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【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】プロロジス・山田御酒社長(前編)

【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】プロロジス・山田御酒社長(前編)

「経済情勢が厳しくても選択される優良施設を開発する」

プロロジスの山田御酒社長はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

山田社長は新型コロナウイルスの感染拡大下でもECや宅配が伸びているのを受け、物流施設の需要が続いていると指摘。同社としても2021年は例年と同じく、年間に着手する開発案件の事業規模が700億円程度に達するとの見通しを示した。

同時に、良質な物流施設を造ることで経済情勢が厳しくても選ばれるよう努めていくとの基本方針を堅持する姿勢を強調。新たな取り組みとして20年にスタートした都市型物流施設「プロロジスアーバン」の成長に自信をのぞかせた。

山田社長の発言内容を前後編の2回に分けて紹介する。


山田社長

駄目な案件は全く選ばれなくなる時代が来る

――日本中が新型コロナウイルスの感染拡大に振り回された1年でしたが、2020年の物流施設事業をどう評価されますか。
「以前にも申し上げたのですが、当社の物流施設事業はコロナ禍でほとんどネガティブな影響を受けませんでした。もちろん、経済全体で見ればさまざまな影響が出ていますが、物流施設に関してはEC、宅配の領域が伸びている部分がかなりドライバーになり、需要が増えています」

――コロナ禍で当初計画していたよりも物流施設の開発棟数が減ることはなかった?
「それはありませんね。当社の開発用地は昨日今日、取得したばかりのものではなく、現在開発中の案件はずっと以前に取得していた用地です。時間をじっくりかけて開発準備に取り掛かり、マーケティングを行い、その結果を踏まえて施設を設計するというプロセスを踏んでいます。例えば今度建設を始めた千葉県八千代市のプロジェクトは4~5年をかけて取り組んでいます。当社の場合、平均で用地を仕入れてから開発の本格的な着手まで3年くらいを要しているのではないでしょうか」

「今は来年、再来年くらいまでの開発用地を既に押さえています。良質な案件に絞っていますから、経済情勢が悪くなったからといって影響があるかと言うと、特に目立ったものはないのが正直なところです。結果的に過去3年くらいは毎年、年間で700億円前後の事業に着手しています」

「かねて申し上げている通り、開発に関して特段数値目標はありません。本当に土地が手に入らず開発がなかなか難しいという状況に陥れば年間の開発規模が縮小する可能性もありますが、それはそれで全然かまわないと思っています。実績を残そうとして無理にとんでもない土地を買って開発する、ということはしたくありません。良質な用地が見つかれば開発する。その基本の積み重ねがたまたま結果として年間700億円程度に収まっているということです」

――21年もそれくらいの水準になりそうですか。
「そうですね。現状は着工予定ベースでほぼ700億円の見通しです。棟数ベースでは7棟くらいです」

――エリアは全国が引き続き対象ですか。
「他社は基本的に3大都市圏で展開されています。逆に言えば東北や九州はまだまだ競争が激しくありません。東北で事業を展開しているデベロッパーは当社を含めて非常に限られています。そもそも用地や倉庫ニーズに関する細かい情報を持っていないとできないでしょう。競争が激しいところはあえて避けて、東北や九州で開発を手掛けるのも1つの考え方ではあるでしょうね」

――もとから事業環境の変化に大きく左右されない開発手法ということですね。
「その通りです。リーマンショック後のように需要自体が全くなくなってしまえば、新規開発を手控えなければいけないのですが、そんな極端な状況にならない限りは、必ずしも来年は今年より多く開発を手掛けようということではありません。ノルマを設定しているわけでもないですから」

――ただ、コロナ禍でeコマースが伸びているのは事実ですが、その一方でBtoBの荷物量は落ち込みが見られます。物流施設開発にとって懸案ではないですか。
「確かに量は間違いなく減っています。特に国際間の物の取引が随分減少しているので、物流施設の需要もじわじわ落ちてくるのではないかと思っていましたが、先ほどお話しした通り、影響はほとんど受けていません。逆に、企業の間では今が良い機会だから古い物流施設を新しくしようとしたり、既存拠点の集約統合を図ったりといった動きが見えますね」

「ただ、コロナ感染が収束して世の中が平常に戻った時、ECビジネスがいったん調整局面に入る可能性はあるでしょう。そこから再び成長軌道に戻ってくるとは思いますが、具体的にどれくらいの期間で、どの程度まで伸びてくるのかは現時点ではよく分からないのが正直なところです」

