トランジットの取り込み進む、コロナ禍前水準を確保
成田国際空港会社(NAA)の藤井直樹社長は5月28日、東京都内で開催した定例記者会見で、2026年3月期(25年度)連結決算と今年4月の空港運用状況を報告した。
25年度の国際航空貨物量は、年間を通じてトランジット貨物が好調に推移したため、前年度比4.8%増の206万tと、200万の大台を突破。新型コロナウイルス禍前の19年度並みの水準を確保した。4月単月では前年同月比11.0%増の18万1421tで、25カ月続けて前年同月を上回った。
26年度は前年度比1.2%増の209万tと予想しており、25年度並みのボリュームを確保できると見込む。
成田空港は滑走路の延伸・新設など機能強化を図る「第2の開港」プロジェクトを進めており、その一環としてトランジット貨物の取り込みによる安定的な貨物量の確保と路線・便の誘致を図るハブ空港戦略を進めている。トランジット貨物が年間通じて好調だったことは、戦略が順調に進んでいることを示唆している。
ただ、中東情勢緊迫化による航空燃料高騰が世界の航空業界にとって逆風になっており、今後の影響の度合いが懸念される。
ベリー含む旅客便発着量は過去最高
25年度決算は、ベリー(旅客機の貨物スペースを使った貨物輸送サービス)を含めた国際線旅客便発着回数が、アジアや北米路線を中心として新規就航・増便があったことから前年度比3.5%増の25.4万回と過去最高を記録した。
外国人旅客数が過去最高の2410万人に達し、日本人旅客数も緩やかに増えたことから航空旅客数は4258万人と歴代2位の高水準となった。
国際航空貨物量の好調も加わり、営業収益(売上高に相当)は5.9%増の2794億円で5期連続の増収を達成。2004年の民営化以降の最高値を更新した。
一方、物価の高騰に伴うコストアップに加え、需要拡大に対応するための施設運営費や老入荷設備の修繕・更新費用が増加したことから営業費用が膨らみ、営業利益は2億円増の425億円とほぼ横ばいだった。最終利益は、老朽化設備の取り壊しによる固定資産除却損の発生により80億円減の270億円にとどまった。

25年度の航空取扱量実績(NAA発表資料より引用)
26年度は不透明感の中で増収減益予想
26年度の連結業績予想は、国際情勢や経済動向の先行きに不透明感があるものの、国際線旅客便におけるインバウンド需要の底堅さ、国際貨物便の堅調な伸びなどを踏まえ、営業収益は0.7%増の2814億円と6期連続の増収を見込む。
ただ、増収を上回る物価高騰や、空港需要拡大に対応した施設関連の運営・修繕・更新費用の増加により、営業利益は40.1%減の255億円、経常利益は47.9%減の207億円、最終利益は52.3%減の129億円と増収減益を見込んでいる。
藤井社長は決算について「全体としては堅調だった。中国線や中東線の今後は国際情勢に左右されるため読みづらいが、他が伸びを見せているトレンドを踏まえて26年度の予想も立てている」と総括した。

会見する藤井社長

26年度の航空取扱量見通し(NAA発表資料より引用)
4月の空港運用状況については、国際線旅客便の発着回数で中国線が前年同月比43%減の1390回に落ち込んだものの、韓国、台湾、欧州、オセアニアなど幅広い路線が好調に推移したことから、全体では1万3750回と2%減にとどまった。中東線は16%減の201回で、3月の71%減・71回から大きく回復した。国際貨物便は9%増の2737回と好調だった。
また、藤井社長はアフリカのコンゴ(旧ザイール)を中心に感染が拡大しているエボラ出血熱への対応について「流行の発生を受けて(航空会社など)全社に注意喚起した。検疫などとも協力して、問題が発生しないよう取り組みを進めている」と強調した。
エボラ出血熱をめぐっては、WHO(世界保健機関)が5月17日、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」宣言を発表、関係者に強い警戒を求めている。
サルはエボラ出血熱などの感染症の流行源となるため、ペット飼育目的での日本への持ち込みは法律で禁止されているが、密輸されたものが税関により空港で摘発されるケースがたびたび発生している。
成田空港は19年以降、毎年ANA(全日本空輸)と組み、野生生物の密輸の水際対策に協力するため、野生生物取引の国際的な調査・モニタリングNGO(非政府組織)TRAFFICや税関、検疫などの協力を得て、職員などを対象にトレーニングワークショップを実施している。
(石原達也)









