ナフサ供給不安、企業の5割が「在庫確保」でリスク対応

ナフサ供給不安、企業の5割が「在庫確保」でリスク対応

帝国データが中東情勢緊迫化で実態調査、需要側の在庫確保と供給側の選別が同時進行と指摘

帝国データバンクは6月23日、中東情勢の緊迫化を受けたナフサ(粗製ガソリン)など石油製品の供給状況に関する企業の実態調査結果を公表した。

ナフサなど石油製品をめぐる供給不安に対し、企業の51.7%が「在庫確保」による防衛策を講じていることが判明。



「仕入コストの上昇」(83.9%)や「調達不安定」(73.0%)が広がる中、市場では供給側による取引先選別も同時に進行していることがうかがえた。

帝国データバンクは「こうした局面では、価格高騰を一時的に吸収する収益力や、在庫確保・代替調達に必要な資金余力によって、企業の対応力に差が生じている。今後は、供給元まで含めた商流把握、取引先との関係強化、価格転嫁力の確保が重要となる」と分析している。

調査は5月21~31日にインターネットで実施、4604社から有効回答を得た。

同社は調査結果を基に、影響の強まりからコスト上昇に至る流れを整理したと説明。起点となるのは、企業の約7割が感じている「影響の強まり」(69.4%)で、需要側の企業では「調達不安定」(73.0%)や「リードタイム長期化」(50.2%)といった調達・納期不安が広がっていることが浮き彫りとなった。

そのため、必要資材を早めに押さえようとする動きが強まり、「在庫の確保(前倒し発注・安全在庫の引き上げ)」は51.7%に上った。

一方、供給側では、先行き不透明なコスト変動や納期不安を背景に、見積・契約条件を慎重に見直す動きが見られると解説。「仕入価格の変動が激しく、見積・契約が困難」は42.8%となったほか、「顧客対応の優先順位付け」も14.4%に上った。



同社は「需要側の前倒し発注と、供給側の見積・契約慎重化や配分調整が同時に進むことで、総量の不足だけでは説明できない、一部の商流・品目における目詰まりが生じているとみられる」と推定した。

需給調整の過程では、川上・川中企業による価格改定や見積条件の見直しが進み、仕入価格の上昇として表れていると説明。

企業が実施している取り組みとして「価格改定」は39.5%、「顧客への納期・価格・仕様の再交渉」は37.8%に上った。

結果として、事業活動に生じている影響では、「原材料・部材の仕入コスト上昇」が83.9%で最多となり、「物流・輸送・包装コストの上昇」も48.9%、「エネルギーコストの上昇」も34.1%に達した。

同社は、供給側にとっての価格改定は、需要側にとってはコスト上昇となり、商流を通じて価格高騰が連鎖していると言及。「供給不安は、単なる物理的な物不足にとどまらず、価格・納期条件の見直しを通じて、企業のコスト構造に波及している」と整理している。

中東情勢による事業活動への影響について、パニック的な動きがみられた3・4月時点と、調査を行った5月時点との変化を尋ねたところ、「影響はさらに強まっている」と答えた企業が32.6%に上った。「やや強まっている」と回答した36.8%と合わせると約7割(69.4%)の企業が影響の強まりを実感していた。



事業活動に生じている影響では、「原材料・部材の仕入コスト上昇」が83.9%でトップ。「調達が不安定/入手困難」(73.0%)、「調達リードタイムの長期化」(50.2%)が続いた。

物理的な調達難に加え、「物流・輸送・包装コスト上昇」(48.9%)、「仕入価格の変動が激しく、見積・契約が困難」(42.8%)、「エネルギーコスト上昇」(34.1%)など、価格・納期・契約条件の変化が企業活動に広く影響していることが示された。

事業を進める中で納期遅延や数量不足などの調達上の支障が最も生じている資材を尋ねたところ、塗料や接着剤、シンナーなどの「化学系加工資材」が29.6%で首位。続いて、粘着テープやプラスチック容器などの「包装・物流資材」が20.2%、「設備・建築・電子部材」が13.9%だった。

