世界標準のSCMシステムをSaaSで提供
中堅・中小のサプライチェーンを最適化
Interview ザイオネックス 藤原玲子 代表取締役
サムスンやLGのSCMパートナーとして知られる韓国ザイオネックスの日本法人が、日本の中堅・中小メーカー向けにSaaS型SCMシステムをローンチした。世界的なエンタープライズ企業と同レベルのSCMシステムを、圧倒的な低コストで導入・運用できる。 (聞き手・本誌編集部)
SCMは大手だけのものではない
──ものづくりに優れた日本の電機メーカーが、グローバル市場で海外製品にシェアを奪われていった原因は、SCMにあったとも言われています。状況は変わっているのでしょうか。
「残念ながらむしろ日本のガラパゴス化が進んでいるようで心配しています。世界のどこの国でもSCMの実務家の多くがASCM(サプライチェーンマネジメント協会)の認証資格を取得しています。共通の用語やフレームワークを使わないと、国や文化背景の異なるSCM担当者やサプライヤーとの会話が成立しないからです」
「海外のグローバルメーカーは、実務の担当者だけでなく経営層もSCMの基本は押さえており、教育も受けています。そもそもサプライチェーンはさまざまな組織をまたがったつながりですから、一つのオペレーションだけが優れていても意味はありません。全体を俯瞰する視点が重要です」
──日本のガラパゴス化は情報システム面にも見られますか。
「欧米ではソフトウエアをそのまま使うのが当たり前なのに、日本企業は自分たちのやり方に合わせてカスタマイズすると言われますよね。実は韓国のメーカーもそこは日本と同じなんです。その傾向はむしろ日本より強いくらい。ただし、意思決定が非常に早い。いったん決断したら日本企業であれば2年も3年もかけるプロジェクトを半年で済ませてしまう」
──日本企業はなぜ時間がかかるのですか。
「これまで使っていなかった計画系のソフトウエアを新たに導入するのであれば、まずは半年くらい使ってみて合わない部分を直すというアジャイルな進め方が好ましいのですが、日本企業は事前にすべてを完璧にしようとします。そのために現場も含めた検討に時間をかけます。大手ほどそうした傾向が見られます」
「それに比べると中堅・中小はずっと動きが早い。経営トップが会社をよく俯瞰していて、もっとこうしていきたいという、はっきりとした考えを持っています。そうした中堅・中小のメーカーが日本にはたくさん存在することに気付きました。それが日本法人の主導でSaaS型SCMシステムの開発に取り組んだきっかけでした」
「もともとザイオネックスが提供していたSCMシステム『T³(ティーキューブ)』にしても、価格的には欧米のベンダーより安価だとユーザーから評価されています。大手は保守料だけで年間数億円の世界ですから、限られた企業しか採用できません。それに対してT³は、これまでに400社以上のグローバルメーカーに導入されており、年商1千億〜1兆円を超す規模のメーカーまで幅広く採用されています」
「さらに私たちはそれをSaaSに落とし込んだ『PlanNEL(プランネル)』を23年1月にローンチしました。ASCMの定義に沿った世界標準のシステムを、カスタマイズを不要にすることで安価に提供し、年商100億円クラスのメーカーでも無理なく採用いただけます。それでいて機能は大手向けのSCMシステムと遜色ありません」
PlanNEL サービスイメージ
意思決定をスピード化
──中堅・中小のSCMの現状は。
「需要予測や販売計画、生産計画の担当者が、それぞれ自分のPCでエクセルの表を作って、それを集計するのに大変な時間と労力をかけています。営業が作った金額ベースの計画は、数量に換算しないと生産や物流では使えないのに、そこまで手が回らない。為替の変動を反映することもできない。拠点×得意先×SKUの年間計画を立てようとしたら、エクセルの最大行数を超えてしまった、といった話は珍しくはありません」
──その業務は通常、組織内のどの部門が担当しているのですか。
「物流部や生産管理部、SCM部など呼び方はさまざまですが、日本のメーカーは生産寄りの部署に需要予測や需給調整機能を持たせていることが多い。そこで営業から上がってきた数字を受け取り、担当者が属人的に判断して在庫が増えないよう生産計画を調整しています。管理するエクセルは、マクロ(複数の操作をまとめて自動化する機能)でガチガチに固めているので、担当者以外は誰もいじれない。さらに担当者が順番にしか編集できないため、情報がバケツリレーになって計画策定に多くの時間がかかる上に、関係者がリアルタイムの数字を把握できないのも課題です」
──どうすれば改善できますか。
「ポイントは過去と将来の需要をしっかりとデータで捉え、需給計画を行う役割を置くこと、そして属人化をやめる。そのためにはまずはクラウドにデータをためて、誰でも正しい情報をいつでも見られるようにすることが第一歩です。SCMとは端的には経営の意思決定であり、SCMシステムは、何をどうするのかを正しく判断できるようにするためのツールです。PlanNELを導入すればリアルタイムのデータを基にして、『ほら、ここを見てください』と関係者間で話ができるようになる。意思決定の質とスピードがまったく変わってきます」
「先日、PlanNELの運用を開始したある日用品メーカーでは、従来は物流部門のスタッフ5人を投じてエクセルで作業していた需給調整業務を、2人で処理できるようになりました。担当者の休日出勤もなくなり、PlanNELのAI需要予測を活用して定番品の在庫を大幅に圧縮できたと報告を受けています」
「当社はPlanNELのローンチに合わせて新たにカスタマーサクセスチームも立ち上げました。問い合わせに受け身で対応するだけでなく、お客さまの需給調整会議にも参加してさまざまな提案をしています。SCMが機能し始めると、無駄な調達や生産が削減され、売れ残った在庫の廃棄や安売り、余計な倉庫代が必要なくなるため、システム費用は十分にペイできます。これから発展が期待される企業の経営の一助になれればと思います」
お問い合わせ先
ザイオネックス株式会社
〒103-0015 東京都中央区日本橋箱崎町1-2
THE SHORE 日本橋茅場町7F
https://www.zionex.co.jp
TEL:03-6667-0911
会社プロフィール
ザイオネックス(Zionex)
米マサチューセッツ工科大の工学博士3人が2000年に韓国ソウルで創業。同社のSCMシステム「T³(ティーキューブ)」は、韓国、台湾、日本などのグローバルメーカー400社以上に採用されている。2013年8月、日本法人設立。23年1月、日本法人からSaaS型SCMシステム「PlanNEL(プランネル)」をローンチ。