日本の事業戦略説明、需給バランス改善で賃料上昇にも期待
ESRのスチュアート・ギブソン共同創設者兼共同CEO(最高経営責任者)と、フィリップ・ピアース社長は5月12日、川崎市で同社が開発した大規模物流施設「ESR東扇島ディストリビューションセンター(DC)」内で記者会見し、日本の物流施設開発事業の戦略などを説明した。
ギブソン氏とピアース氏はアジア太平洋エリアで今後もEC市場拡大などに伴う賃貸物流施設の需要が堅調に伸びるとの見解を表明。日本も最重要拠点の1つと位置付け、三大都市圏を軸に開発を促進したいとの考えをアピールした。
建築コスト高騰で今後は日本国内で賃貸物流施設の供給ペースがスローダウンするとの予想が不動産業界などで広まっていることについては、需給のバランスが改善することで賃料上昇につながると前向きな見方を示した。同時に、自社開発時の建築コスト上昇対策として、海外で部材を製造し輸入して現地で組み立てることなどを進めていると解説した。
さらに、「物流2024年問題」でトラックドライバーが長距離輸送に従事するのが難しくなっている実態を踏まえ、ドライバーの交代や荷物の積み替えなどが可能な中継輸送拠点の機能を持つ物流施設の開発にも意欲を見せた。
ギブソン氏は20年前に日本で物流施設開発の事業を始めて以来、開発拠点は累計で44、延床面積はトータルで480万㎡に達していると指摘。「われわれはきちんとリターンを上げている」と成果を強調した。日本の開発案件に対し、シンガポールの政府系ファンドGICなど海外の名だたる機関投資家も関心を寄せ、投資を重ねていると語り、海外の投資家から日本の物流施設は依然高い関心を持たれていると分析した。
開発エリアについては、それまで3大都市圏にこだわってきたが、福岡で人口構成の若さや半導体関連産業の進出などを考慮し、新たに開発に挑戦したケースを紹介。今後は他の地方エリアも視野に入れる可能性に言及したが、同時に「どの程度ニーズを満たせるか慎重に検討する必要がある」とも述べ、3大都市圏を軸に据える戦略は維持することを示した。
建築コスト上昇への対応の一環として、既存の好物件の取得にも注力していく姿勢を見せた。加えて、「2024年問題への対応として、デポのような施設を大都市間に建築する必要がある」と指摘、中継輸送拠点の機能を持たせた物流施設の開発にも意欲をのぞかせた。
ピアース氏は、アジア太平洋地域で開発中のプロジェクトがデータセンターなども含めて総額で90億ドル(約1兆3500億円)に達しており、「この地域で最大規模のデベロッパーの1社となっている」とPR。
今後の日本市場については「供給は絞られてくる上、さまざまなコストも上昇するため、賃料もアップしてくる。日本は長期的に(賃料が)低成長の市場だったが、供給が絞られることで稼働率も上がってくるだろう」と期待を見せた。
両氏は物流施設に加え、日本を含むアジア太平洋エリア全体でデータセンターの開発を加速させていくスタンスも明示。2027年以降、大阪などで順次竣工していくことを説明し、物流施設と両輪で取り組んでいくことを強調した。
ESRは会見と併せて、「ESR東扇島DC」の内部もメディアに公開した。物流施設としては国内最高層の地上9階建て(倉庫部分は8層)、全高約70m、延床面積は約34万9000㎡で、東棟と西棟から成る。
テナントの要望を踏まえて低温の保管エリアを設けるなど、マルチテナント型物流施設として独自性を発揮している。働きやすい環境を整備するため、ボーリングレーンやマシンジムなども設置している。
(藤原秀行)















