高速・高精度読み取り技術のScandit調査、「配達証明など新しいタスク増えた」も76%に
バーコードなどの高速・高精度読み取り技術を手掛けるスイスのスタートアップ企業Scandit(スキャンディット)は6月14日、世界11カ国の配達ドライバー1200人以上を対象とした運輸・配送業界の現状に関する総合調査レポート「グローバル調査レポート – 日本におけるラストワンマイルを担う ドライバーテクノロジー」を発表した。今年4月に公表した調査結果の第2弾となる。
日本人ドライバーの大多数(78%)が、「過去5年間で配達量が増加した」と回答し、平均して6分半に1つの荷物を配送、1時間ごとに9つの荷物を1人のドライバーが配達していることが明らかになった。
また、65%が「異なる配達先への配達を完了しなければならなくなった」、71%が「より速く業務を遂行することが求められるようになった」、さらに多くの日本人ドライバー(76%)が「配達証明の写真提供などの新しいタスクが増えた」と答えるなど、業務内容の変化による業務量の増加が深刻さを増している実態が浮き彫りとなった。
スキャンディットの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)のSamuel Mueller(サミュエル・ミューラー)氏は「スキャンディットの調査により、配達員が限界ぎりぎりまで働いていることが明らかになりました。配送会社は、消費者の需要に応えるために革新的で多様なサービスを提供していますが、最前線にいるドライバーは、役割の変化、荷物量の増加、迅速な配達に対する消費者の大きな期待にプレッシャーを感じています。この重要な労働力を確保し、サポートし、維持するために、適切なテクノロジーを導入することが、今、配送会社に求められているのです」との見解を示した。
調査はスキャンディットと英調査機関Opinium(オピニウム)が2022年8月、主に荷物の配送に従事しているドライバー向けを対象に共同で実施。カバーしたのは日本と米国、英国、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア、インド。ドライバーは宅配会社や小売業者、郵便事業者などで仕事を担っている。それぞれの国で何人のドライバーが回答したのか細かい内訳は開示していないが、各国で100人以上を対象に実施しているという。
業務時使用のデバイス、86%が機能不足に不満
調査によると、日本のドライバーの圧倒的多数(84%)が、玄関先での配達証明、年齢やIDの確認、カーブサイドでの荷物の確認、業務中の顧客や本社との連絡など、配達業務をスマートフォンで行っている。専用スキャニングデバイスを使用している配送ドライバーはわずか12%で、4%は配送を追跡するためのデバイスを全く使用していない。
さらに、日本のドライバーの86%が、配送業務に使用するデバイスの機能不足に不満を感じていると回答。専用のスキャンデバイスであれ、スマートフォンであれ、ドライバーの23%は、一度に1つのバーコードしかスキャンできないことに不満を持ち、33%が読み取れないバーコードのスキャンに苦労し、28%が薄暗い環境でのスキャンに苦労しているという。
Scanditは「使用するデバイスの種類にかかわらず、多くのドライバーは、各テクノロジーの機能を最大限に活用できていない」と指摘。世界中の回答者の43%は「業務上の2つ以下のタスクにしかデバイスを使用していない」を選択したという。
Scanditは、業務量の増大と変化は人材不足と定着率の問題によってさらに深刻化していると分析。回答者の47%は「過去5年間に人材不足が増加した」を選んでいる。
過去2年以内に転職を経験した日本人ドライバーは74%で、そのうち47%が1年以内に転職を経験していることが判明。70%が配送の仕事をしていたため、多くのドライバーは業界内で転職したことがうかがえる。また、39%が配送と別の仕事を掛け持ちし、12%が2つ以上の仕事を掛け持ちしていること、さらに回答者の中には最大で7つの職を持つ人もいることが明らかになっている。
Scandit日本事業責任者の関根正浩氏は「ドライバーを惹きつけ、能力を高め、役割のあらゆる側面を適切にサポートするためには、効果的なテクノロジーを提供することが鍵となります」と解説。同社の高性能なスキャン技術をスマートフォンに搭載することなどにより、配送の業務負荷低減を図ることが可能と強調した。
(藤原秀行)