無償BIツールが促す現場のデータ活用
実用性と使い勝手の良さで大手の導入進む
生産性のデータを可視化して改善活動へ生かす取り組みが広がりを見せる中、物流現場でも必要に応じた作業データを集め、グラフや表などを自動作成するKURANDOの無償簡易BIツール「Logiscope(ロジスコープ)」の活用が進みつつある。低コストでデータ集計負担をゼロにするサービスを始めた理由とは。同社の岡澤一弘代表取締役に聞いた。(本誌編集部)
Interview 岡澤一弘 代表取締役
存在しなかったサービス
──ロジスコープのような「無償簡易BIツール」サービスはこれまで見られませんでした。
「世の中にBIツールは数多く存在し、機能も豊富ですが、経営やマーケティング向けがほとんどのため高額になりがちです。『物流現場の生産性を可視化したい』程度のニーズでは、費用に見合う効果が得られにくい。必要性を理解した上で、あえて価格に見合う効果を出すこともできるかもしれませんが、使いこなすのが大変になります」
──「使いこなすのが大変」というのは。
「価格に見合ったBIツールの機能を発揮させるには、エクセルにはできない分析などをさせることになりますが、高度なセッティングが必要です。専門性を持った人間に依頼しなければならない。そうなると購入段階だけでなく、活用段階でもコストが発生します。ただでさえ費用対効果が生まれにくいところに、ハードルがさらに上がっては、データの共有化・可視化は進みません」
──ただ、BIツールも開発コストを回収できなければビジネスになりません。KURANDOがロジスコープ開発を実現できたのはなぜですか。
「(物流現場の作業データを取得する同社の)『Logimeter(ロジメーター)』の販売が順調に進み、ロジスコープを無償提供できる算段が立ったことが大きい。物流現場におけるデータ活用の起爆剤となるツールは、徹底的に安価なもの、それこそ無償ぐらいでなければと考えていましたが、誰かが作るのを待っていても出てはきません。当社はロジメーターのユーザーが増えれば、親和性のあるロジスコープは無償でもビジネス的に成立すると考え、開発に舵を切りました」
──ロジメーターで取得したデータの活用ツールになれば、ロジメーターの魅力も高まります。
「ロジメーターで取得した『作業者の人時データ』をより効果的に活用するには、曜日別や日別、物量との相関など個別の切り口による集計が必要です。物流を取り巻く課題は各社さまざまで、現場管理者の求める切り口も違います。その点、ロジスコープは外部システムのデータも取り込みながら、エリア別や季節別、曜日別や月末・月初などのKPIを個別に設定し、把握できるので、現場のニーズに応えられます」
──現場向けツールで導入コストゼロは大きい。アサヒロジ(※ケーススタディを掲載)も「無料だから使い始めた」と。
「それが狙いですので。意外に見落とされがちですが、『エクセルでのデータ集計とレポート作成に2、3時間かかっている』といった話は珍しくありません。作業項目が100近い現場があったり、フォーマットが統一されていないデータの順序を入れ替えたり。集計操作が多くなると、数字のずれなども起きますし、その確認や修正でさらに手間がかかります」
「この数時間の手間こそ、現場管理者によるデータ活用の大きな阻害要因です。ただエクセルが集計ツールとしてメジャーな上、導入費用を特に意識させるものではないため、ここに追加経費をかけようという話はしにくかったのが実情です」
広がる活用ユーザー
──BIツールというと、各現場専用のレポートだけでなく、各拠点の状況を本社で一覧するといった使い方が出てきそうです。
「『横並びに指標が見られるよう、各拠点へ横展開しよう』という動きが、大手企業から出始めています。物流現場を複数抱える大手企業ほど集計コストは膨らみがちですので、『横並び把握をやりたいが、できなかった』という声を多数お聞きしました。これを理由にロジメーターから導入しよう、との動機付けにもなっています」
──ロジスコープが物流現場に与える付加価値をどう考えますか。
「『データ活用を自然なものにする』ことでしょうか。現場管理者とデータ活用に話が及ぶと、最初は皆さんの表情が曇ります。データ収集の労力やデータの精度、集計作業の負担などに不安を覚えるためでしょう。でもそれらが払拭されれば、データの前向きな活用が待っています」
「実際の利用法もさまざまです。日々の収支を『見える化』したり、レポートにコメントを付けられる機能を利用して各現場責任者と気づきや改善についてコミュニケーションしたり──。無償なので、色々アレンジを考えていただいています。今後も『データを取った後の活用まで伴走する』ことに注力していきたい。ロジスコープ以外にも作業計画を作るロジボードの開発など、企業におけるデータ有効活用を支援すべく、積極的に活動していきます」
CASE STUDY
センターの成績を横串管理
医薬品を中心に手掛ける物流会社A社
複数のセンターの主要KPIを横並びで可視化。管理者は各センターからのデータ提出を待つことなく、リアルタイムで取得したロジメーターなどのデータから最新の状況が確認できるため、期限を決めてセンターにデータ提出の催促をすることが不要になった。
以前はエクセルによる管理で、センターごとにフォーマットが違っていたため、データの並び順などを統一する手間が発生していたが、ロジスコープを導入したことで統一したフォーマットで管理できるようになった。
実績共有でモチベーション向上
アパレル品の企画・販売を行うB社
入荷や出荷、値付けといった主要作業の日別生産性を表示させ、KPIに対する結果を分かりやすい天候マークで示した。
現場で働くスタッフたちは毎日自分たちのパフォーマンスを確認でき、目標意識が向上した。また、面倒に思われがちな作業データの取得も、データが目に見える形で共有されることで、取得に対するモチベーションが向上した。
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