開発用地や資材高騰の影響に言及、賃貸マッチングに時間要する感触も
JLL(ジョーンズ ラング ラサール)は12月2日、2022年の経営方針や不動産市場の展望などに関する記者説明会を開催した。
JLL日本法人の河西利信社長は物流施設市場に関し「業界全体として潜在的な成長の可能性はeコマースの発展を含めて、全く変わることはない。成長分野であることに変わりはないと思う」と述べ、22年以降も旺盛な需要が続くとの見通しを明らかにした。
一方、開発用地の価格上昇と建設資材高騰という2つのコスト要因が物流施設市場に影響していると分析。「日本の現状では賃料へのコストの転嫁が難しい。オーナー側はできるだけ賃料を上げたいがテナント側はなかなか払いにくい。結果として(借りる側と貸す側の)マッチングが少しスローになっている感触を持っている」と指摘した。
説明会に同席したJLL日本法人リサーチ事業部の大東雄人ディレクターは「物流施設の利回りは他のアセットに比べてもまだまだ投資リターンが見込める。需要は拡大しているので、今後も投資資金は物流施設にも流入することが期待できる」と分析。
同時に「これまでの需給関係は圧倒的に需要過多で、物流施設を造ればすぐにテナントが見つかっていたが、少しテナントの方にも選択肢が出てきている状況。今後は供給がある程度こなれてくるのに従い、賃料でテナントを誘致する局面も来るのではないか」と予測。需要増に伴う賃料上昇が今後落ち着いてくる可能性に言及した。
河西社長はまた、今後の経営方針として、不動産の領域でサステナビリティ向上に努めることを表明。「例えば外資系企業がオフィスを移転する場合、環境性能は副次的項目だったが、今では一定の環境性能をグローバルの基準として定めていることが非常に多くなってきている」と述べ、オフィスビルなどからの温室効果ガス削減をサポートしていくことに強い意欲を見せた。
JLL日本法人の奥田知康エナジー&サステナビリティサービス事業部長は、これまでは光熱費削減との観点から省エネ促進のニーズが強かったが、現状では脱炭素の観点から建物の省エネを求める声が強まっていると解説。“省エネコンサル”から“脱炭素コンサル”に転換していく姿勢を明示した。併せて、不動産の環境負荷軽減に関する国際的な評価基準GRESBなど、建物の環境性能に関する主要認証の取得支援に注力する意向を強調した。
会見する河西社長(中央)。左は奥田氏、右は大東氏(オンライン会見中継画面をキャプチャ―)
(藤原秀行)