――そうした状況への備えはありますか。
「日本で事業を始めた当初から心掛けてきたことではありますが、やはり良質な物流施設を開発していくということですね。経済全体がシュリンクしても選ばれる物流施設、需要が100から50まで縮小してしまってもその50の中に入っている、きちんと選ばれる物流施設を造っていこうという思いはあります。経済情勢が悪くなってきたからあわてて開発をやめよう、ということではなく、立地とスペックに自信があれば開発しようということです」

「賃料が安いから一応借りておこう、とお客様に思われるような物流施設にはしない。そういった施設は景気の悪化があればすぐに契約を解除して返そう、となってしまいます。ここは立地が良いし使い続けようとお客様に思っていただけるような案件をきちんとやっていきたい。当社の開発担当者にも、雰囲気に踊らされて安易に用地を取得するような開発はやめようと言っています」

「実のところ、もうそろそろ、スペースが埋まらない物流施設が出始めています。竣工前に満床とならず、大きく床が空いている物流施設の話も聞きます。需要がとんでもない勢いで増えていく状況にはないと思います。この先、人口も減少し続けていきますし、間違いなく物流の取扱量は減っていく。在庫管理の精度も上がっていけば、これから物流施設で取り扱う物量が大きく増加するということにはならないでしょう。いよいよ本当に使い勝手の良い物流施設だけが取捨選択され、駄目なものは全然選ばれなくなる時代が間もなく来ると思います」

競争激化踏まえ、違うアプローチで価値提供

――新たに始めた取り組みで成果が出ているものはありますか。
「当社として昨年特筆すべきことは、都心エリアにコンパクトなサイズの物流施設を開設し、都市圏の消費者へ迅速に商品を配達できる拠点として提供する『プロロジスアーバン』に着手した点です。東京の品川で第1弾の案件が完成し、足立区で第2弾が竣工しました。おかげさまで2棟とも多くの引き合いをいただき、好調です。東京23区は郊外に比べれば当然地価はかなり高いですし、コストも増えてくる。それだけにある程度の賃料をお客様にお願いしなければいけないのですが、高い賃料を払っても使いたいという需要があることが証明されています」

「足立では第3弾の開発に着手しました。こちらも既にお客様から問い合わせをいただいています。チャンスがあれば関西でもトライしてみたいですが、まず当面は23区内ですね。できれば東京の西側のエリアで挑戦したいですが、なかなか適地が見つかりません。時間をかけて手探りでもプロロジスアーバンシリーズの開発を進めていけば、用地に関する情報も入ってきますし、少しずつ事業機会が広がっていくでしょう」

――プロロジスアーバンは今後の展開がある程度決まっていますか。
「詳細は申し上げられないのですが、4カ所目となる施設の開発用地は確定しています。5カ所目以降はいくつか候補があり、検討しているところです」


第3弾目となる「プロロジスアーバン東京足立2」の完成イメージ(プロロジス提供)

――プロロジスアーバンを日本で構想し始めたのはいつごろですか。
「実は、プロロジスアーバンのような取り組みは、グローバルでは既に展開しています。私たち日本の担当の間では、東京で手掛けるのは難しいだろうという見方をしていましたが、本部の方からやってみたらどうかと勧められました。当社が今まで手掛けてきた郊外の大規模なマルチテナント型物流施設の場合とは手法が全く違うので、従来の考え方も変えていかなければならず、いろいろと勉強しました。新しいチャレンジの結果、お客様のご要望があるということがよく分かりましたので、機会があればどんどんトライしていきたいですね」

――プロロジスアーバンの開発目標はありますか。
「ありません。良い土地があれば、是々非々で検討していきます」

――そもそもプロロジスアーバンというコンセプトに着目した契機は何でしょうか。
「事業環境が随分変わってきていることがあります。新規参入がいまだに続き、他社の皆さんが結構な勢いで用地を買われているため、もう数年前から用地が仕入れにくくなっています。そこではこれまでと違うアプローチで価値をご提供していく必要がある」

「ただ、なぜここまで物流施設が注目されているかといえば、中長期的に安定した収益が見込めるといったアセットの特性以外に、コロナ禍でオフィスビルやホテル、商業施設など他の不動産セクターが大きく影響を受けているという側面があるでしょうね。個人的な希望的観測を言えば、コロナ感染が落ち着けばオフィスビルなどの不動産セクターも回復するでしょうし、物流施設だけ競争が過熱するという状況は徐々に沈静化してくると思っています」

(本文・藤原秀行、写真・中島祐)

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