同社は「いずれも、製造・施工の工程や出荷・納品を支える資材であり、主原料そのものではなく、事業活動の途中工程や物流面で使われる資材に支障が出ていることが分かる」との見方を示した。

ナフサを含む「原材料・基礎化学品」で支障が出ているとする企業は11.9%にとどまった。「燃料・エネルギー関連」も6.8%と低い割合だった。

同社は川上の基礎素材が市場から完全に消滅したわけではなく、原料として製造される接着剤、塗料、シンナー、インキ、出荷に不可欠な包装材など、川中の加工・流通段階で使われる資材が相対的な調達難に直面している実態が浮かび上がったとみている。

ナフサなどの不足は、サプライチェーン(商流)上どの階層で滞留し、どの階層で枯渇しているのか、同社は業種別に「川上・川中・川下」産業に分類し、支障が生じている資材の在庫保有期間から、それぞれの商流上における在庫日数を推定、比較した。

その結果、基礎素材・資源供給を担う川上産業の平均在庫量は50日分、川中産業では「一次加工」で52日分を確保していたものの、中間流通を担う「卸売・流通」は39日分にとどまった。

川下産業では、在庫量に業種差が見られ、最も少なかったのは「建設業」で24日分にとどまった一方、自動車や食品製造など「最終組立」は56日分、「小売・サービス・インフラ」は45日分だった。

川下全体で一律に在庫が少ないわけではなく、現場ごとに仕様が異なる建設関連など、一部の業種で在庫余力が限られていることが示唆された。

同社はこの結果を踏まえ、「ナフサ由来の製品群における影響は、全面的な供給停止というよりも、商流や業種によって在庫の持ち方に偏りが生じ、一部の資材・業種で調達の目詰まりが起きやすい状況として捉えられる」と言明。

川上や一次加工では一定の在庫を確保している一方、中間流通や建設業などでは、需要の変動や納期不安を在庫で吸収しにくい面があると指摘した。

さらに、「在庫の偏りは、資材量だけでなく、取引関係や価格条件にも左右される。供給側が限られた在庫や納期余力をどの取引先に配分するか、需要側が価格上昇や納期変更をどこまで受け入れられるかによって、同じ資材でも調達しやすさに差が生じる。足元の供給不安は、総量としての純粋な「モノ不足」だけでなく、商流上の立場、価格条件、納期対応力の違いによって、調達できる企業としづらい企業が分かれる構造になっている」と語った。

現在の石油製品の供給状況を踏まえ、短期的に実施している取り組みを尋ねると、「在庫の確保」が51.7%と半数を超えた。次いで、「価格改定」が39.5%、「顧客への納期・価格・仕様の再交渉」が37.8%となり、在庫確保だけでなく、価格や取引条件の見直しを進める企業も多く見られた。

その一方、「在庫の確保」を実行できていない企業も37.2%に上り、必要資材を早めに押さえる動きが広がる中でも、対応余力には差が出ていることが見えてきた。

商流別では、「在庫の確保」は「小売・サービス・インフラ」を除く全商流で半数を超え、「価格改定」は「一次加工」で6割を超えたほか、「卸売・流通」(47.9%)、「基礎素材・資源供給」(44.3%)でも4割を超えた。

限られた在庫や納期余力をどの取引先・案件に配分するかを見直す動きも出ており、「顧客対応の優先順位付け」は全体で14.4%だったが、「卸売・流通」では21.6%と、商流上で唯一、2割を超えた。

同社は「価格改定や納期変更を受け入れやすい顧客、供給継続の優先度が高い取引先を重視する一方、価格改定に消極的な企業やスポット取引、小口取引先では、資材の手配や納期回答が難しくなるケースもあり、こうした供給調整は合理的な自衛策の半面、商流上の目詰まりを生む要因となっている可能性がある」と推測した。

企業からは、「価格の急騰もあるが、値上げを受けいれないと原料を供給してもらえない」(化学工業、石油製品・石炭製品製造/年商10~50億円)など、上流からの価格改定に協力的に応じざるを得ないといった声が聞かれた。

(藤原秀行)

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