アスクルの独立社外取締役候補4 人が「抱負文」で意見表明

アスクルの独立社外取締役候補4 人が「抱負文」で意見表明

ZHDとの協業重視姿勢にじむ

アスクルは2月6日、新たな独立社外取締役の4候補による「抱負文」を公表した。4人とも独立社外取締役として求められる役割を忠実に果たすことに強い決意を表明。その上で、EC事業の在り方をめぐって対立が続いた筆頭株主のZホールディングス(HD、前ヤフー)との積極的な意思疎通を訴えるなど、4人がそれぞれの立場からZHDとの協業を重視する姿勢がにじみ出た内容となっている。

4人はアスクルが3月13日に開く臨時株主総会を経て正式に就任する見通し。総会に先立ち、2月7日には4人の抱負文に関連し、アスクルの「(暫定)指名・報酬委員会」が東京都内で記者会見する予定。

アスクル、独立社外取締役候補4 人を発表

「成長へ筆頭株主と経営陣のシナジー追求が重要」

のぞみ総合法律事務所パートナーの市毛由美子弁護士は、アスクルと筆頭株主のZHDが繰り広げた対立に関連し、親会社と子会社が同時に上場する「親子上場」を問題視する声が多く出ていたことを受け、立場によって意見が異なる場合は「可能な限り一般株主への情報開示を促進し、意思決定の透明性を確保することが重要」と指摘した。

アスクル経営陣に対し「中長期的な視点から、コアビジネスの強みや大株主とのシナジーを生かしたより具体的かつ持続性ある成長戦略を立案していただきたい」などと注文。併せて、経営陣への女性参画促進に向け提言していく姿勢を示した。

インターネットでの大衆薬販売を手掛けるケンコーコム(現楽天)創業者の後藤玄利氏は親子上場の問題に触れ、「可能な限り親子のベクトルを合わせるよう取り組むべき。それにより、シナジー効果を得られるので上場子会社単体の部分最適が親会社グループの全体最適につながるよう自身の知見を提供していく」と強調。

ZHDとアスクルの利害が対立した場合は、アスクルの価値向上を重視する意向を訴えた。同時に、ZHDとアスクルがシナジーをより追求することが重要との立場を鮮明にした。

「主要株主と経営陣が定期的に対話を」

麗澤大の髙巌教授は、昨年8月のアスクル定時株主総会でZHDや第2位株主のプラスの反対で当時の岩田彰一郎社長や独立社外取締役3人の再任が否決されたことに言及。「こうした異常事態は取締役会における議論や役員間のコミュニケーションが不足していたこと、またその結果として株主・市場に対する説明が不足していたことなどから生じたものと感じている」との見解を明らかにした。

ガバナンス改善に向け、役員や社外取締役などの間で意思疎通をより頻繁かつ率直に行える体制を整備するとともに、役員選任基準をより明確化するためアスクルの指名・報酬委員会を抜本的に改革することを目指す姿勢をアピールした。ZHDとアスクルが対立する要因となった一般消費者向けECサービス「LOHACO(ロハコ)の方向性については「中立的・合理的な観点より、具体的な立て直し策を練っていきたい」と語った。

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元IHI副社長の塚原一男氏は、アスクルでやりたいこと、やるべきこととして3~5年を期間とする中期的な経営計画か経営戦略の構築と、ガバナンスの再構築の2点を列挙。主力の法人向けECは売り上げの成長に鈍さが見られ、ロハコも赤字が続いていることを踏まえ「場合によっては 5 年を超えるビジョンの立案が必要になるかもしれない」と述べた。

さらに、ガバナンス強化のため「主要株主と経営陣が信頼関係(コミュニケーション)を早急に築くことが肝要であり、そのためには両者の間でダイアログ(定期的な対話)を頻繁に行うことが求められる」と強調した。

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(藤原秀行)

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