【独自取材】短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第1回)

【独自取材】短期集中連載・物流施設デベロッパー21社の戦略(第1回)

プロロジス、日本GLP、大和ハウス工業

2021年は早くも上半期の終わりに差し掛かり、年末に向け折り返し地点を過ぎようとしている。新型コロナウイルスの感染拡大で社会が大混乱する中でも、先進的な機能を持つ物流施設の需要は依然旺盛で、数多くの開発プロジェクトが首都圏など都市部をメーンとして進められている。

ロジビズ・オンラインは新たな特別企画として、主要な物流施設デベロッパー21社をメーンに、これまでの開発の軌跡と今後注目されるポイントについて、各社の公表事例やロジビズ・オンラインの独自取材などのデータを基に紹介する。第1回は賃貸物流施設市場のトップ3とも言えるプロロジス、日本GLP、大和ハウス工業の3社にスポットを当てる。

プロロジス
――都市近郊の「アーバン」案件が新機軸に

プロロジスが新機軸として打ち出しているのが、都市部にコンパクトなサイズの物流施設を開発する「プロロジスアーバン」だ。第1弾は東京都品川区東品川で既存の建物を改修し、昨年6月に完成した。その後は東京都の足立区と大田区で3棟を開発、建設中の物を含めてトータルで4棟に上る。第1弾の物件を除けば、いずれも延べ床面積は1万平方メートル以下だ。

物流施設の開発が引き続き盛んなことで、優良な開発用地を仕込むのは年々難易度が上がり、大規模なマルチテナント型の物流施設で差別化を図るのも難しくなっている。消費地により近接した都市部でラストワンマイル配送拠点に最適な「プロロジスアーバン」を手掛け、独自性を発揮しようと努めている。

都市部だけに、郊外エリアより当然地価は上がるが、その分賃料を高く設定することへのテナント企業の理解が得られやすいとみられる。開発目標は明確に設定せず、用地をじっくりと選定していくことを基本とし、首都圏以外の関西圏などでも開発を視野に入れている。

都市部の中小規模サイズの物流施設については不動産業界でもかねて「安定したニーズがある」と期待する声が聞かれる。業界の盟主とも言えるプロロジスが注力していることで、今後他のデベロッパーにも開発に本腰を入れる動きが広がる可能性がありそうだ。


羽田空港近隣で建設中の「プロロジスアーバン東京大田1」完成イメージ(プロロジス提供)

日本GLP
――大阪で初の街づくり型開発に進出

日本GLPで注目される取り組みの1つが、大規模な物流施設を特定のエリア内で複数、集中的に建設する「ALFALINK(アルファリンク)」プロジェクトだ。千葉県流山市で既に完成しているものを含めて計8棟、神奈川県相模原市では計5棟を建てる予定。国内では前代未聞の“大型物流タウン”が流山と相模原に完成することになる。

物流施設の機能面を高めるのに加え、相模原の開発はクリエイティブディレクターの佐藤可士和氏がコンセプト作成に携わるなど、物流が持つ社会的意義の大きさを積極的にアピールしていくことにも腐心している。大規模な施設を複数まとめて開発しているにもかかわらず、企業からの引き合いは活発に寄せられており、日本GLPは首都圏に加えて関西圏でも複数のALFALINKプロジェクトを進行させることを念頭に置いている。

もう1つの取り組みは、大阪市の再開発計画に参加し、物流施設2棟を商業施設や公園と一体的に整備する大規模な街づくり開発「GLP大阪市東住吉区まちづくりプロジェクト」だ。土地区画整理事業に主体として加わるのは同社として初めてとみられる。デベロッパーの間では優良な開発用地取得が難しくなる中、区画整理に参加する事例が相次いでおり、GLPの本格展開でさらに注目度が上がりそうだ。


「GLP大阪市東住吉区まちづくりプロジェクト」の完成イメージ(日本GLP提供)

大和ハウス工業
――異色の「全国積極展開」が継続

大和ハウス工業の物流施設事業の大きな特徴なのが、都市部に限定せず地方エリアでも積極的に開発へトライする異色の姿勢だ。戸建て住宅などで全国に展開している営業拠点をフル活用し、需要が見込める優良な開発用地を厳選、取得に邁進している。

同社は今年3月、21年度に「DPL」ブランドのマルチテナント型物流施設32棟で工事を始める方針を明らかにした。棟数を見れば19年度の着工実績の約2倍に相当し、同社としては過去最大規模に到達する見込みだ。開発エリアを見ると、3大都市圏に加えて、沖縄や長野、山口、富山など地方エリアも名を連ねている。22年度以降も、21年度並みのハイペースの着工が続く公算が大きい。

同社は傘下にゼネコンのフジタを抱えていることもあり、以前から区画整理事業を強みとしている。製造拠点などを備えた産業団地を整備し、その中で物流施設をセットで建設するパターンも多い。例えば広島市内では事業面積が「MAZDA Zoom-Zoomスタジアム広島」の約3・4倍に相当する約7・9万平方メートルに及ぶ産業団地「広島イノベーション・テクノ・ポートⅡ」の造成を進めている。今後も得意の同事業を有効活用していく見込み。

大和ハウスはこれまで、先進技術を持つスタートアップ企業と組み、物流施設内の作業自動化・省人化を後押しできる施策を検討してきた。AGV(自動搬送ロボット)が円滑に作動できるよう、フロアの柱が少なくても強度を維持できる造りにすることを検討するなど、物流施設の在り方についても変革していく方向だ。


宮城県利府町で建設しているマルチテナント型物流施設「DPL仙台利府」の完成イメージ(大和ハウス工業提供)

(藤原秀行)

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