特売品の納品リードタイム延長、物流課題解決図る
流通業向けのAIサービスを手掛けるシノプスは12月8日、伊藤忠商事と食品バリューチェーン最適化プラットフォーム「DeCM-PF」(ディーシーエムプラットフォーム)の機能の一つ「特売リードタイム長期化サービス」の提供を開始すると発表した。
両社は2022年1月、「ディマンド・チェーン・マネジメント プラットフォーム」構築に向けた業務提携契約を締結。シノプスは1980年代から需要予測・自動発注の分野に着目し、販売実績や在庫情報、天気予報といったさまざまなデータからAIが最適な発注数を算出する需要予測型自動発注サービス「sinopsシリーズ」の開発・提供を続けている。
sinopsシリーズは、食品スーパーマーケットを中心に小売業108社が導入してきた。シノプスの小売業のノウハウと、伊藤忠の豊富なネットワークを生かし、需要側の小売業の需要予測データを卸売業や製造業につなげ、バリューチェーンの最適化を目指すディマンド・チェーン・マネジメントプラットフォームを構築することを目指している。
DeCM-PFは小売業・卸売業・製造業をつなげることで、食品バリューチェ―ンを最適化する。現在、製造業や卸売業では、小売業や消費者が欲しい商品数を正確に把握することが難しく、見込みで生産・在庫計画を立てている。その結果、余分な在庫が発生したり、効率の悪い物流が生じていたりするため、DeCM-PFは小売業の実績や計画に基づいてAIが算出した需要予測データを、卸売業や製造業に連携することで食品流通の課題を解決し、バリューチェーンの最適化を図る。
新サービスは食品スーパーで販売する特売商品の納品リードタイムを延長化させることが可能。AIが特売品の需要予測を14日先まで行うことで、従来は数日前に確定していた小売業から卸売業への発注を、14日前に確定する。
(いずれもシノプス提供)
特売時の追加発注は、通常価格時の約5倍もの発注数量になるケースもあり、物流センターの在庫スペース圧迫や通常時よりも多くの車両・ドライバーを手配しなければならず、調整がの難度が高い。本サービスの活用により、リードタイムを延長することで、卸売業の特売期間中の追加発注の対応に向けた在庫調整業務の負荷軽減や、車両・ドライバーの手配の計画性向上、物流センターの過剰在庫や欠品リスクの抑制が見込める。
ある小売業で行った実証実験では、特売初週の総発注量を100%とした場合、追加での発注の割合が飲料のカテゴリで69%から2%、即席麺のカテゴリで72%から17%まで削減できたという。さらに事前に追加発注数が確定するため、追加発注に備える必要がなく、物流センターの在庫数が削減したことで稼働効率が向上するという声もある。
本サービスの実証実験を既に実施している複数の小売業へ2024年中に正式展開したい考え。今後は特売品だけではなく、定番品でのリードタイム延長化や物流センター向けの在庫圧縮サービスなど、複数のサービス展開を検討する。
(藤原秀行)