北海道・音更町農協、ごみ処理量を大幅削減可能な長芋の新緩衝材導入

北海道・音更町農協、ごみ処理量を大幅削減可能な長芋の新緩衝材導入

経費抑制や調達安定化も期待

北海道の音更町農業協同組合は4月18日、長芋の流通で使用する緩衝材を、長年使われている「おが粉」から今年3月に「馬鈴しょ澱粉の副産物を主原料とした緩衝材」(発泡緩衝材)へ変更したと発表した。

発泡緩衝材を製造する設備を取得し、JAおとふけ青果管理センター(音更町)内で製造することで、生産や流通、消費の各段階で経費を減らし、環境負荷も提言できると見込む。

 
 

おが粉はバイオマス発電との競合による需要増などを受けて値上りが続いている。消費者が直接口にするものではないおが粉の値上がりは、長芋自体への価格転嫁が難しく、最終的に生産者が負担せざるを得なくなっていた。

さらに、原木不足などで長期的に取引をしていたおが粉業者が製造から撤退するケースもあり、永続的におが粉を緩衝材として使用できるかどうか見通しが立ちづらいため、同組合は2018年から新たな緩衝材の試験を続けてきた。その結果、北海道・十勝の主産品の馬鈴しょでん粉を主原料とした発泡緩衝材を用いることにたどり着いた。

でん粉尻は生食流通せず、でん粉製造工程で発生する副産物。原料の過半数がでん粉尻のため、事業者は可燃ごみとして処理している。非常に軽量で長芋1箱当り発泡緩衝材使用量は0.2kg弱。おが粉は3.5~4.0kgのため、重量対比で6%まで軽量化した。

形が長く色も薄い灰色に着色することで、食べ物と見間違えないよう配慮している。

同協会はホクレンでん粉課の協力を得て、JA士幌町でん粉工場(士幌馬鈴しょ施設運営協議会)や十勝東工連など計4カ所から年間を通じて安定的に「でん粉尻」を仕入れる体制を構築した。


(いずれも同組合提供)

 
 

おが粉の場合、 JRコンテナに最大積載量積んでもスペースが余っている状態だったが、発泡緩衝材の場合、スペースを最大限活用した輸送が可能になる。1回に運ぶ量を増やせるため、運賃の圧縮につながり、生産者の経費負担を軽減できると見込む。

また、おが粉の場合、9.75円/kg発生していた資材費が、発泡緩衝材に置き換えることで5.5円/kgまで下げられるという。

加えて、発泡緩衝材となることで年間1400tのごみ削減につながり、年間で処理費用を2300万円強を節約できる見通し。ごみ処理料金は取引先で発生するため、取引先が経費を削減できる。

スーパーでのパック作業や自宅での調理の際、長芋表面に付着したおが粉を払い落とし床に散らばった場合、掃除をする必要がある。しかし、発泡緩衝材は長芋に付着しても簡単に除去できる上、床に落ちても手で拾えるサイズなのでわざわざほうきや掃除機を持ってくる必要もなく、非常に後片付けが楽になるとみている。

他にも、自然由来のおが粉に比べ工業製品の発泡緩衝材は生菌数が10万7692分の1との分析結果が出ているという。クリーンな状態で封函し、長期保管にも耐えられる試験結果となっている。

(藤原秀行)

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