LOGIMETERユーザー会
課題意識の共有が互いの“アップデート”促す

KURANDO 菅野裕介 社長付事業推進担当
KURANDOは7月、庫内作業の人時データ取得システム「LOGIMETER(ロジメーター)」導入企業の担当者が互いの取り組みなどを共有する「ユーザー会」を東京都内で開催した。システムをいかに現場実装し、データ活用へと結びつけるか。課題意識を共有する者同士が、工夫や試行錯誤を語り合うことで、システムの機能更新だけでは補えない運用面の“アップデート”を実現する。(本誌編集部)
「当日ボード機能」を活用軸に
ロジメーターは、物流センターの従業員がタブレット端末に二次元コードをかざすことで「誰がどの作業を何時間行ったのか」の人時データを取得するシステム。これまで手書き書類などのアナログ管理が主流だった人時データが正確かつリアルタイムに取得できるとして、全国の物流センター1000拠点以上(2026年8月現在)で導入が進む。
ユーザー会は、取得した人時データの活用法について、導入企業同士で意見交換してもらおうと立ち上げたオフラインのコミュニティだ。24年8月の初会合から毎年1回、KURANDOが複数社に声をかけ、活用事例発表やフリーディスカッションなどを行う。3回目の今年はロジメーターに付帯する各種機能について活用を進める企業に白羽の矢を立てた。

フリーディスカッションの様子
KURANDO社長付事業推進担当の菅野裕介氏は「データの活用は取得よりハードルが高く、限られた時間で乗り越えることが難しい領域。これをどうサポートできるか考えたとき、同じ目線で試行錯誤を続ける者同士の経験こそ、互いの取り組みを後押しできると考えた」と説明する。
人手不足への対応や作業効率化が叫ばれる中、各社が事例発表の中心に据えたのが、当日の庫内作業の配置管理をサポートする「当日ボード機能」の活用だ。当日ボードはシフトデータを取り込んで当日の作業計画を自動で割り付け、ロジメーターで取得したデータを基に、工程ごとの人員過不足や予測終了時刻などを算出できる。
ロジメーター導入前、各社は作業進捗を把握するため、現場責任者がフロアを巡回したり、現場からの報告を待ったりしていたが、作業の遅れや人員の過不足に対する検知が遅れていた。導入後は作業前から適正な人員配置がしやすくなったほか、進捗状況が可視化されたことで機動的な差配も可能になったという。
アパレルや雑貨などの保管・出荷業務を担う三鷹倉庫福崎センターの池田智貴センター長は「これまで3時間以上かけていたセンター内の巡回がなくなり、私以外でも人員配置の調整が行える。現場リーダーの負担を大幅に減らせるツールだと感じる」と評価する。どの参加企業も強調していたのが、ロジメーターによる進捗可視化が現場責任者の言葉に説得力を持たせ、現場の〝応援文化〟が醸成される効果についてだ。
EC向けフルフィルメント事業などを展開するアッカ・インターナショナル市川物流の末房茂マネージャーは「出荷作業量が上振れしたとき、入荷や検品などの各チームから『2人応援に出せる』といった声が積極的に上がるようになった。計画変更後の終了予定時刻まで見えるので、納得感が得られやすい」と話す。
現場の垣根を越えたスタッフの融通が頻繁に行われることで、1人の従業員が複数の業務をこなせる「多能工化」も進んだという。伊藤忠グループで海外アパレルブランドの企画・販売を手掛けるジョイックスコーポレーション物流部の御子柴富人課長は「作業経験が増えたことで、スタッフ個人のスキルマップが底上げされた」と強調する。
多能工化は庫内スタッフの人手不足緩和につながるテーマで、ロジメーターにも6月のアップデートで、スタッフごとの保有スキルをタグ付けできる「スキルタグ」機能を追加した。アッカ・インターナショナルの末房マネージャーは「スタッフ個人のスキルマップが追えるようになるのなら、時給アップの評価基準として処遇する仕組みも検討したい」と話す。

KPIモニター機能で分析したジョイックスコーポレーションの月次生産性
独自の活用法に熱視線
