【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】大和ハウス工業・浦川取締役常務執行役員(中編)

【独自取材・物流施設デベロッパーのキーパーソンに聞く】大和ハウス工業・浦川取締役常務執行役員(中編)

「輸送も含めた川上から川下まで幅広い自動化に貢献する」

大和ハウス工業の浦川竜哉取締役常務執行役員(建築事業本部長)はこのほど、ロジビズ・オンラインの単独インタビューに応じた。

浦川氏は、新型コロナウイルスの感染拡大下でも日本に加え、タイやインドネシアなど東南アジアの物流施設開発が順調に伸びていると強調。日系企業がグローバル規模でサプライチェーンを拡大していくことに引き続き対応していきたいとの意向を示した。

また、物流施設の自動化・省人化を後押しするため、グループのダイワロジテックを軸にして先進技術を持つ複数のスタートアップ企業と連携していく体制を強化する方針を表明。荷主企業や物流事業者、マテハン設備メーカーなど多方面の関係者を巻き込み、輸送過程も含めた物流領域全体の機械化を推し進める方針をあらためて明示した。発言内容を3回に分けて紹介する。


インタビューに応じる浦川氏(中島祐撮影)

アジアの物流施設開発はいずれも順調、需要の頭打ちはなし

――御社は日本国内にとどまらず、海外でも物流施設の開発を進めています。新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているのでは?
「海外についてはタイ、マレーシア、シンガポール、ベトナム、インドネシアといずれも順調です。お客様のサプライチェーンがグローバルに拡大しているのに伴い、日本と海外をつなぐ物流施設の需要も根強い。現地の経済も非常に伸び、低温物流も必要とされています。確かにコロナ禍への対応は大変ですが、現地の物流施設需要は日本で言えばまだまだ昭和30年代ぐらいの感じなので、先進的な施設が非常に必要とされています」

「さすがにミャンマーは政情が安定していないのでストップせざるを得ませんが、それ以外の国では今後も新規の案件が期待できます。物流施設単体での開発もありますが、工業団地を整備する中で物流施設も開発するパターンが多いですね」

――米国も以前からeコマースの需要の伸びなどを受けて物流施設開発を進める方針を示していましたが、現状は?
「先ほど挙げたアジアの5カ国はいずれも現地に物流施設開発の要員が滞在していますが、米国はまだ要員がいないため、コロナ禍で事業は今一時様子見になっています。米国も事業を広げていきたい気持ちは変わりませんが、今後についても状況を見ながらの対応になりますね」

――総じて言えばグローバルでも物流施設開発の需要は引き続き見込まれるということでしょうか。
「アジアの中でもエリアによって成長の勢いなどに差はありますが、需要が頭打ちということはありません。まだまだ経済成長の伸びしろがあると思います。日本のお客様もグローバルのサプライチェーンを拡大する上でアジアにも先進的な物流施設を希望されています」

関係者を“連合艦隊”としてまとめる

――御社の物流施設開発の特徴の1つとして、自動化・省人化などの先進技術を持つスタートアップ企業と積極的に組まれていることが挙げられます。この1年くらいの取り組みについて、どのように総括されますか。
「ダイワロジテックの下にGROUND、Hacobu、アッカ・インターナショナル、フレームワークスなどがぶら下がる形で、お客様に庫内作業効率化などのソリューションを提案しています。もちろん紆余曲折はありますが、総じて見ればそれなりに、順調に伸びていると思います」

「例えば、世界的なスポーツ用品メーカー向けにはアッカが日本の物流センター内でAGV(無人搬送ロボット)を200台以上運営して入出荷作業を効率化しており、非常に評価されています。日本国内だけではなく、海外の物流施設でもマテハン設備メーカーと連携し、お客様の機械化に取り組んでいます。当社の場合、自分たちで開発した物流施設にとどまらず、競合のデベロッパーが開発された物流施設を使って自動化・省人化をサポートしている事例もあります」

――先日、御社と花王、イオングローバルSCM、日立物流、豊田自動織機の5社が共同で物流施設の入出荷作業効率化に取り組むことを発表されました。AIを搭載した豊田自動織機製の自動運転フォークリフトを活用、トラックの運行と連動させ、荷物の積み下ろしを自動化する実証実験を予定しているとのことでした。各社の技術やノウハウを持ち寄り、人手不足や物流センターでのトラックの長時間待機といった課題を解決することが狙いです。もはやデベロッパーの枠にとどまらず、様々なステークホルダーの調整役になっている感じがします。
「もうデベロッパーが物流施設という器を開発し、床を貸して終わり、という時代ではなくなってきました。われわれが目指しているのは当社グループのダイワロジテックが軸となり、メーカーや小売事業者、物流会社、マテハン機械メーカー、中央省庁など関係される方々を取りまとめ、“連合艦隊”として物流業界の課題解決へ一体的に取り組む体制を実現することです。もちろん庫内作業を自動化することも大事ですが、やはり商品を発送する側、運ぶ側、受け取る側、マテハン会社、それからシステムといったように、川上から川下までトータルで自動化する、しかも各社が組んでプロジェクトを展開していくことが必要です」


実験に投入するAI搭載の自動運転フォークリフト(大和ハウス工業提供など提供)

――御社グループと組まれるスタートアップ企業の数はさらに増えていきますか。
「そうですね。増えることはあっても減ることはないでしょう。スタートアップ企業の方からもわれわれと組みたいというお話を常に頂戴しています。もちろん、スタートアップ企業だけではなく、2019年に当社グループ入りした若松梱包運輸倉庫のように歴史と実績をお持ちの企業からもご提案をいただいています」

「先ほども申し上げた通り、やはり物流施設という器造りだけではどうしても事業の成長に限界があります。お客様と一緒に自動化・効率化していくという姿を目指したい。当然ながらお客様によっては、倉庫の床だけ貸してくれればいいという方もいらっしゃいますし、そうしたお客様にもしっかりと対応していくのは変わりません。さらに踏み込んで自動化、効率化を考えてほしいというお客様に関しても、いろいろなご提案をさせていただきます。当社はグループに大和物流という物流企業も抱えていますので、実際の現場で積み重ねた知見を生かすことも可能です」

――以前、物流施設の仕様自体を最初からロボット導入などの自動化を想定したものにするという構想を聞きました。その点に関して取り組み状況はいかがですか。
「この辺りはいろいろと試行錯誤してみて、やはりわれわれだけで物を考えてみてもうまく行かないということが最近あらためて分かってきました。架空のモデルセンターを作ってみても、1つのモデルとしては意味があるのですが、実際にお客様と一緒に取り組み、お客様の現場の実情に合わせてどういった方策が最適なのかを検討していくようにしないと真の自動化や効率化にはならないんです」

後編に続く)

(藤原秀行)

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