正社員の採用予定、2024年問題控えた「運輸・倉庫」が7割弱で最多

正社員の採用予定、2024年問題控えた「運輸・倉庫」が7割弱で最多

帝国データ調査、非正社員も

帝国データバンクは3月21日、雇用動向に関する企業の意識調査結果を公表した。

2024年度(24年4月~25年3月入社)に正社員の採用予定がある企業は61.5%で、3年続けて6割を超えたが、割合自体は3年ぶりに前年から低下。TDBは「雇用動向は前年度までの勢いがやや鈍化した」と指摘している。業種別では「旅館・ホテル」が8割でトップとなった。

非正社員の採用予定がある企業は45.9%で、正社員と同じく3年ぶりに低下。 業種別では飲食店やホテルなど「個人消費関連」で高い傾向が見られた。また、4割近くの企業で「女性」や「外国人」など多様な人材の採用を強化する予定であることも分かった。

調査2月15~29日、全国2万7443社を対象に実施、有効回答数は1万1267社(回答率41.1%)。雇用動向に関する調査は2005年2月以降、毎年実施しており、今年が20回目。

採用予定がある(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と考えている企業は前回調査(23年2月実施)から1.5ポイント減の61.5%。内訳は、採用人数が「増加する」企業が2.0ポイント減の23.7%、「減少する」企業は1.5ポイント増の8.6%だった。

採用予定がある企業からは「運転職の平均年齢が上昇しているため、定員確保に苦慮している新卒・中途ともに、女性ドライバーの雇用や定年退職者の継続雇用に力を注いでいる」(運輸・倉庫)、「働き方改革などで労働時間の減少や休日を増やす傾向があり、人員を多く採用せねばならない」(医療・福祉・保健衛生)といった声が聞かれた。

半面、採用予定はない企業からは「社員募集をしても応募がなく、中小企業の雇用は難しくなっている」(飲食料品卸売)といった声が複数挙がった。

また、「人件費がかさんでいくのに、販売価格は大して上がっておらず、雇用はしたいがしにくい状況に陥りつつある」(飲食料品・飼料製造)、「新規で人を採用するだけの企業体力がない」(紙類・文具・書籍卸売)のように、厳しい経営状態から採用を控えざるを得ない様子もうかがえた。

規模別に正社員の採用予定がある割合を見ると、「大企業」は84.9%と全体平均の61.5%を大幅に上回った。一方、「中小企業」は57.5%、うち「小規模企業」は39.9%で、企業規模が小さいほど割合が低くなる傾向にあった。

業界別に正社員の採用予定がある割合を集計したところ、「2024年問題」が懸念されている「運輸・倉庫」が69.7%で最も高く、同様に人手不足が深刻化している「建設」のほか、「サービス」がともに66.6%で続いた。

さらに細かい業種で見ると、新型コロナウイルス禍の落ち着きによる人流の増加やインバウンドの好調で人手不足感が高まる「旅館・ホテル」が8割に達した。やはり2024年問題が懸念される「医療・福祉・保健衛生」(79.2%)や「人材派遣・紹介」(78.0%)も8割に迫り、ITエンジニア不足が顕著な「情報サービス」(73.3%)も7割台となった。「人材派遣・紹介」では採用が「増加する」企業は4割を超えた。

24年度の非正社員の採用状況について尋ねたところ、「採用予定がある」(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)企業は45.9%(前年度比1.4ポイント減)。

コロナ禍前の18年度は52.4%の高い水準にあったが、21年度には36.8%まで低下。その後は需要の回復とともに上向いてきたが、ペースダウンした。一方、「採用予定はない」企業は1.2ポイント増の40.4%で、2年ぶりに4割を超えた。

採用予定がある企業からは「インバウンドが戻りつつあるなかで、受け入れ施設としてはそれに対応していく必要性を感じている」(旅館・ホテル)、「非正規パートタイマーの人手不足感が強い。行政には年収106万円の壁の撤廃を前向きに検討してもらいたい」(飲食料品小売)などの声が聞かれた。

一方、採用予定はない企業からは「客先のアパレル関係、百貨店およびスーパーの衣料品が回復しない限り、新規雇用を考えることは難しい」(繊維・繊維製品・服飾品製造)といった厳しい声が出ていた。

規模別に非正社員の採用予定がある割合を見ると、正社員と同様に企業規模が小さいほど割合が低くなっている。業界別では「運輸・倉庫」が54.7%で最多。「サービス」(54.0%)、「金融」(52.6%)なども5割台で続いた。

細かい業種別では「飲食店」(88.1%)や「旅館・ホテル」(84.2%)といった個人消費関連の業種で採用予定がある割合が高かった。中でも「飲食店」は採用人数が「増加する」企業が38.5%と、全体(11.9%)を26.6ポイントも上回った。割合は前年より低下したが、インバウンドを含め人流増加への対応で、採用が活発となっているとみられる。

将来の労働力不足に対して多様な人材の活躍が期待される中、今後の「外国人」「高齢者」「女性」「障害者」の雇用・採用状況について尋ねたところ、いずれかの人材について
採用予定がある企業は78.4%だった。中でも、「採用を拡大」する予定の企業は37.7%と、4 割近くの企業で多様な人材の採用を強化する動きが見られた。

採用予定がある回答について人材別に分類すると、「女性」は72.6%で最も高く、「高齢者」が50.2%で続いた。「外国人」(31.6%)および「障害者」(30.4%)は3割台となった。また、「採用を拡大」企業についても「女性」(19.4%)が最も高かった。他方、「外国人」(16.7%)および「障害者」(13.8%)の割合は「高齢者」(10.9%)を上回る
結果となり、特に「外国人」は「採用を拡大」する企業の割合が「変わらない」を上回っている。

多様な人材について「採用を拡大」する企業は、「【現在雇用している】今後も採用する(前年より採用を増やす)」と「【現在雇用していない】今後は採用する」の合計。採用予定がある企業は、「採用を拡大」、「【現在雇用している】今後も採用する(前年と同じ程度)」、「【現在雇用している】今後も採用する(前年より採用を減らす)」の合計

採用動向と賃上げの関係を見ると、正社員・非正社員ともに採用予定のある企業ほど賃上げを実施する予定の企業の割合が高い。正社員では、採用予定がある企業の69.1%が2024年度の賃上げを見込んでいる一方、採用予定はない企業は46.6%にとどまり、採用予定の有無で賃上げの実施割合に22.5ポイントと大きな差があることが浮き彫りとなった。

非正社員も採用予定がある企業の賃上げ割合(44.0%)は採用予定はない企業(18.1%)を25.9ポイント上回った。

(藤原秀行)※いずれもTDB提供

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