2024年問題対応へ「Green物流」推進明示、中・大型トラックのEV化など促進

2024年問題対応へ「Green物流」推進明示、中・大型トラックのEV化など促進

セイノーHDが中期ロードマップを初作成

セイノーホールディングス(HD)は6月12日、「中長期の経営の方向性~ありたい姿とロ―ドマップ2028~」を公表した。

P/L(損益計算書)中心だった従来の「中期計画」を、今回から企業価値向上の道筋を描く「中期ロードマップ」に変更。キャッシュフロー、資本効率(ROE)、資本政策重視の経営に変えていくことをうたっている。

その背景として、事業を取り巻く環境が目まぐるしく変化する中、3年間の売上高・営業利益中心の計画は「時代にそぐわなくなってきている」と指摘。「ありたい姿からバックキャストして、必要に応じて対応策を見直していく経営に変えるため、毎年ごとの売上高・利益予想に変えて、目指している成長のスピードと、到達すべき収益性・効率性の目標を公表していくことにした」と強調している。

初めての中期ロードマップは具体策として、トラックドライバーの長時間労働規制強化に伴う物流現場の混乱が懸念されている「2024年問題」など諸課題への対応をにらみ、業務を効率化して生産性を高めると同時に環境負荷を低減する「Green物流」を実現するとの柱の考え方を明示。スローガンは「Team Green Logistics(チーム・グリーンロジスティクス)」と設定した。

顧客や輸送事業者間で輸配送に関するデータを共有するとともに、中継センターなどをオープンに使えるアセットを提供。幹線輸送の特積み事業を着実に成長させるのに加え、物流業務全体を担う「ロジスティクス事業」や、顧客ごとに最適な輸送を提案する「貸切事業」の高収益分野を伸ばし、3~5年以内にROE(自己資本利益率)8%以上の達成を目指す方針を鮮明に打ち出した。PBR(株価純資産倍率)1倍超の早期実現もうたっている。

特積み事業に関しては、グループ4社を統合したことによりコスト削減効果が3~5年で60億円に達すると想定。ロジスティクス事業は5年度に現状の約600億円から売り上げ規模を2倍にまで高めることを視野に入れている。貸切事業も約250億円から2倍へ増やすことを目標としている。

ロジスティクス事業の基礎となる倉庫面積は現状の約102万㎡(外部と自社の合計)を、5年後には1.85倍まで拡大していくことをイメージしている。外部倉庫を大きく広げていくことを見込んでいる。

貸切事業については、ラクスルとの合弁会社ハコベルの手掛ける輸配送効率化システムを活用し配車力を高めることなどを盛り込んでいる。

企業規模拡大へ積極的にM&Aへ取り組むのに加え、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を活かしたスタートアップ投資による新規事業開発も引き続き進める。

従業員の能力と意識を高めることで企業価値の増大を目指す「人的資本戦略」としては、定着率を22年度の93.2%から25年度は98%まで引き上げることや、1人当たりの教育時間を150分から2倍の300分へ伸ばしていくことなどを目標に設定している。

Green物流の具体策としては、セイノーグループが主力としている中・大型商用電動(EV)トラックの社会実証に参加するなどして、2030年までに35%のCO2排出量削減を図る考えを盛り込んでいる。資本・業務提携しているエアロネクストと進めているドローン物流の普及加速なども列挙している。

(藤原秀行)

中期ロードマップはコチラから(セイノーHDホームページより)

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