ロジメーターによる人時データの取得・活用を進めている企業や物流センターでも、事業環境や顧客特性、企業風土によって、各種機能の運用方法には特徴や濃淡がみられる。事例発表では、こうした部分にも参加者の関心が集まった。
アッカ・インターナショナルは、勤怠管理システムデータを当日ボードに取り込みやすくする簡易ツールを整備したほか、自社開発のWMS(倉庫管理システム)をロジメーターとAPI連携させることで、作業実績を15分間隔で当日ボードに反映させ、よりリアルタイムな進捗可視化を行っているなどの工夫を紹介した。
人時データは作業実績データと掛け合わせることで、生産性や作業進捗の達成率を算出できる指標としての価値が高まる。だが作業実績データの取得は、倉庫スタッフの手入力などにとどまる導入企業も少なくない。ほかの参加者からは「データ連携は難しくなかったのか」といった声が投げかけられた。
同社市川システムの岡林司マネージャーは「ロジメーターはAPI仕様もシンプルなので、WMS側で取得している作業実績データを連携する範囲であれば、難易度は比較的高くないと思う」と各社の背中を押す。
一方、ジョイックスコーポレーションはKPIモニター機能の活用事例について報告した。 同社では各工程の生産性だけではなく、ギフトラッピングなどのフルフィルメント作業まで含めた出荷作業全体の生産性も算出し、KPIモニター機能で分析・作成した資料を経営陣向け説明などにも使う。御子柴課長は、「物流現場の可視化が、普段あまり接点を持たない他部署や経営陣に対する要望や提案に説得力を持たせている」と強調する。
一例として示されたのが曜日別生産性の折れ線グラフ。曜日別の出荷量に約3倍の開きがあるにもかかわらず、生産性の推移では振れ幅が抑えられていることが一目瞭然だ。「物流現場では出荷が多いからといって闇雲に人を集め、生産性を落とすようなことはしていない」。この認識が社内に醸成されたことで繁忙期の増員要請にも応じてもらいやすくなったという。
また三鷹倉庫からは、出荷作業などにおける「月間ボード機能」の活用について報告がなされた。当日ボードの〝月単位版〟に当たる機能で、数週間から1カ月程度の一定期間における作業計画と実際の進捗との差異が可視化される。
同社では、一定期間内にまとまった数の出荷作業を行う案件が少なくなく、「例えば24日に26、27日分の作業まで前倒しで行うケースもある」(池田センター長)。そこで、日をまたいで作業実績データを蓄積し、一定期間内の作業進捗を把握できる月間ボードが威力を発揮している。
池田センター長は「月間ボードを使う前は、進捗レポートを日々作成していたが、今はレポートなしで正確な状況把握ができる。一歩先の日程で人手がどれだけかかるのか、作業計画や人員配置で修正が必要かなどについて判断の根拠が明確になった」と手応えを口にする。

三鷹倉庫の発表の様子
「物流=協調領域」の象徴に
KURANDOがユーザー会を立ち上げた24年は、「物流2024年問題」を中心とした物流危機が社会問題としてクローズアップされ、業務効率化に向けた機運が高まったタイミングだった。2年が経過した現在、「効率化」の中身やベクトルには変化の兆しも見て取れる。
菅野氏が足元の潮流として挙げるのは、「飛躍的といえるAI活用に対する機運の高まり」だ。物流領域でもAI活用は目下の関心事で、AI実装をうたい文句にするシステムも珍しくなくなった。KURANDOもロジメーターのAI実装を視野に入れ、機能強化に向けた開発を進めている最中という。
一方で、物流企業がAI活用を目標に、従来のアナログ運用からデータ取得へと踏み出したとしても、「AI活用までに至る道のりは短くない」(菅野氏)。本格実装までの〝準備期間〟に必要なコスト負荷に耐えられる企業もいれば、そうでない企業もいる──というのがKURANDOの見立てだ。
こうした中、菅野氏はユーザー会についても、「高度なAIを使わずともデータ活用への一歩を踏み出すための場という新たな役割が加わった」とみる。さらに物流関連法改正を機に浸透しつつある「物流=協調領域」の認識をベースに、企業同士が共通の課題解決に向かうための「コミュニティ形成の場」とも位置付ける。
