年頭会見、渡邉副会長は「物流構造を本気で変えないといけない時代に入った」と指摘
日本ロジスティクスシステム協会(JILS)の大橋徹二会長(コマツ会長)は1月13日、年頭に当たって東京都内で記者会見し、2023年度の活動方針などを説明した。
大橋会長は、新型コロナウイルスの感染拡大やロシアのウクライナ侵攻などでグローバル規模のサプライチェーンが大きく影響を受けている現状を踏まえ「今後もロジスティクスの高度化と普及促進を通して、わが国の産業と国民生活の持続可能な発展に向けて活動してまいる所存だ」と強調。
SDGsの理念も重視しながら、様々な機会を捉えて物流領域のDXの重要性周知と取り組みの促進に全力を挙げる姿勢をアピールした。23年度のテーマとして、年頭所感でも言及した、先端技術導入による自動化や標準化を通じてロジスティクスの革新と価値向上を進める「LX(ロジスティクストランスフォーメーション)」の実現などを図る意向を重ねて示した。
会見に臨む大橋会長
大橋会長は昨年、JILSが掲げた「ロジスティクスコンセプト2030」や「メタ・ロジスティクス」の方針に言及した上で「2024年問題の1年前に当たる。荷物が届かない状況が起こるのではないか(と危惧されている)」と指摘。23年度の活動方針にも盛り込み、最重要課題の1つとして取り組む考えを表明した。
併せて、人材を資本と認識し、その価値を最大限引き出せるようにする「人的資本経営」の実現と企業価値向上への寄与を目指すとともに、LXを成し遂げていくための荷主企業と物流事業者や物流事業者同士の連携を深めていきたいと訴えた。
カーボンニュートラルへ「港を中心にどうやって物流を組み立てていくか」
会見に同席した渡邉健二副会長(NIPPON EXPRESホールディングス会長)は「物流そのものの構造を本気で変えないといけない時代に入ったんだろうと思う」との問題意識を表明。
あくまで私見と断った上で「このままの状態が続けば(物流サービスの)値段はとてつもなく上がる。当然コストアップになり、日本経済のコストアップが非常に高いものになる。それをどこで消化していくかを本気で考えないといけない」と指摘。産業界全体で物流業務の効率化や作業内容見直しなどを真剣に検討していくべきだと警鐘を鳴らした。
さらに、「小手先の話ではなく、物流はカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の問題を含めると、海をどうやって使っていくか、港を中心にどうやって物流を組み立てていくのか、もう一度作り直さないといけないのではないか。単に安い、早いでトラックを使っているという時代ではもうなくなったということだけは言えると思っている」と述べた。
最後に「物流が本当に電気や水道、ガスのようなインフラだとおっしゃるのであれば、もっとちゃんとしたものを作らないといけない。高速道路の下に高速鉄道を走らせるくらいのものを作っていかないと日本の物流はなかなかうまく回らないのではないか」と持論を展開した。
(藤原秀行)