ドライバーの労働時間20%削減など確認
Hacobuは5月16日、国土交通省・秋田県トラック協会のコンサルティングパートナーとして2021年から参画している「首都圏向け青果物の物流効率化 実証実験」の成果を公開した。
持続可能な農業物流を実現するため、秋田県トラック協会・国土交通省などと3年間をかけて取り組んできた「首都圏向け青果物の物流効率化 実証実験」では、青果物の生産地で集荷幹線の分離やトラック予約受付サービスの活用により、トラックドライバーの労働時間を20%削減することに成功した。
その過程で課題として浮上した「首都圏市場での荷待ち・荷降し時間」の実態を明らかにするための実証実験を今年2月に神奈川県の横浜市中央卸売市場で実施。生産地と消費地、それぞれの市場で発生している荷待ち時間について、その課題と打ち手が明らかになったという。
■本実証実験で判明した点
<生産地・秋田県>
1.集荷/幹線の完全分離およびハブ拠点の運営強化により、積み地側の移動・積み込み作業時間を大幅に短縮
2.本実証実験の施策を通年で実施した場合、現行費用に比べて物流関連コストは増加となる見通し
<消費地・横浜市場>
3.繁忙期は同一時間帯に車両が集中する。トラック予約受付サービスを活用して荷降し車両の分散と、市場側の荷受け業務の見直しを行うことができ、場内外での荷待ち時間や荷降し時間を削減
4.仲卸伝票(送り状)および等階級単位での検品を、「総数検品」方式に変更することで、輸送効率と検品工数の効率化が図ることができた
Hacobuは、生産地側の集荷業務や空パレット回収業務などの一部業務費用について、物流事業者から荷主企業への請求が行われていない現状に鑑みると、このままでは新たに産地コストが発生し、「物が運べなくなる」以前に、「農産物を作れなくなる(運ぶ物がなくなる)」という事態が懸念されると指摘。
そうした事態を防ぐためには、物流関連の費用をサプライチェーン全体で負担する必要があり、物流コストが上昇すれば、最終消費者への価格転嫁は避けられないということが見えてきたと分析している。
本調査成果のポイント
<生産地・秋田県>
●集荷/幹線の完全分離およびハブ拠点の運営強化により、積み地側の移動・積み込み作業を大幅に短縮できた
2023年11月に行った実証実験では、22年度の実績値(最大15時間超)と比較して、ドライバーの拘束時間が20%短縮され、12時間25分となった。これは厚生労働省の改善基準告示で定められる、ドライバー拘束時間の上限・13時間を下回っている。集荷/幹線移動の分離、トラック予約受付サービスの活用により、ドライバーの労働時間短縮を実現した。
●通年で本施策を実施した場合、現行費用に比べて物流関連コストは増加となる見通し
秋田県では、休閑期(12月~6月)の出荷量が減少するため、通年で本施策を実施した場合、現行費用に比べて物流関連コストは大幅に増加となる見通し。3年間実証実験に取り組むことで、積載率は向上するものの、集荷便の導入、パレタイズ作業の適正化等の固定費が発生するため、上記コスト増に起因していることが明らかになった。
<消費地・横浜市場>
●トラック予約受付サービスによる荷待ち時間の削減
横浜市場では、午後7~10時がピーク時間になりやすく、特に午後9時台に車両が集中することで、荷待ちが発生していた。バースに空きがあるのにも関わらず、荷降し・検品を担当する市場の作業員不足により荷待ちが発生したケースもあったという。
繁忙期には荷降し後の商品が作業スペースを占有し、作業員が空きスペースを確保するまで、荷降しの開始が遅れていた。トラック予約受付サービスの活用により、これまでの半分以下のバースで運用が可能となり、空きスペースの確保につながると想定。荷待ちも解消され、大幅な改善効果を見込めるとみている。
●現行の仲卸伝票(送り状)および等階級単位での検品を「総数検品」方式に変更することで、輸送効率と検品作業の効率を大幅に向上
現在は産地で等階級ごと、または仲卸伝票(送り状)単位でパレタイズされて輸送されている。等階級パレタイズは産地での確認作業に時間がかかり、仲卸伝票(送り状)単位のパレタイズでは積載率が低下する。
課題を解決し、積載率を向上させつつ、消費地の市場で荷降し時間を削減し、検品作業を効率化するためには、「総数検品」の採用が効果的と解説。この方法で、荷受けと仕分けの作業を分けることにより、市場での検品作業時間を大幅に削減することが可能になると見込んでいる。
(藤原秀行)※いずれもHacobu提供