【独自】プロロジス・モガダムCEO単独インタビュー(後編)

【独自】プロロジス・モガダムCEO単独インタビュー(後編)

「消費地近接型物流施設の重要性は不変、サステナビリティも引き続き重視」

プロロジスのハミード・モガダム会長兼CEO(最高経営責任者)はこのほど、2026年1月1日付で経営トップの座を後進に譲るのを前に、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

トランプ米大統領の誕生に伴う関税引き上げの動きで国際物流や世界のサプライチェーンに相当の混乱が生じることへの警戒感が高まる中でも、物流施設に関しては引き続き、プロロジスが得意としてきた消費地近接型の物件が必要とされると展望。物流施設開発事業の成長持続に自信を見せた。

 
 

日本の事業に関しては、大規模で先進技術を活用した案件を数多く手掛け、物流施設専門のリートを立ち上げたことも印象に残っていると回顧。建設費高騰などで日本の事業環境は厳しさを増しているものの、これからも日本市場にコミットすることに変わりはないと語った。インタビューの後編をお伝えする。

※この記事は弊社「月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI-BIZ)」2025年5月号に掲載した内容に加筆修正したものです


プロロジス前身のAMBプロパティを共同で立ち上げたころの(左から)モガダム、ダグラス・アビー、ロバート・バークの3氏(プロロジス提供)

マーケットはコロナ禍経て上昇気流に

――トランプ米大統領が今年1月の就任以降、中国やカナダ、メキシコなどを対象に関税を相次ぎ引き上げており、国際物流や世界のサプライチェーンに相当の混乱をもたらすことへの懸念が強まっています。物流施設のマーケットも事業環境がかなり変わりそうです。
「例えば(製造拠点など)ありとあらゆるものを米国に戻してくる、オンショア化するというようなことは、十分な労働者が確保できないし、対象とする業界があまりにも広範でノウハウがないだけに、困難だと感じます。カテゴリーごとに様相は異なってくるでしょう。そこは慎重に見ていく必要があります」

「確かに経済への影響はあると思いますが、関税の影響で仮に生産拠点が従来とは別の場所に移ったとしても、物流施設の立地は消費地に近いことが重要である点は変わりません。先ほども触れましたが、サプライチェーン運営コストの4~7割は輸送費が占めており、そういった点でも消費地への近接が求められます。われわれの試算では消費地に近い立地を選んでお客様の輸送費を1%削減することができれば、ご負担いただく賃料を17%引き上げても成り立ちます」

「不動産のマーケットはアップダウンがありますが、財務がしっかりしていれば問題なく対応はできます。金融危機や新型コロナウイルス禍を経て、基本的には賃貸物流施設のマーケットは日本を含めたグローバルで上昇気流にあります。2022年、23年は若干弱含みましたが、反発の動きが続いていくでしょう」

 
 

――政治情勢や経済環境に関わらず、先進的な物流施設は今後も必要とされる?
「まさにその通りです」

――最近の物流施設は太陽光発電設備の導入で電力を生み出して自家消費するなど、環境負荷を下げて持続可能性(サステナビリティ)を高めることが強く求められています。しかし、トランプ大統領は以前からESG(環境・社会・ガバナンス)投資の動きに批判的です。サステナビリティ重視の流れが変わる可能性もありそうです。
「われわれが物流施設のサステナビリティを重視しているのは、自分たちがほめられたいといったような理由ではなく、お客様が必要とされているからです。やはり40~50年と長期で建物を運用していく上では省エネなどのサステナビリティに配慮することが欠かせません。政治状況の変化があっても、今後も取り組みは続けていきます」

――物流業界でも活用しようとの機運が高まっているAIについては、人間の仕事を奪ってしまうとの懸念もあります。どう展望しますか。
「同じことを繰り返す単純作業などはAIの活用で減っていくでしょう。ただ、人間が手掛ける仕事が全てなくなるということは絶対にないと思います。世の中は変化を柔軟に受け入れた結果、現実のものになっていくというのがこれまでの流れであり、AI普及という変化をうまく受け入れられれば人間も引き続き成長ができるでしょう。それは物流も同じだと考えています」


インタビューに応じるモガダム氏

転送装置が発明されない限りは事業安泰

――プロロジスが1999年に日本で活動を開始して以降、日本の物流施設市場はずっと好調だったわけではなく、リーマンショックのように厳しい局面もありました。最近は供給過多が懸念されています。これまで日本市場の成長性に疑問を持ったことはありますか。
「われわれは物流施設に特化していますが、それはこのセクターが非常に魅力的だからです。人間が消費を続けるうちは経済活動にとって商品を届けるための物流施設は不可欠な存在であり続けます。SF映画の『スタートレック』に登場したような、物体をある場所から他の場所へ瞬時に移動させるトランスポーター(転送装置)が発明されない限り、われわれのビジネスはこれからも安泰だと思いますね(笑)。日本でも既に相当の投資をしていますし、日本へのコミットは変わりません」

――日本の事業で最も記憶に残っていることは?
「それは、たくさん子供がいる中で誰が一番かわいいかと聞かれているくらい、答えるのが難しいのですが(笑)、今思い返してみれば日本で展開してきた多くの開発プロジェクトが浮かんできます。大規模で先進技術を活用した、非常に素晴らしいものでした。併せて、日本で業界に先駆けて物流施設特化型のリートを立ち上げたことも印象に残っています」

 
 

――物流施設に特化した判断はこれまでの業績などを見ていると成功だったように思えますが、ご自身は結果についてどのように考えていますか。
「自分自身は、この会社に対してすごく誇りを持っています。半永久的に成長を続ける会社を作りたいと思い、1980年代から(共同で創業したダグラス・アビー、ロバート・バークの両氏を含めて)3人でいろいろ考えてきました。歴史はまだ終わっておらず発展途上ではありますが、少なくとも強い事業基盤を作ることはできたと思います」

――26年の1月1日以降はどのような活動をしていきますか。
「またしっかりとは決めてはいないのですが、新たなCEOがうまく成功を収められるようサポートすることを最優先にします。プロロジスを完全に離れるわけではありませんので、20~30%くらいの時間をプロロジスに注力したい。プロロジス以外の部分では、新たなビジネスの創出を目指すスタートアップを支援しようと考えています。プロロジスも物流を変革しようと奮闘する起業家らをさまざまな形で後押ししてきました。そのノウハウは生かせると思います」

(写真・中島祐、本文・藤原秀行)

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