楽天グループ・牛嶋氏、“つくばモデル”確立し収益化や導入拡大目指す
楽天グループで自動配送ロボット(UGV)を使い、公道を通って小売店や飲食店の商品を購入した人の自宅などに届ける自動配送サービスの実用化に取り組むドローン・UGV事業部UGV事業課の牛嶋裕之シニアマネージャーは11月18日、茨城県つくば市で11月19日に初めてUGVを活用した定常的な配送サービスを開始するのに際し、ロジビズ・オンラインの取材に応じた。
牛嶋氏は今後の展開に関し「将来は全国津々浦々で(UGVによる配送を)展開していきたいというのが事業のビジョン。つくばでまず定常的なサービスを提供し、配送エリアや店舗も拡大し(配送時に随行している)保安要員もなくして、1つのロボット配送としての形を作っていきたい。その形を横展開していきたい」と説明。UGV宅配の“つくばモデル”を確立させるのと併せて、他の自治体にも広く採用を働き掛けていくとのイメージを明らかにした。
そのため、1つの店舗で複数のUGVを使う際、配送を最適化できるシステムを準備していることを明らかにし、「1つのUGVがいろんな店舗のサービスを提供できるようにしたい」と強調した。
取材に応じる牛嶋氏
今年の通常国会で成立した改正道路交通法により、2023年4月1日から公道を走行するロボットによる自動宅配が可能な新制度がスタートする予定。現状はUGVが公道を通行して宅配する際、必ず保安要員を付けているが、新制度では安全確保のための最高速度などの条件を満たせば保安要員が不要になるため、牛嶋氏は「エリアや店舗も広げることで1配送当たりのコストを抑えられ、黒字化できるようになる」と指摘。ロボット宅配の収益化が可能と自信を見せた。
同時に、保安要員を付けなくても安全に運行できるよう担保するため、楽天グループも参加している業界団体「ロボットデリバリー協会」がガイドラインの作成に取り組んでいると言及。23年4月までに公表し、ロボット宅配の事業者が順守することでトラブル回避を後押しできるようにしたいと語った。また、楽天グループとしてもガイドラインを順守し、4月の新制度開始からなるべく早く、保安要員なしでUGVが商品を届けられるようにする構想を明かした。
楽天グループで同じく社会実装に取り組んでいるドローン物流と合わせ、ドローンとUGVを1つのエリアに配備し、商品購入者の意向などを踏まえてその時々でいずれかを選んで自動配送することも「今のところ計画はないが、ビジョンとしてはある」と述べ、将来検討することがあり得るとの見方を示した。
つくば市ではサービス定常化の前に、今年5月から期間限定でUGVによる宅配を実施してきた。牛嶋氏はその際の経験として「もちろん(ほしい時にすぐ配達してもらう)オンデマンドデリバリーの需要はあるが、お客様から夜の落ち着いた時間に翌日分を注文したいとの声があった。そうした声を踏まえ(定常化に伴い)翌日以降も指定して注文できるようにした」と解説。今後も多様な宅配ニーズを考慮していく姿勢を見せた。
UGVと撮影に応じる牛嶋氏
(藤原秀行)