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【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】プロロジス・山田御酒社長(後編)

【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】プロロジス・山田御酒社長(後編)

「業界全体で防災機能強化や自動化・機械化促進の議論を継続」

プロロジスの山田御酒社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

山田社長は、物流施設に入居する企業向けにロボット導入などをサポートするコンサルティングは成果が挙がっていると強調。スタートアップ企業などとも連携し、倉庫スペース提供にとどまらない付加価値を顧客に提供していくことに引き続き強い意欲を見せた。

また、地震や水害といった災害が頻発しているのを受け、大規模なマルチテナント型物流施設が立地する自治体と災害時に避難場所として開放することなどを盛り込んだ協定を結んでいることに言及。今後も新築の案件と併せて既存物件に関しても、より多くの自治体と協定締結へ協議していく姿勢を示した。

さらに同社をはじめ主要な物流施設デベロッパーが参加している業界団体の不動産協会で、引き続き物流施設の防災機能強化や自動化・機械化を促進していくための方策を議論、政府に実現を働き掛けていく方針を明示した。インタビューの後編を掲載する。


山田社長

コンサルティングは技術を持つ企業との連携が基本

――御社は2018年にコンサルティングを手掛ける専門チームを立ち上げました。物流施設を貸し出すだけにとどまらず、各種マテハン機器やロボットの導入、物流拠点の統廃合・移転による輸配送の効率化、新センターの稼働後のフォローなど幅広い領域で顧客企業をサポートしていくことを打ち出しています。成果はいかがですか。
「当社はデベロッパーですから直接ロボットを開発するわけではないですし、当社が直接購入、保有してお客様に貸し出すわけでもありません。コンサルティングの基本的な姿勢はさまざまなノウハウ、技術を持つ企業とコラボレーションして新たな価値を提供するということです。例えば、アパレル向けの3PLサービスなどを手掛けているアッカ・インターナショナルさんと連携し、物流施設でお客様にロボットのオペレーションを提供するといったことです。コンサルティングはこれまでに累計で10社程度に実施しており、喜んでいただいていると思っています」

「コラボレーションという意味では、優れた技術を持つスタートアップ企業と資本・業務提携し、お客様に価値を提供することにも取り組んでいます。これまでにも単発のアルバイトのマッチングを手掛けるタイミーに出資したり、クラウドサービスを活用し荷物とトラックのマッチングを展開しているウィルポートとお客様のラストワンマイル配送支援などで協力したり、庫内業務の進捗状況を可視化するシステム『ロジメーター』を展開しているKURANDO(クランド)と資本・業務提携したりしてきました」

――コンサルティングでは具体的にどのような成果を挙げましたか。
「例えば、当社の物流施設に入居されている小売業の方が実店舗で商品を販売されていましたが、コロナ禍で外出自粛の動きが広がったためECへの参入を決めたものの、ノウハウも配送してくれる人も全然知らない、とお困りで当社に相談がありました。お付き合いのある物流企業を紹介するなど、さまざまなお手伝いをさせていただきました。そうしたケースはこれまでにもいくつかありますし、オンライン販売に関わる部分の相談は結構多いかもしれません。関東の拠点で業務効率化をお手伝いしたら評価していただき、関西でもお願いしたいとお声掛けいただけたこともあります」

――コンサルティングが御社の強みになっていますか。
「お客様の間で認識が広がりつつありますね」

――今後コンサルティングの体制を強化しますか。
「先ほどお話ししたように、これまでは当社が提携している企業とお客様の間に当社が入り、いろいろとソリューションをご紹介するという形でした。おかげ様で、当社内でコンサルティング分野の人材が育ってきていますから、今後は当社からストレートに業務の改善をどんどん提案できるようになっていきたいですね」

「ただ、必ずしもコンサルティングの事業規模をどんどん大きくしていくということではありません。コンサルティングを専門に手掛ける新会社を立ち上げるということも考えていません。当社の本業はあくまで物流施設の開発です。そこに機軸を置かないといけない。その周辺でトラックバースの予約システムなどが少しずつ浸透していき、プロロジスの施設に入るとこうした技術やサービスが普通に使えますとアピールできるようになるのが一番良いと思います。繰り返しになりますが、コンサルティングはあくまで本業の手助けであり、追加のバリューを提供していくことに主眼があります」

