拡大していたのは486カ所、69.4%に達した。価格差が縮小していたの112カ所(16.0%)だった。
会計検査院はまた、同事業の事務局を務めている博報堂が、ヴァリアス・ディメンションズに委託してガソリンなどの小売価格のモニタリング調査を実施しており、具体的には全国2万カ所以上の給油所への電話や現地視察を実施していることに言及。費用は最大で約62億円を想定しているものの、調査結果は一般には公開しておらず、博報堂から調査結果の報告を受けたエネ庁も十分活用した形跡が見られなかったと説明した。
エネ庁は同事業が始まる前から、石油情報センターに委託して毎週全国約2000カ所の給油所を対象に「石油製品小売市況調査」を実施、その結果を同事業の補助金を支給する単価の決定に使っていると指摘。同調査と博報堂が外部企業委託している調査は価格の推移がほぼ同じだったという。
会計検査院は「単に全国の小売価格の推移を把握するのであれば、本庁の調査の結果を活用することにより十分対応可能であると考えられる」と意見。電話や現地での調査については、小売事業者に対して心理的に小売価格の抑制を促すという事実上の効果があるとの考えを示し、エネ庁の主張にも理解を見せるものの、「随時、必要性も含めて実施内容や実施方法、報告内容などについて十分に検討する」よう釘を刺している。
(藤原秀行)