国交省が今後10年で「自動物流道路」実現へ本格的な検討開始

国交省が今後10年で「自動物流道路」実現へ本格的な検討開始

有識者ら初会合、今夏ごろめどに中間取りまとめ

国土交通省は2月21日、先端技術を駆使して物流の自動化・省人化を促進する「自動物流道路(オートフロー・ロード)」の実現に向け、必要な機能や克服すべき課題などを議論する有識者らの検討会(座長・羽藤英二東京大学大学院工学系研究科教授)の初会合を開催した。

今年夏ごろをめどに、具体的な道路の在り方や採用する技術、ルート選定の方向性などを盛り込んだ中間取りまとめを策定する方針を確認した。

検討会はメンバーに日本経済団体連合会(経団連)や全日本トラック協会、日本ロジスティクスシステム協会(JILS)など、有識者や業界団体、高速道路運営会社の関係者が名を連ねている。

自動物流道路は昨年10月、国交省の社会資本整備審議会 道路分科会 国土幹線道路部会が策定した「高規格道路ネットワークのあり方」の中間取りまとめの中で「構造的な物流危機への対応、温室効果ガス排出削減の切り札」として、今後10年で実現できるよう国交省に検討の開始を促していた。

政府が2月に決定した「2024年問題」を打開するための2030年度に向けた中長期計画でも実現を目指す方針をあらためて示した。

初会合は冒頭部分を除いて非公開で開催した。事務局を務める国交省によると、会合で国交省の道路局から主要都市間を結ぶ地下トンネルに自動運転カートを走らせる物流システムを計画しているスイスや、低コストのリニアモーターを使って完全自動運転の物流システムを検討している英国などの事例を紹介。

検討すべきポイントとして、30年後や50年後の物流はどのような姿を目指すべきかや、どのような社会・物流の課題にアプローチすべきか、自動物流道路がどのような機能を担うか、産官学でどのように連携すべきかといった点を提案した。


スイスの物流システム計画で地下トンネル内部のイメージ(出展・Cargo Sous Terrainホームページ、国交省資料より引用)

見込まれる巨額の投資、スイスの計画は5.7兆円

出席者からは「物流の在り方というものを大きく変えるプロジェクトだと認識している。ロジスティクス改革をインフラから進めることができれば、物流全体に貢献できる」「自動車物流道路が新しいモーダルシフトの転換先の一つになる」「必要な法整備も含めて1日も早い実現を」などの意見が出たという。

国交省は、現時点では道路の中央分離帯や路肩、地下を活用し、自動的に走行するカートで荷物を運搬、人口減少下でも物流機能を維持できるようにすることを念頭に置いている。

ただ、初会合で触れられたスイスの物流システムは現状、建設費に約5.7兆円を要すると見込まれており、全て民間の資金で賄うという。国交省も自動物流道路は同程度の巨額な投資が必要になるとの認識を示している。

国交省が2018年に公表した試算では、今後30年で道路や河川などのインフラを維持管理・更新していくのに要する費用は、未然に対策を講じる「予防保全」を基本にした場合、最大で約195兆円に達するとの見通しを示している。

先進国の中でも政府の財政事情の厳しさが目立つ日本では既存インフラの維持管理・更新の費用捻出も容易ではない。国交省はそもそも一から自動物流道路を整備する余裕があるのか、財源をどう確保するのかといった基本的な疑問に答えていくことが強く求められそうだ。

(藤原秀行)

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