ユーザー会後半のフリーディスカッションも、「コミュニティ形成の場」としての在り方を反映した内容となった。
最初の議題となった「定着化に向けた現場教育」は、参加企業すべてが関心事として挙げたテーマだ。各企業ともロジメーターへの人時データ打刻は定着し、当日ボードの活用も一定程度なされている。参加企業の頭を悩ませているのは、現場がロジメーター導入過程で経験した生産性向上をゴールと錯覚し、歩みを止めている状況についてだ。
「入荷の作業スピードや生産性の振り返りは、どのチームもできている」。ジョイックスの御子柴氏はスタッフの成長を評価する一方、「データ活用が振り返りだけにとどまり、例えば前年数値などを参考に、来月に来るであろう物流波動への対応を検討するといった段階には至っていない」と現状を打ち明ける。
三鷹倉庫 倉庫運営部の亀島康平部長代行も「現状の生産性に安住している空気がある」とため息をつき、「打刻内容と実態を突き合せる『ワークサンプリング』を考えている」と次なる一手を明かす。例えば作業量が目標数量と一致する日に着目し、作業時間は余ったのか、余ったなら打刻に反映されているか確認しながら、目標数値の定期的な見直しにつなげるという。
関連して議論の俎上に載ったのは、ロジメーターを使い込むスタッフが固定化される〝新たな属人化〟だ。司会進行役の菅野氏も「センター長クラスだけでなく、多くの現場管理者が自発的にシステムを活用するためにどうするかは課題ですが、業務が回っていると後回しにされがちですね」と腕を組む。
議論が袋小路に陥りかけたとき、アッカ・インターナショナルが「ヒントになるかもしれない」と、人事評価制度を絡めた自社の取り組みを明かした。「当社は現場管理者の役職に応じた個人目標を設定しており、達成に向けてロジメーターを使いこなすことを評価指標に組み込んだことで、市川の拠点がうまく回っている」(岡林マネージャー)。
同社では役職に応じて、ロジメーターを使いこなすまでのタイムリミットも設定したという。これによりロジメーターの使用感や不具合の改善について、KURANDOへのフィードバックがボトムアップで促進され、導入決定から驚くほどの短期間で現場実装へとつながった。
同一目線が生むシナジー
フリーディスカッション後半では、ロジメーターで取得したデータをグラフなどで分析・可視化するKPIモニター機能の活用法についても意見交換がなされた。ジョイックスコーポレーションの御子柴課長は「生産性の数字が自動で示されるようになり、逆に数字では表しきれない部分で何が起きているかに着目するようになった」と成果を口にする。
例えばハンカチとリュックサックは入荷数が同じでも、検品や開梱作業の手間が大きく異なるため、作業生産性に開きが生じる。こうした実情がKPIモニター機能によって一つ一つあぶりだされ、こうした差異をどう埋めていくかといった議論がしやすくなったという。
「この議論を踏まえ、RFIDゲートを導入していくことが決まりました」。御子柴課長は相好を崩す。こうしたあぶりだしは、現場の〝声なき声〟を汲み上げる機会にもなっていると言えそうだ。
三鷹倉庫の亀島部長代行も、KPIモニター機能によって、特定の曜日で生産性が鈍る現場があることに気づいた。スタッフに聴いたところ、荷主ごとに梱包条件や伝票の封入条件が異なり、生産性に影響していた。同社は複数の荷主に条件変更を提案し、「その曜日のピッキング率が10%近く上がった」(亀島部長代行)という。
KURANDOはサービスのブラッシュアップに向け、今後もユーザー会を定期的に開催する方針だ。菅野氏は「同じ視座を持った企業同士が、互いの取り組みに触れる機会は多くない。当社とのやりとりだけでは聞けなかったような話も聞くことができ、当社にとっても貴重な機会となったと思う」と濃密な2時間半を総括した。
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