【現地取材・動画】取次大手の日販が埼玉・新座で自動化促進の新物流拠点公開

【現地取材・動画】取次大手の日販が埼玉・新座で自動化促進の新物流拠点公開

ラピュタ製倉庫システムや椿本チエイン製ソーターなど活用し出版物以外の取り扱い強化、3PL拡大も視野

出版物取次大手の日本出版販売(日販)は12月10日、埼玉県新座市で今年10月に開設した物流拠点「N-PORT新座」をメディアに公開した。

日販グループは書籍や雑誌など出版物の販売が年々減少しているのを踏まえ、「物流再編プログラム」として、自動化機器を積極的に活用して物流業務を効率化し、配送などの機能を維持するとともに、文具や雑貨などの取り扱いを強化し、書店の品ぞろえ拡充による収益源拡大を後押しする取り組みを展開。グループで「TSUTAYA」などの流通を手掛けるカルチュア・エクスペリエンス(CX)と連携し、物流拠点の集約や機能再編なども推進している。

新拠点はその第1弾の取り組みと位置付けており、ラピュタロボティクス製の自動倉庫システムなどを採用して業務を大幅に効率化。当初は文具雑貨の出荷からスタートし、順次出版物の取り扱いを拡大させる計画。日販は併せて、新拠点の機能を生かし、雑貨類などの物流を担う3PL業務も拡大させていきたい考えだ。


「N-PORT新座」が入る物流施設の外観(日本出版販売提供)


エントランスに「N-PORT新座」が目指す理念を表示


カフェスペースも設置し、働きやすい環境を整備


日販がサービスとして提供している植物工場も導入

書店を支える「ポート(港)」目指す

新拠点はシーアール―(CRE)が開発した地上4階建ての物流施設「ロジスクエア新座」を1棟借りしており、延床面積は7670坪。

日販グループの文具・雑貨商材はこれまで3カ所に分散して取り扱っていたが、新拠点に集約した。最大で3万7000SKU(最小商品単位)分を保管できるよう想定しており、今年11月末時点で2万2000SKUを保管している。

出版物以外の商品も取り扱うのに伴い、JANコードなどで管理する必要が生じたため、グループ共有のWMS(倉庫管理システム)としてセイノー情報サービスのクラウド型システム「SLIMS」を採用。拠点間で在庫情報を共有、包括的に管理できる体制に移行している。


入荷した商品

これまでは顧客の店舗別にオーダーピッキングしていたため、ピッキング担当のスタッフが何度も保管スペース内を巡回していた。多い時は200店舗分をピッキングする必要があり、長い距離を歩くためスタッフの負荷が大きかった。自動倉庫などを活用することでアイテム別のトータルピッキングも可能にし、作業工程の30%を減らせると想定している。

ラピュタロボの自動倉庫システム「ASRS」は保管スペースを9段確保し、高さは約5m。商品を保管できる専用コンテナ(ビン)を9000個、ビンを出し入れするロボットを90台採用しており、1時間当たり400行分のピッキングができることを目標に設定している。


物流拠点内に設置している「ASRS」。9段で商品を保管し、ロボットがコンテナを出し入れしている

全てを自動倉庫に格納するのではなく、出荷の頻度や数量が多い定番のアイテムは従来通り、平置きや棚を活用した管理を行っており、全体のうちSKUで2割、出荷量で8割に該当するという。日販はこの規模の商品を自動倉庫でカバーしようとすると、保管スペースの規模が大きくなってしまうことなどを踏まえ、ロングテールを占める残りの多品種・少量の商品群に絞ってラピュタのASRSに収めることで、保管や入出荷作業の効率化を図っている。


定番アイテムの保管スペース。ピッキングしやすいよう商品を細かく管理し、種類を分かりやすく表示している

併せて、1日当たり5万行の出荷能力をそなえている椿本チエイン製のソーター「リニソート」を取り入れるとともに、デジタルピッキングシステム(DAS)も活用、店舗ごとに素早く仕分けられる体制を確立している。DASはスキャナーでバーコードを読み取れば、どのオリコンに商品を仕分けるか表示しており、働き始めて間もないスタッフでも作業しやすいよう配慮している。最大500間口を用意できるようにしており、繁忙時にソーターの仕分けを補完することを念頭に置いている。


リニソート


DASの作業エリア

N-PORT新座で取材に応じた日販物流企画部の大熊祐太部長は、物流再編プロジェクトの狙いとして「物流を持続可能にしていくため、固定費の削減だけではなく、物流を創り変えていくことが必要。搬送など簡単な作業はロボットに、在庫のリロケーションはAIに任せて、複雑なピッキングを人間に任せる。ロボティクスで高い生産性と作業の維持を狙うとのコンセプトを、再編で実現していく」と強調。

N-PORT新座を物流機能強化のプロトタイプとして成功させ、グループの他の拠点に広げていく考えを明らかにし、「新座を2027年に書店の方々を支える新たな“ポート(港)”にすると宣言したい」と語った。


取材に応じた大熊部長

(藤原秀行)

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