――顧客に提案できるよう、いろんな引き出しを増やしておくということでしょうか。
「その通りです。本来の商売があって、その周辺で時代によって要請されるものが変わってきます。そうした変化に対応していくことが重要です」

駐車場を「車中泊」の場所として提供

――御社の新しい取り組みとしては、今年3月に千葉市の「プロロジスパーク千葉1」で、最短で1週間、最小140坪から賃貸可能なスペースを提供する「プロロジス・フレックスサービス」を始めています。デベロッパー自身が倉庫シェアリングを自前で展開されるのはユニークですね。
「もともとお客様から、商品の取扱量に季節波動があり、借りているスペースが余剰になっているので有効活用できないか、といった相談が結構寄せられていました。同じ物流施設のお客様の間で当社が間に入ってスペースを紹介し合ったりもしていました。たまたま千葉の物流施設でしばらく使わないスペースが出たため、ニーズがあるのであれば、短期間・小規模でお使いいただける形にして貸し出すのはどうか、ということでスタートしました」

――倉庫シェアリングを他の物流施設へ横展開する可能性はありますか。
「今回はパイロットサービスですが、こういったサービスへのニーズがあるとあらためて確認ができれば、今後新しく物流施設を開発する際、一部を倉庫シェアリング用のスペースとして確保することもあるかもしれません。既存の物流施設でも、10年契約で借りたが1000坪を使っていないので何とかしてほしい、というような話が出てくるかもしれないし、そうした時に倉庫シェアリングのスペースとして利用する可能性もあるでしょう」


「フレックスサービス」を提供している「プロロジスパーク千葉1」(プロロジス提供)

――御社は以前より物流施設の防災機能強化に着目しています。新しく検討していることはありますか。
「地域の行政と連携していくことは昔から考えてきました。物流施設は免震装置を導入していたり、従業員用に広大な駐車場を備えていたりしますから、周辺にお住まいの皆さんの避難場所として3日間くらいは過ごしていただけるスペースです。例えば、千葉市と災害時連携の協定を締結し、当社の物流施設『プロロジスパーク千葉2』の駐車場を災害時に車中泊する地域住民らの避難場所として提供することにしています。京都府の京田辺市とは『プロロジスパーク京田辺』で帰宅困難者の待機場所として提供することなどで同じく協定書を結んでいます。他の自治体にも広げていきたいと考えています」

――災害時の協力に関する協定を結んだ自治体はどれくらいですか。
「今は全国で7カ所くらいです。今、マルチテナント型の大きな物流施設があるところは地元の自治体と必ず災害時の協力に関するお話をするよう指示しています。もしご希望があれば、対応できるものであればやらせていただきますというスタンスです。新規に開発する施設に加えて、既存の物流施設でも同様の取り組みを始めています。地域住民の方々としては、避難できる場所が近くにあるというだけでも安心できると思います。物流施設は湾岸エリアにも位置していますので、津波など災害から人々を守る上でお役に立てる分があるのではないでしょうか」

――不動産協会の物流事業委員会でも防災対応を含め、物流施設の開発促進策を検討、政府へ政策要望しようと取り組んでいるところだと思います。これまでにどんな議論がされてきましたか。
「例えば、免震構造にした場合、どうしても建設コストが上昇します。そこで物流施設を免震にして地域に避難場所として提供するので、そのインセンティブとして容積率の制限緩和などの考慮をしてほしいといったことを話しています。他にも、物流施設で今後ロボットなど自動化機器が増えると、人がいないフロアが出てくるため、そこでも容積率緩和などのインセンティブを設定することで自動化・省人化が促されるのではないかという意見も出ています。国土交通省もご担当の方が物流施設を見学されるなど、関心を持って取り組んでくださっています。他にもマテハン設備メーカーや物流企業など、さまざまなところのご意見を伺っています。これから、いかに地域に貢献できる物流施設を広めていくかを考えていきたいですね」

(本文・藤原秀行、写真・中島祐)

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