【独自取材】きくや美粧堂がセンターで柔軟な勤務体系展開、週1日・2時間から可能に

【独自取材】きくや美粧堂がセンターで柔軟な勤務体系展開、週1日・2時間から可能に

CREフォーラムで松丸マネージャーが物流改革説明(前編)

シーアールイー(CRE)は6月14日、東京都内で荷主企業や物流事業者向けの「物流フォーラム」を開催した。

先進的な取り組みを進めている企業の幹部や現場担当者を毎回講師として招き、現場の業務効率化や事業基盤強化に役立てられる情報を発信している。今回焦点を当てたのは、ロジビズ・オンラインでも紹介した美容業界向け専門卸大手きくや美粧堂の物流改革だ。

フォーラムで講演した同社サプライチェーン部物流担当マネージャーの松丸忠広氏は、東京・平和島の物流センター「East Logistics(イーストロジスティクス)」で進めている庫内作業スタッフの定着促進と自動化・機械化の両面で施策を細かく紹介。特に働きやすい環境の実現へ週1日、2時間からの勤務を可能にしたり、時間帯で20通りの勤務シフトを用意したりと以前より柔軟な勤務体系を整備していることを強調した。

自動化・機械化では新たな試みとして、2019年中をめどに多様な商品を自動管理できる垂直式回転棚を導入するなど、生産性向上と負荷軽減へ“庫内スタッフが歩かないピッキング”をより徹底していく計画を明らかにした。松丸氏の講演内容を2回に分けて紹介する。


講演する松丸氏

日雑卸大手をお手本に「自社物流」選択

以前にも説明した通り、1956年設立の同社は全国各地で営業している美容室を主要顧客に抱え、シャンプーやトリートメント、ヘアブラシ、化粧品、美容機器など多様な商品を日々出荷。併せて、美容室開店のコンサルティング、美容室の情報誌発行など幅広いサービスを提供している。18年3月期の売上高は約225億円と業界でも上位にランクインし、年々業績を伸ばしている。

全国30超の営業拠点のほか、東京・平和島の大型物流拠点、東京流通センター(TRC)内に位置する「イーストロジスティクス」と岡山の「West Logistics(ウエストロジスティクス)」の2つの物流センターを展開。前者が東日本、後者が西日本をそれぞれ担当し、主要顧客の中小規模の美容室を支える物流ネットワークを運営している。

松丸氏は、まず同社が基本理念としている「自社物流」の起源として、経営陣が日用雑貨卸の物流を参考にしてきたことを説明。「“物流力”を背景に大きく成長してきた大手卸をお手本にして、当社も自社物流を選択したという経緯がある」と述べた。

同時に、物流センターを「コストセンター」ではなく利益を生み出す基礎となる「プロフィットセンター」とすべく、さまざまな改革を進めていると背景を強調した。その一環として人材確保策を優先して考えており、従業員満足度向上を図るため多様な取り組みを推進していると力説、イーストロジスティクスで行っている施策を披露した。


「イーストロジスティクス」が入居するTRCの外観(東京流通センター提供)

例えば、センター内はLED照明を採用し、BGMも流すなど明るい雰囲気を保つよう腐心。採用時にアンケートを行ったところ、求人に応募している人たちが真っ先にチェックする項目として一番多く挙げたのが施設内の空調の有無だったこともあり、センター内は全館空調を整備している。

また毎朝の業務はスタッフ全員で庫内を10分間清掃することからスタートし、清潔さをキープして仕事しやすい環境を実現。他にも庫内では掲示物などを貼るのにテープを使うのを基本的に禁止し、マグネットを利用することで美観にも配慮している。

さらに、センター内には給水機を10台ほど設置し、スタッフには好きな時に好きなだけ飲むよう推奨。飲料の自動販売機や“置き菓子”も配置してリフレッシュするための飲み物やお菓子などをすぐに買えるようにし、休憩時間を有効に使えるよう努めている。

庫内スタッフらが休憩するための「リフレッシュルーム」は一度に50人程度が利用できる。快適に過ごせるよう内装を明るくしているのはもちろん、無料のWi-Fiや充電用ポートも備え、昼食時には自由に使える“フリーふりかけ”まで準備しているという配慮ぶりだ。松丸氏は「かつては冷蔵庫、電子レンジ、ポットが物流センターの“三種の神器”だった。今はWi-Fi、充電用ポート、フリーふりかけが三種の神器」と笑顔を見せる。


職場の魅力を高める“フリーふりかけ”

このリフレッシュルームなどを拠点に、さまざまな独自の活動を開き、スタッフ同士のより緊密な交流を後押しして、仕事を続けたくなるような職場の実現に努めている。例えば、美容卸だけに、仕入れ先企業の協力を得て、シャンプーやトリートメントなど多様な商品をリフレッシュルームに展示。併せて、スタッフを対象とした商品勉強会も定期的に行っている。

松丸氏はその狙いとして「自分が扱っているのは壊れやすいものだとか価値あるものだと分かっていただくことで、より思い入れを持って仕事していただきたい」と説明。バーベキューや年末のパーティーなども開き、楽しい職場になるよう努めている。

短時間労働の方が生産性高いケースも

働きやすい環境の整備はハードだけにとどまらず、ソフトにも及ぶ。庫内スタッフを対象とした表彰制度に注力しており、対象は生産性が高い人に加え、ごみをきちんと拾っていたり、あいさつが明るくできたりしている人も評価するなど、庫内で働くさまざまな人たちにスポットが当たるよう工夫している。

勤務のシフトはフルタイムにこだわらず柔軟に設定、短時間から自由に働けるようにしている。採用時には友達を紹介してくれた人にシャンプーといった美容商材をプレゼントするキャンペーンを展開、好評を博すなど採用活動にもひと手間掛けている。

松丸氏は「実は短時間労働の方が生産性は高かったりする。シフトは20パターンあるので管理するのが大変だが、そうした手間を掛けることで生産性が上がることが分かったのでやりがいはある。主婦の方は能力の高い方が多く、フルタイムではなくても集中して働いていただけるのでかなり助けられている。コミュニケーション能力も素晴らしく、職場で周囲を巻き込んで雰囲気を良くしてくれる」と明かす。機械化を進めるもあくまで人の負荷を減らし、快適に働いてもらえるための施策と繰り返し強調した。


センターの勤務形態に工夫

(藤原秀行)

この記事の後編:【独自取材】きくや美粧堂、自動化機器など生かし“歩かないピッキング”追求へ

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